木星と火星が8月15日におうし座で会合、角距離は19′で、筆者は80倍で同視野に捉えることができました。 みずがめ座を逆行中の土星は、観測の好機にあります。
ここでは8月下旬までの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
火星は明け方高くなり、視直径も6秒を越えて、模様が見やすくなりました。 南極冠は縮小して事実上見えなくなり、今度は北極冠が現れる時期になっています。 北極冠の形成は判断が難しく、最近は赤(R)画像や赤外(IR)画像を利用します。 8月20日の時点では、まだ結成完了とは言えない状況です。
これまで小規模なローカルダストストームが何度も見られましたが、8月18日にナミビアのクライド・フォスター氏(Clyde Foster)から目立つダストストーム出現の一報がありました(図1)。 場所はChryse(35W, +10)地方で、目立つ光斑が2つ捉えられました。 ここは、よくダストストームが発生するところで、おそらく前日17日の発生と思われます。
このダストストームは、その後リージョナルダストストームとなり、広い範囲に展開しました。 Chryseで発生したダストストームにお決まりのコースをたどって南へ進み、二手に分かれてV字型のような形(図1)になって、南緯60°過ぎまで進んだ後、西へと展開しました。 22日にはSolis Lacus(W90, -28)のすぐ東側で北行し、発達しています。
発生初期の8月18日にマーズエクスプレス、19日にはマーズ・リコナッサンス・オービターの画像が得られ、詳しい様子が分かりました。 18日は南行していたダストストームが、マリネリス渓谷にすっぽり入り込んで、谷の輪郭がくっきりと見えていました。 この場所のダストストームでは、しばしば見られる姿です。 19日には谷を乗り越え、ダストストームの活動部は、南に動いていきました。 23日には日本でもダストストームの西端が見え始めました。
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[図1] Chryseのダストストーム |
矢印で示した明るい部分が、ダストストーム。撮像:クライド・フォスター氏(ナミビア、35cm) |
注目される赤道帯南部(EZs)の攪乱領域(SED)が、8月半ばに大赤斑(GRS)の北を通過しました。 SED後端部の南赤道縞(SEB)北縁にある開口部(リフト)からの白雲の流れ込みによって、EZsの明部が明るさを増したのですが、期待したほどの活動はありませんでした。 一方、前方のI=200°台は青い条模様でかなり乱れています。 SEDの後端部はI系に対して1日あたり+1°のスピードで後退していますが、青い条模様は逆に-1°の割合で前進していて、結果としてSEDの領域は拡大しつつあります。
II=57°で停滞しているオレンジ色の大赤斑は、長径が11°前後と、小さいままです。 しかし周囲の暗部は淡化が進んで、再びクリアに見えるようになっています。 後方のSEBでは白雲活動が活発になっています。
北赤道縞(NEB)は幅広く活動的ですが、その北側は目立つ模様がほとんどありません。 北温帯縞(NTB)は淡化消失したままで、outbreakの兆候は見られません。 唯一、II=75°の北北温帯(NNTZ)にNN-WS4と呼ばれる白斑が明るく目立っています。 メタン画像ではII=275°にも白斑があり、NN-LRS1と思われます。 もうひとつのNN-WS6は行方不明です。 昨シーズンの動きを延長すると、5月頃にNN-LRS1と交差しているので、合体してしまったのではないかと筆者は考えています。
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[図2] 8月の木星面展開図 |
8月19日〜21日の7画像から作成。中央の大赤斑がよく目立つ。中央左のEZ南部にはSEDによる明暗模様が広がる。拡幅したNEBはSEBよりも幅広く見える。撮像:伊藤了史氏(愛知県、30cm)、ジャンポール・オジェ氏(フランス、40cm)、クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm)、井上修氏(大阪府、28cm)、宮崎勲氏(沖縄県、40cm) |
環の傾きは3°となり、6月末の極小時と比べて少し幅広くなり、両サイドでカシニの空隙が三日月状に弧を描いているのが容易にわかります。 衝が近くなり、環が明るくなる衝効果が始まる時期ですが、まだ目立ちません。 太陽に対する傾きが小さくなってきたことが一因と思われます。
土星面は静かで特に異常は見られません。 衛星やその影が土星面を経過する現象が、頻繁に見られますが、ティタン以外の衛星はとても小さく、撮像や画像処理にはいろいろな工夫がいるようです。
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[図3] 土星面を経過する衛星とその影 |
左) ティタン(上)とディオーネの影(下)。ティタンには周縁減光が見られる。撮像:エリック・シューセンバッハ氏(キュラソー島、35cm)。右) レア(上)とテティス(下)。どちらも本体と影が見られる。撮像:森田光治氏(滋賀県、32cm) |
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