天文ガイド 惑星サロン2009年11月号 (No.86)三品利郎

火星の雲は夜できる

昨年、フェニックスは、火星の土壌分析に加えて気象観測も行いました。そして、 NASAとアリゾナ大学は、昨年9月に「火星で降雪現象(Falling Snow)を観測した」 (*1)と、後方散乱係数を時間と高度軸でプロットしたグラフ(図1)(*2)を公開し ました。白い部分が後方散乱係数の大きな雲粒子の密度の濃い部分に相当します。

さて、その観測結果が今年7月、サイエンスに"Mars Water-Ice Clouds and Precipitation"(*3)として掲載されています。興味深い点は、火星の雲に関する 次の2つです。

(a) 大気温が-65°Cまで下がると水の氷の雲ができます。火星の気圧下では、二 酸化炭素は-120°C以下でないと氷結しないため、温度から水の氷であることが わかります。

(b) 火星の時刻で、午前1時ごろに約4kmの高さと1km以下の高さに氷の雲ができ ます。時間と共に氷の雲が低くなり、明け方には火星表面にまで下がります。氷 の雲は早朝まで残り、昼間、火星面が温まると消えます。

火星の朝側の欠け際に、朝霧が見えることは地上観測で、古くから知られていま す。地上からは火星の夜の様子が判りませんが、夜も火星の気象観測できるフェ ニックスにより、火星の雲が夜できて早朝には朝霧となるが判りました。

参考資料: *1 アリゾナ大フェニックス・プロジェクト http://phoenix.lpl.arizona.edu/09_29_pr.php *2 同 http://phoenix.lpl.arizona.edu/images.php?gID=36972&cID=322 *3 J.A.Whitteway et al., Science 325(2009) p68


[図1] 火星の雲の密度と時間による高度の変化 (拡大)
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