天文ガイド 惑星サロン2010年5月号 (No.92)米山誠一

AviStack:惑星撮像用のウエッジプリズム

光は波長毎に屈折率が違うので、プリズムで虹の様に七色に分離されます。大気 は高度により密度が違うので大気中を進む光は、極わずかですがプリズムと同じ 様に色分散を起します。これを大気のプリズム効果と呼んでいます。低空ほど空 気の密度が高く、その効果も高いのです。超望遠で惑星の強拡大撮影を行うと、 そのわずかな色ズレが顕著に現れます。その色ズレを打消すために、角度が小さ い(1度から3度程度)ウェッジプリズムが使われています。

色分散の度合いは惑星の高度により変化するため、一定の角度のウェッジプリズ ムでは、十分な調整は困難です。高度60度程度なら1度のウエッジプリズム、高 度が30度程度なら2度のウエッジプリズムの様に微妙な調整が必要になります。

その様な微妙な調整を行う為に工夫されたのが、角度可変式のウエッジプリズム 装置です。その大半がケンコーのバリクロスフィルターのケースを利用して作成 されています。バリクロスフィルターを分解し、2枚のクロスフィルタと1度のウ エッジプリズムを入れ替えるのです。拡大光学系への組み込みは、接眼部用の各 種パーツを使うことで対応できます。

バリクロスフィルターは、回転部分がフリーなので、それのみではカメラの重さ で接続部分が緩んで分解するので単独では拡大光学系の間に入れる事はできませ ん。その為、アルミ材などの補強材料出両端を接続する必要性があり、工作に手 間がかかりますが、作成できれば惑星の画質向上が望めます。2枚のウェッジプ リズムの角度を変更する事で、0度から2度まで角度を無段階に変える事ができ、 それで、惑星の高度変化による微妙な調整や色ズレ方向の調整も容易になります。 この様な角度可変式のウエッジプリズム装置を作成・販売してくれる業者がある と嬉しいのですが。


[図1] 大気分散のモデル図(拡大)

[図2] 自作のウエッジプリズム(拡大)
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