天文ガイド 惑星サロン
2017年1月号 (No.172)
三品利郎

エクソマーズの第1弾

欧州宇宙機関(ESA)とロシア連邦宇宙局の共同プロジェクト、エクソマーズ(ExoMars)の第1弾として、2016年3月に打ち上げられてから約7か月の旅を終え10月19日に、「周回探査機TGO(トレース・ガス・オービター)」が火星を回る軌道にのりました。 一方、着陸機の「スキアパレッリ」は降下後に通信が途絶え、その後、NASAのMROが墜落している痕跡を見つけました。 「スキアパレッリ」は着陸後、バッテリーが使える数日間に、気象観測やダストに伴う電場の観測を行うはずでした。 第2弾の探査車は、2018年に打ち上げが予定されています。

ESAが公開している"exomars Media kit"から、TGOについて簡単に紹介します。

TGOは楕円軌道を周回しながら徐々に高度を下げて行き、1年かけて高度400kmの円軌道にのります。 上空から火星の地下にある氷のデポジットを探し生命の兆候を探ります。 さらに、火星の大気、メタンガスや水蒸気、酸化窒素を調べます。 特に、メタンガスの地理的な分布や季節変化を解析します。 因みに、先行するMars Expressや地上観測から火星のメタンガスが季節変化することが示唆されています。 TGOはそれを精度よく観測する予定です。 もし、実際に季節変化が起きていれば、メタンガスを生成・分解するメカニズムが存在することになります。 それは、地質的な活動の結果かも知れませんが、微生物が生成したものである可能性もあります。

また、TGOは火山などの火星表面を撮影します。 そして、2019年に探査車ーが火星に到着すると、TGOが探査車と地球との通信を中継します。

[図1] 火星を回るTGO(想像図) (ESA/ATG medialab)

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