天文ガイド 惑星サロン
2017年2月号 (No.173)
堀川邦昭

不運続きのアウトブレーク

木星と太陽が合となり観測ができなかった間に、北温帯縞南縁(NTBs)を流れる木星面最速のジェットストリームで突発的な攪乱活動(outbreak)が発生しました。 木星の観測シーズン(Apparition)は13ヵ月ありますが、太陽に接近する1〜2ヵ月の間は見ることができません。 その間に重要な現象が起こるという不運が時々あります。 太陽との合が9月26日で、逆算されたoutbreakの発生日は9月15日ですから、何という不運でしょう。 前回2012年のoutbreakも、合のひと月前に発生しており、現象の最初の部分しか観測できませんでした。

NTBs jetstream outbreakは、1970年以降、ほぼ5年おきに発生するようになりました(それ以前は約10年おき)。 1991年から2006年までは活動を休止していましたが、2007年に活動が再開した後も5年周期は維持されています。 この間、8回のoutbreakが起こりましたが、ちゃんと観測されたのは4回しかありません(1970年、1975年、1990年、2007年)。 1980年と2012年は観測シーズンの終わり近くの発生、1985年は合の時期と重なり全く観測がないのです。 勝率5割というのは、上記の観測期間から見ても、かなり悪いといわざるを得ません。 特に今回は、2012年3月から4年半後と、なぜか半年も早く発生してしまいました。 こうなると、どこかのプロ・スポーツのジンクスのように、「ナントカの呪い」などと呼びたくなってしまいます。

NTBs jetstream outbreakは、木星面最速のジェットストリームを直接観測できる貴重なチャンスです。 5年後に再び起こると予想されるoutbreakは、「ナントカの呪い」が解けて、活動の全容を捉えることのできるような良い時期に発生することを願いたいものです。

[図1] 1990年と2007年のNTBs jetstream outbreak
どちらもLeading spotと後方の暗部が見られる。左) 筆者スケッチ(16cm)、右) クリストファー・ゴー氏撮像(フィリピン、28cm)

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