天文ガイド 惑星サロン
2017年6月号 (No.177)
水元伸二

『考える観測者』を目指す

木星を撮像、スケッチしただけではまだ観望の域、一歩進めて必要な情報(観測年月日・時刻(UT)、中央経度、望遠鏡種類・口径、撮影カメラ、観測者名など)を付加することで観測記録になります。 しかし個人レベルの観測記録だけではそう役立つものではなく、次のステップとして観測記録を学会(国内では月惑星研究会、東亜天文学会木土星課、海外ではBAA(英国天文協会)、SAF(フランス天文学会)、PVOL(惑星仮想天文台&研究所)など)へ報告してみませんか。 学会では観測記録をもとに報告書の作成や観測記録のアーカイブ化を行っていてプロを含む世界の観測者・研究者が活用し、木星大気現象の解明に役立っています。

観測を継続して知識も増えてきたら次のステップです。 それは観測記録を解析することです。 自らの観測記録だけでなく他の観測者の記録も活用してドリフトチャートや展開図を作成(図1)、表面模様の変化を解析、過去の結果と比較するなどして観測レポートとしてまとめます。 WinJUPOSなどのフリーの解析ソフトもあるので活用することをお薦めします。 経度データの解析にはExcelなどを使うのもよいでしょう。 さらに現象に法則性を見出す、新たな仮説を提示するなど解析の場が拡大して行きます。

「観測者たる者、考える観測者たれ」木星観測の先達、佐藤健氏の言葉です。 最後のステップまで来ればもう立派な『考える観測者』になったと言えるでしょう。 皆さん『考える観測者』を目指してみませんか。

[図1] mid-SEB outbreakのドリフトチャートと展開図
左) 報告された画像をWinJUPOSで経度を測定、Excelでグラフ化。白雲が拡がっていく速さが分かる。右) 報告された画像からWinJUPOSを使用して展開図化。白雲の拡がりと変化の様子が分かる。

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