天文ガイド 惑星サロン
2018年11月号 (No.194)
熊森照明

沖縄で捉えたサヘキクレーター

火星大接近に合わせて7月初めから一月間、沖縄の糸満市にベランダ望遠鏡(C14:口径35cmのシュミカセ)を持ち込みました。

沖縄は惑星用のシーイングが良いことで知られています。 しかし、今年の沖縄は異常気象で、沖縄の惑星観測者に聞くと、5月から空梅雨の間は天気もシーイングも良かったのに、梅雨明けから悪くなったと言われました。 実際に惑星を観測すると、期待していた「微動だにしない惑星」には遭遇することはできませんでしたが、普段、大阪・堺で観測する時よりも、平均で10分の2段ぐらいはシーイングが良好で、画像処理を行うと今までのベスト級の惑星像が簡単に得られました。

大接近が近づいた7月26日の夜、滞在中一番の良シーイングがやって来ました。 大規模ダストストームの最中ですので、模様はかなり淡いです。 それでも画像処理後の火星には、大シルチス辺りに細かい模様がたくさん現れ、その中には小さなクレーターを思わせる、丸い明斑が多く見られました。 これらの小さな明斑をNASAのクレーターマップと照合すると、日本のアマチュア火星観測の大先輩、佐伯恒夫さんの名前が付いたSAHEKIクレーターが見つかりました。 直径85kmのクレーターは普段捉えることができないのですが、ダストがクレーター内に漂ってクレーターの存在を教えてくれていたのでした。

ダストストームと沖縄のシーイングとの、奇跡のタイミングだったかも知れません。

[図1] SAHEKIクレーターを捉えた火星面
2018年7月26日14時28分(UT)。口径35cmシュミカセ、ZWO ASI 290MMモノクロカメラ、Xagyl Lフィルター。沖縄糸満市にて(中央部を強調)。

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