天文ガイド 惑星サロン
2019年10月号 (No.205)
堀川邦昭

カシニの空隙から見える土星

先月号のレポート本文で触れましたが、土星のカシニの空隙から、環に隠れた本体をのぞき見ることができます。

A環とB環の間にあるカシニの空隙は、環の構成粒子がほとんどないので、カシニの空隙から太陽光が差し込んで、土星本体に線状に明るい領域ができます。 「のぞき窓」として利用できそうですが、日が差し込む角度=太陽と環の平面の角度(B')と地球から見る角度=地球と環の平面の角度(B)には差があるので、普段は明るい領域が見えないのです。

ところが、地球が太陽と土星の間を横切る衝の頃は、BとB'が同じになるので、日が当たっている領域を見ることができます(合の時も同じですが観測は無理です)。 7月の画像を見ると、カシニの空隙が本体を横切るところは明るくなっていて、まさに上記の状況であることがわかります。

隙間からのぞき見る土星の南極地方は青白い色で、いかにも寒々しい印象です。 土星は内部からの熱の方が大きく、太陽光の効果は小さいと言われますが、表層部分では違いがあるように見えます。 来年になると環の傾きが減少して、隠れていた南極地方が顔を出します。 どんな様子なのか、とても楽しみです。

[図1] カシニの空隙によってできる明るい領域と地球の位置関係
環の影の中でカシニの空隙のところだけが日が当たって明るくなっている。E1の位置の地球から見えるが、E2の位置では角度がついて見えない。
[図2] カシニの空隙からみる土星本体
7月はカシニの空隙の中に土星の南極地方が見えているが、4月の画像では暗く見えない。

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