天文ガイド 惑星サロン
2021年9月号 (No.228)
堀川邦昭

木星観測者の火星見物

2009年から30cm反射を使っています。 普段は木星ばかりで、めったに他の天体を見ることがないのですが、大きな火星を見るチャンスだったので、昨年は木星観測の後に火星を観望を楽しんでいました。

2018年にも見たのですが、大規模なダストストームのせいで、期待外れでした。 昨年はその雪辱戦でしたが、夏から秋にかけて好シーイングに恵まれたこともあり、火星面の詳細な様子を堪能することができました。 30cmの解像力は素晴らしく、若い頃に見た火星図や著名な観測者のスケッチで見たような火星面です。 新鮮な感動がありました。 また、昔「運河」と呼ばれたすじ模様もはっきりと見えます。 11月に発生したダストストームでは、マリネリスが谷に溜まったダストで明るく見えたり、子午線の湾の形が毎日変わる様子も楽しむことができました。

縞模様の木星に比べると、火星は模様の形が不規則ですし、輪郭のはっきりしない模様も多いようです。 微妙な濃淡を見分ける必要があるので、口径による見え方の差は木星よりも大きいように感じました。

さて、キンメリア人の海と呼ばれる暗色模様から、北に向かって突起が伸びています。 画像ではお馴染みの模様ですが、今回初めて眼視で見ました。 ベテラン観測者の安達誠さんに聞くと、正式な名前はないとのことでした。 そこで、勝手に「キンメリア人の盲腸」と呼ぶことにしました。 まじめな火星観測者に叱られてしまいそうですね。

[図1] 昨年の火星
中央に筆者がキンメリア人の盲腸と呼ぶ突起模様が見える。撮像:鶴海敏久氏(岡山県、35cm)

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