天文ガイド 惑星サロン
2021年10月号 (No.229)
堀川邦昭

偏在する惑星観測者

月惑星研究会の惑星観測Webサイトは、アマチュアが運営するサイトにもかかわらず、世界最大級の惑星画像アーカイブとして、プロからも大きな評価を受けていて、毎日世界中からたくさんの惑星画像が報告されてきます。

図は過去5年間の木星画像について、国や地域別に世界地図上にプロットしたものです。 観測者の分布には偏りがあって、経度方向に分けると、日本を含む東アジアとオーストラリア、ヨーロッパと南アフリカ、南北アメリカ大陸の3つのグループになります。 大雑把に見て、政治や経済が安定している国や地域に重なるようです。

地球も惑星も相互に自転しています。 観測地域によって見える惑星領域は異なりますので、その偏りは惑星面を追跡する上で、大きな影響があります。 火星の場合は、自転周期が24時間半と地球に近いため、1日で火星面全周をカバーできて理想的です。 一方、10時間弱で自転する木星では、ヨーロッパは日本の1自転後、北米や南米は1自転前の木星面という関係になっていて、全面をカバーするという点では都合が悪い分布です。 中間のインドやハワイで観測する人がいてほしいと思うのですが、ぜいたくな悩みと言うべきかもしれません。

[図1] 木星観測者の分布
過去5年間の報告を観測地の国や地域別にプロットした。円の大きさは報告数を示す。火星についても同じような分布になっていると考えられる。

前号へ INDEXへ 次号へ