天文ガイド 惑星サロン
2025年12月号 (No.279)
鈴木邦彦

主鏡の再蒸着

私の望遠鏡は1990年に自作研磨した口径19cmのニュートン反射です。 かれこれ35年目になりますが、これまで一度も再蒸着してきませんでした。 反射率の低下をあまり感じていなかったこと、大学天文研所属時代に「再蒸着すると面精度が落ちる」というまことしやかな噂があって、できれば先延ばししたいと思っていました。 しかし、さすがに裏面から光を当てると無数のピンホールが増殖しており、膜面も弱く傷つきやすくなっていたので、木星オフシーズンの6月に再蒸着に出すことにしました。

依頼先は最初に蒸着してもらったジオマテック(旧:松崎真空)で、剥離と再蒸着(アルミ増反射コート)という内容、発送してから完成到着まで約2週間、費用は5万円弱でした。 梱包を開けるときはドキドキしましたが、35年ぶりの蒸着面の美しさは格別で、黒光りする鏡面にほれぼれします。 実際に月や惑星を観察してみると、気流が良ければスカっと明快で解像度にも全く影響はなく、蒸着前よりもコントラストが一段上がった印象です。 撮像結果も良好で、再蒸着による光学面への心配は全くの杞憂でした。 波長毎の反射率測定データも付いており、概ね95%前後となっています。

ふり返れば、最初の蒸着面はよく35年も持ったものです。 観測時以外は鏡筒を室内保管していたのが良かったかもしれませんが、徐々に進行していた表面の欠陥が再蒸着で新品に戻る様はやはり気持ちの良いものです。 皆さんも気になっている鏡面があれば、再蒸着してはいかがでしょうか。 これに気を良くして、次は斜鏡のリニューアルを考え中です。


[図1] 再蒸着前の鏡面
前号へ INDEXへ 次号へ