第24回木星会議集録 2000.2.26〜27![]() 1999年6月〜2000年2月の木星観測と研究発表於 愛知県名古屋市NTT松原苑 2000.2.26〜27![]() |
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![]() 東亜天文学会薮理事長から助成金をいただきました。 |
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木星面の概況(1999-2000シーズン) 1.永続白斑(LEBS) BEとFAの間隔は、今シーズンを通して13〜16°の間で推移してきた が、FAが大赤斑を通過した2000年1月以降、徐々に接近しつつある。 間隔の変化(伊賀氏測定) 2000/01/05 16° 08 16° 15 14° 29 13° 02/11 11.5° 13 11° 2/25の最新データでは、池村氏画像(伊賀氏測定)で11°、堀川の CMTで11.6°であり、今後さらに接近し合前後に合体する可能性が高い。 両白斑の間にあった低気圧的白斑は、1999年12月〜2000年1月にかけて 消失したようだ。今回の接近は、これが引き金になっていると思われる。 可視光ではFAの方がやや南よりに位置しているが、メタンバンドでは ほとんど同じ緯度にある。 前回、BCとDEの合体は、DEの大赤斑通過から4ヶ月後の1998年2月に起 こり、中間の低気圧的白斑はやはり消失していた。最後の観測は1998年 1月中旬で(Pic du Midi)、間隔は約10°であった。したがって、今回 もあと数ヶ月で合体すると思われる。 2.大赤斑(GRS) シーズンを通し、RS本体がむき出しで見えることが多かった。南側を 囲むアーチの活動は弱く、前方のSEBsに沿って短いstreakが観測される こともあったが、Dislocationなどに発達することはなかった。RS本体 は、淡く赤みも弱かった。北半分が相対的に淡く、内部に白斑が見られ ることも時々あった(安達)。全体としてやや小ぶり(平均17.2°、堀川の CMTより)で、1985年以降では最も小さい。経度は衝でII系:70°に位置し ていた。シーズンを通してゆっくりと後退運動(65→75°)が見られ、こ こ10年の傾向と一致する。 |
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SEBsのジェットストリーム暗斑などのドリフトチャート
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EZのfestoonなどのドリフトチャート
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NEBnのBargeなどのドリフトチャート
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図1 |
図3 |
図4 |
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序 (Introduction) 木星面のベルト/ゾーン上には様々な模様が観測される。これらの模様また は現象は、木星の緯度帯ごとに特徴的であり、大赤斑(GRS)、永続白斑(LEBS)、 SEB撹乱などはその代表例である。 北赤道縞(NEB)北縁から北熱帯(NTrZ)でも極めて特徴的な模様が現れること が知られている。ひとつは暗斑で、大きく拡散したものから小さく丸いものま で形状は様々であるが、典型的なものは東西に長く輪郭がはっきりしているた め、バージ(barge) - はしけ - と呼ばれる。もうひとつは小型の白斑で、ノ ッチ(notch) - 刻み目 - と呼ばれる。通常はNEB北縁に半円形の湾入を形成し ているが、NEBが幅広い時にはベルト北部に埋もれた小白斑として見られるし、 ベルトが細くなるとNTrZに露出して観測が困難になる。バージやノッチは、同 時期に複数個が交互に並んだアレイとして形成される傾向があり、ボイジャー の画像からNEB北縁のジェットストリーム(後述)の蛇行部分に生じる渦である ことが知られている。 また、NEB北縁には大赤斑のミニチュアのような、赤みを帯びた斑点が出現 することがあり、小赤斑(LRS)と呼ばれている。これまで観測されたのは、18 95/96、1919/20、1973、1976/77、1992/93、1999/00の6シーズンしかない。 ノッチと同じ高気圧的渦であるが、成因は明らかになっていないが、Rogers (1995)はNEB内部に発生する白雲活動(rift)との関連を示唆している。 これら3種類の模様の特徴を表1にまとめる。 表1
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観測 (Observation) 1997年以降、NEB北縁には多くのバージやノッチが観測されている(図2)。 バージは1997シーズンに6個、1998/99シーズンに5個、1999/00シーズンは7個 同定されており、ノッチは1997シーズンに5個観測されたが、それ以後はNEB北 縁がやや後退したため、1998/99シーズンは1個、1999/00シーズンは2個と少な くなっている。比較的長命なものが多く、図2で実線で結んだものはシーズン をまたがって存続している。また、少なくとも3つは、この期間を通じて生き 残っていることがドリフトチャートから明らかである。 過去に溯ると、ボイジャーが木星に接近した1978/79シーズンに4個の典型的 なバージが観測されている。その後はしばらくの間静かであったが、NEBが記 録的に幅広くなった1988/89シーズン以降、NEBnには繰り返しバージとノッチ の出現が見られるようになった。以下にその状況をまとめる。 NEBは1988年の合の時期に北側へ拡大し、1988/89シーズンは近年例を見ない ほど幅広くなった。宮崎(1988)によれば、このシーズンのNEBの幅は14.8°で、 通常の北組織の北側に別の組織が発達し、ベルトは三重構造をしていた。北組 織と中央組織の間には、普段であればバージやノッチであろう暗塊や小白斑が 見られた。 次の1989/90シーズンになると、NEB北縁が後退し、バージのアレイ(8個)が 観測されている。バージは30〜40°の間隔で全周に渡って見られ、このうち数 個は翌1990/91シーズンも観測され、さらに1991/92シーズンまで追跡可能なも のもある。この間、NEB北縁はしだいに静かになり、バージの濃度も減少して NEBnの小さな凹凸として見られるのみとなった。 1992/93シーズンになるとベルトがやや細くなったためか、再びNEB北縁に顕 著なバージがいくつか観測されているが、全体としてドリフトが速くなってお り、それ以前のものとの同定は困難である。 1993/94シーズンはNEBがやや拡幅したため、NEB北縁はほぼ平坦でNTrZに白 斑がひとつ観測されているのみである。翌1995シーズンはNEBnがやや後退し、 ベルト北縁に凹凸が目立つようになり、顕著なバージも2〜3個観測されている。 翌1996シーズン前半も多くのバージが見られ、ベルト北縁に半円形の湾入を 形成するノッチも多く観測されたが、シーズン後半になるとベルトの拡幅が始 まり、バージやノッチは急速に姿を消してしまった。1996年秋の木星面はNEB が幅広く、北縁はほぼ平坦で顕著な模様は見られない。その後、1997シーズン にベルト北縁の後退が始まると、最初に述べたようなバージやノッチのアレイ が発生している。 なおこの間、1993年と1999年に小赤斑が観測されているが、寿命は数ヶ月と 短命であった。 図2に1997年以降のNEB北縁の模様のドリフトチャートを、図3に1988年〜2000 年のNEB北縁の模様のドリフトチャートを示す。 |
図2 |
表2 |
まとめ (Summary) 表2に1988/89シーズン以降観測されたバージやノッチの自転周期を掲げる。 この期間の平均自転周期は、9h55m37.5s±5.3sで、北熱帯流の平均(9h55m28.3 s±7.4s)と比べるとかなり遅い。個々のシーズンで見ても、1992/93シーズン の9h55m29.5sが最速で、ほとんどのシーズンで体系2に近い自転周期となって いる。これは1980年代初めから始まった北熱帯流の減速傾向(Rogers, 1995)を 裏付けている。 表3はNEB北縁の模様の自転周期を、明るい模様(ノッチなど)と暗い模様(バ ージなど)ごとに集計したものである。明るい模様の方がやや短い自転周期と なっており、Rogers(1995)に一致する。 前節で述べたように、バージ/ノッチとも長いものは3年近く存続しており、 木星面の模様としてはかなり長命である。特にNEBの大規模な拡幅期の後に出 現するバージ/ノッチのアレイの方が、単独で発生したものよりも長命なよう である。 興味深いのは図2で「W1」と符号を付けたノッチである。このノッチは他の模 様よりも明らかに速いドリフトを持ち、進路上にあるバージやノッチを次々と 侵食しながら前進している。このように同じ緯度にありながら異なるドリフト を持つのは、北熱帯流の特徴であり、spot同士の衝突も過去に何度も観測され ているが、W1の形状は他のノッチと同じNEB北縁の湾入または白斑であり、見か け上何ら変わりはない。そのため、他のバージやノッチと衝突して、なぜW1の みが生き残ることができるのかは全く不明である。また、W1の通過後にはやや 動きの遅いバージ/ノッチが出現しているようで、W1がNEBnを耕す働きをしてい るように見える。これは、北温帯流-C(NT Current-C)の先行白斑(Leadingspot) のケース(宮崎, 1990)によく似ている。 考察 (Discussion) ここでNEB拡幅期の後に発生するバージやノッチのアレイの起源について考え ることにする。この観測期間におけるNEBの拡幅現象は1988年と1996年に起こっ た。1994年にもNEBはやや幅広かったが、それほど大規模なものではなく、翌19 95年に見られたバージも数少なかった。 バージ/ノッチのアレイは、NEB拡幅末期に形成される。拡幅期のベルト北部 に観測される顕著な暗塊やノッチと同等の小白斑が、ベルト北縁の後退により 取り残されてバージやノッチとなるという見方もあるが、図3のドリフトチャー トでは、1988〜1989年の場合も1996〜1997年の場合も、出現したバージ/ノッチ はどれもベルト拡幅時に見られる模様とは関連を持たないし、拡幅以前の模様 ともつながりは見られない。したがって、バージ/ノッチのアレイは、ベルト北 縁の後退開始時の比較的短時間の間に突然形成されると考えることができる。 恐らく、ベルトの拡幅によりジェットストリームが不安定になり、蛇行するこ とでバージ/ノッチのアレイが形成されるのではないかと思われる。 ベルトの拡幅がどのようにして起こるのかはわかっていない。NEBnのジェット ストリームが北へシフトしている可能性も考えられるが、高気圧的循環を持つ ノッチがNEBの拡幅期間、ベルト北部に埋もれた小白斑として観測されるとい う事実から、拡幅時でもジェットストリームは通常の位置、すなわち小白斑の 南側にあると考えるのが妥当であろう。これが事実であれば、ジェットストリ ームの蛇行はNEBの拡幅が原因であり、木星面のアルベドの変化が木星の風の 運動に影響を及ぼしている例として重要である。 参考文献 (References) Rogers, J.H., The Giant Planet Jupiter (Cambridge Univ. Press, 1995) 宮崎勲, 天界 Vol.761 木土星課報 (東亜天文学会、1988) 宮崎勲, 天界 Vol.780 木土星課報 (東亜天文学会、1990) |
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2 画像処理の例 2.1 手順 私の惑星画像処理は以下のような手順で行っている。 1.重心トリミング 2.良い画像を選ぶ 3.コンポジット 4.大気差の補正 5.画像復元処理 2.1.1 重心トリミング 画角の中心が惑星の中心になるように重心トリミングを行う。これは自 作のソフトによりバッチ的に行っている。これによって、後のコンポジ ット処理が非常に楽になる。自作のソフトは汎用のものであるが、公開 できるレベルになったら、私のWEB(http://www.niikawa.hoops.ne.jp/) からダウンロードできるようにしたい。 2.1.2 良い画像を選ぶ シンチレーションがおさまった瞬間を狙ってシャッターを切ってはいる ものの、ましな画像は1割もない。コンポジットするにあたり、できる だけ良く写った画像を選別することが不可欠である。 さて、デジカメによるカラー画像の場合、大気差の影響やその時々の透 明度による色合いの違いによって受ける印象が異なり、本当に良く写っ ている画像の選別が実に困難である。 そこで、私は、色合いに惑わされず選別を容易にするために、重心コン ポジットしたカラー画像をグレースケールに変換した後にチェックする ようにしている。この目的には、バッチコンバージョンもでき、スライ ドショーも可能なソフトThambsPlus(シェアウエア)が非常に便利であ る。 |
2.1.3 コンポジット 次に、良い画像のコンポジットを行うが、これには、ステライメージ3 をお奨めしたい。コンポジットで加算を選択すると、8ビット以上の階 調が得られる。また、バージョン3になって相関演算によるコンポジッ トが可能になり精度が向上した。なお、フォトショップでもレイヤー合 成によってコンポジットが可能であるが、この場合には手作業で位置あ わせを行う必要がある。 2.1.4 大気差の補正 デジカメによるカラー画像の場合、大気差の影響で色ずれが生じている。 コンポジットの後、これを補正する。ステライメージ3でも不可能では ないが、これにはフォトショップが便利である。調整レイヤーでトーン カーブを上に乗せて、トーンカーブを立ててやると、輪郭部分の色ずれ がはっきりする。その状態で、Gに対するRレイヤー、Gに対するBレ イヤーの位置を各々移動させて、輪郭の色が中心に対して均等になるよ うにする。大気差の補正が完了したら調整レイヤーを削除する。 (なお、大気差がさほど大きくない場合には、このステップは後で述べ る画像復元の後に行ってもかまわない)。 2.1.5 画像復元 コンポジット後に画像復元を行う。木星、土星はLチャンネルで復元す るのが手間もかからず良いようである。そのため、フォトショップを使 って、画像をRGB 空間からLab 空間へ変換する。 次に、L 画像をステライメージ3 を使って画像復元し、必要なら復元 後、アンシャープマスク等のハイパスフィルタ処理により強調処理を行 い、処理が終わったL画像を元のL チャンネルにペーストする。 一方abチャンネル画像はノイズ除去処理(例えばガウスぼかし)を行 い、色ノイズを除去する。その後、Lab 空間からRGB 空間へ戻す。 このようなLab 空間での復元処理は、特にデジカメのJPEG ファ イルやビデオファイルから作成された静止画像をソースとするコンポジ ット画像に適した処理である。なお、L 画像はG 画像を主成分とする ので、R 画像が主となる火星の場合には、RGB 毎に復元する方が良 い。 |
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3.ドリフトチャートと帯状流分布 得られた結果の内、NNTZ, NEB, SSTBのドリフトチャートを、 図1,2,3 に載せる (基準は体系II)。 同定された模様については、図中に番号が振ってある。 またシーズンを越えて同定可能な模様は、線で結んである。 これらを見ると、シーズン中はかなりの模様が追跡されていることがわか る。 しかし、合前後のに適さない期間が数カ月あるため、 シーズンを越えての追跡は難しい。 また図4に、ドリフトレートより計算された移動速度を示す。 斑点の移動速度は、第1近似的には木星大気の東西風速を示すと考えられ るので、 これらをVoyager探査機による帯状平均東西風速分布(Limaye, 1986)と 比較する。 図中、実線がVoyager探査機の結果で、今回の測定結果は、 緯度の測定誤差(各測定値の標準偏差)のエラーバーを伴って、表示してあ る。 風速の誤差(最小自乗法の標準偏差)は充分小さいので、表示していない。 全体的には、今回の測定結果はVoyager探査機の結果と一致していると言 える。 例えば、NT Current-Cの高速気流や、NNTZ付近のシアー流をよく再現で きている。 図5はNNTZ付近の拡大図であるが、 個々の測定が東西方向に平均化された結果でないことを考えれば、 大まかではあるが緯度のわずかな違いによる風速の変化の傾向を捉えている。
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図2 |
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しかし、次に、個々の模様の追跡については、観測時間の関係から地上の小型望遠鏡 でやっていかなくてはならないことであり、また今回の結果からそれが可能であるこ とがわかる。問題としては、合前後の観測不能期間が長く、シーズンを越えての模様 の同定が難しいことが、挙げられる。これは解決することが、そもそも難しい問題で ある。しかし、数年以上の寿命がある木星の斑点を調べるためには、今後この問題に 挑戦していく必要がある。 第3に、どちらにしろ緯度の測定精度がまだ不十分であり、今後の解析手法を改善しな いといけない。今回のような画像にネットを当てる方法は1度の精度が限界であり、他 の方法を考えていくことが必要である。 |
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(左):木星の雲の構造 上からアンモニア、NH4SH、水の雲。 ガリレオプローブによる大気深部の 大気組成比を断熱上昇させた際に形 成されると期待される雲である。 (右):アンモニア組成比鉛直分布 実線はモデル計算によるアンモニア 鉛直プロファイルで、各プロットは 地上観測(○)およびプローブ(□)に よる測定値。 |
3.大気モデル 木星の大気モデルを考える際に、太陽組成を基にして、メタン、アンモニアの組成比を分光 観測から得られた値に合わせたものを使う。最近ではガリレオ探査のプローブによる直接探査 の結果を用いることができるようになった。しかし、電波領域で最も不透明なアンモニアは、 プローブによる直接測定ではなく、電波の減衰から間接的に得られたものである(Young, 1998)。 特にプローブは木星面上で最も乾燥していると言われている hot spot に落ちたために、プロ ーブから得られたアンモニアの組成比は木星面を代表しているとは言い難い。このあたりが地 上から電波を利用してアンモニアの空間分布を探査する意義でもある。 大気組成を仮定すると、その大気を静力学平衡下で断熱的に上昇させることによって、水、 アンモニアが飽和する。過飽和になった分は全て雲になるという仮定から、木星大気上部には 水、NH4SH、アンモニアの3層の雲ができると予想されている(Weidenschilling and Lewis 1973, Atreya and Romani 1985)。残念ながらガリレオのプローブ探査ではこれらに相当する 顕著な雲は測定されていない。 雲が凝結することで対流圏上部では電波の吸収に影響のあるアンモニアが減少する。観測から モデルを用いてこのアンモニア組成比の鉛直プロファイルの決定を試みたい。図2 はガリレオ プローブによる大気深部での大気組成比を用いた雲の構造を計算したものである。実際には雲 がほとんど観測されていないことから、この単純なモデルでは hot spot を再現することはで きていない。 放射伝達計算を行う際の大気分子による吸収源としては、アンモニア(反転遷移,回転遷移、 Pointer and Kakar 1975)、水蒸気回転遷移、水素分子衝突励起線を考慮する。吸収線の広が りについては、Berge and Gulkis (1976), de Paterand Massie (1985), Joiner and Steffes (1991)の方法を用いた。 木星を回転楕円体と近似し、地球からの視線方向を向いている側をグリッドに区切り、各面 素において放射伝達方程式を解く。今回は簡単化のために縞模様構造については、大気深部で のアンモニア混合比に違いを与えたものとした。鉛直方向の積分範囲は、大気深部(100bar)か ら上部に向かって0.1barまで行い、予想輝度温度マップおよび、東西、南北プロファイルを作 成した。マップおよびプロファイルは観測と比較するためにビームサイズでのコンボルーショ ンを行った。 図3は、モデル計算による木星全球のスペクトルである。アンモニアの組成比を太陽組成の 1〜2倍の範囲とすると観測とよく一致することがわかる。しかし、ミリ波領域ではまだ合わ ない部分もあり、これは実験室でのアンモニアの吸収係数についての測定、吸収線モデルの改 良に加えて、未知の吸収物質、雲による影響、大気の構造のより精密な理解などが求められる。 ガリレオのプローブによる大気深部での太陽組成の3倍という結果とはまだ開きがある。同じ ガリレオでも NIMS, NFR では、太陽組成比の1.3〜1.5倍という結果も出ているので、まだ観 測および議論が必要である。 縞模様のコントラスト(図4)は、アンモニアの組成比の違いでうまく説明でき、特に 2-3mm の波長では大きくなり、この波長で観測するのに適している。現在、筆者らのグループで国内 のミリ波観測装置である、NMA (野辺山ミリ波干渉計)による観測の提案を計画中である。 今後は、電波波長によるアンモニアの空間分布に加えて、近赤外による雲構造の観測との関連 や大気力学、雲物理を考慮したモデルの構築の重要になってくるだろう。将来的にはさらに波 長の短いサブミリ波の干渉計(LMSA)による観測が可能になれば、木星だけでなく天王星、海王 星大気についてのアンモニアの空間分布が詳しく観測できるようになるだろう。 参考文献 [1] Atreya,K.S. and P.N.Romani(1985)In Recent advances in planetary meteorology Ed. by G.E.Hunt,Cambridge Univ. Press. [2]Berge, G.L., Gulkis, S., (1976) In "Jupiter", Ed. T.Gehrels, 621-692 [3] de Pater,I.(1986) Icarus 68,344-365. [4] de Pater,I. and S.T.Massie(1985) Icarus 62,143-171 [5] Weidenschlling,S.J., and J.S.Lewis(1973) Icarus,20,465-476 [6] Young, R.E., (1998) J.G.R 103 Icarus,20,465-476. |
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4.撮像と処理![]() ![]() @撮像は、接眼部に取り付けたデジタルビデオカメラの液晶モニターでピントを合わせ、流し取り。 15〜30分間隔で3〜5分撮像します。 A撮像後、静止画で再生し、良い静止画を「DVスタジオ2」でノートパソコンに取り込みます。 ![]() ![]() B数が多いほど良いが、時間がかかるので30〜40枚でやめる。1秒間に60画像あるので5〜10分の 1を選んでも撮像実時間は、3〜10秒以内となります。 ![]() ![]() C「PlanetS」で1枚づつ取り込み、シャープな画像を選びます。 ![]() ![]() D選んだ画像のみを順次コンポジットします。「追加で読み込み」で開くだけなので簡単です。 E位置合わせは、「読み込み時重心移動する」を設定することで自動位置合わせができます。 |
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Planetsでのコンポジットについて ◆Planetsでのコンポジットは、「追加読み込み」で追加していくだけで非常に簡単です。但し、1枚戻 るなどの機能はありません。事前に1枚ごとに画像の良否を確認しておき、良象のみをコンポジット するようにします。 ◆スライドバーで明度とコントラストの調整ができます。10枚以上コンポジットして、明るくなりすぎ たときに使用します。 ◆強拡大で画面からはみ出しているときは、重心による移動をはずしてコンポジットする必要があります。 その際画像のずれがある時は、右上の矢印キーでマニュアル合わせができます。 Planetsでの画像処理について ◆Planetsの画像処理の使いこなしは、まだこれからです。特に周波数強調処理の各パラメーターは、 どのくらいが適切なのか、まだ未知です。 周波数カット45〜70 強調範囲20〜35 強調係数 1.5〜2.0 を設定していますが、元画像の調子 によっては、さらに異なった値が良いことも考えられます。 ◆多くのビデオカメラでの観測者に「Planets」が愛用されることを願っています。 ===================================================================================== コンポジットし、周波数強調で処理した1999年の木星画像です。処理がやや不足と思われる もの、逆に処理が強すぎると思われるものがあります。今後の課題としてご覧ください。 8月、9月、10月に良像が多く、11月になるとシーイングが悪くなりました。 ![]() ![]() |
![]() ![]() ![]() ![]() 5.まとめ 10枚以上の画像をコンポジットし、画像処理を行えば、CCDカメラや デジタルカメラの画像にはおよびませんが、かなり良い画像が 得られま す。輪郭を残した画像からCMTを得ることも可能です。デジタルビデオ の静止画をパソコンに取り込むことが簡単になり、その後の画像処理も容 易になりました。望遠鏡の揺れ、シーイングによる像の乱れを軽減する方 法として有効だといえます。今後は、得られた画像を観測データーとして どう生かすかに努力したいと思っています。 |
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ビデオカメラ アナログ式とデジタル式がありますが画像処理のことを考えるならデ ジタルの方が有利ではないかと思います。倍率を上げますので低速シャ ッターが切れマニュアル露出のできるものを選びます。DCR-VX1000(SONY) は現用機ですが発売されて5年になり、サブに使っているDCR-PC1(SONY) の方がCCDの感度も高く、低照度での分解能も良いように思います。 接眼部に直接取り付けるのもPC1は460gと軽く赤道儀の負担になりません。 (現行機種はDCR-PC100) 撮影 カメラのピントは『マニュアル(手動)』で無限大にあわせ、ホワイト バランスは『屋外(昼光)』に固定しておきます。できれば日付と時刻を UT(世界標準時)に直しておきます。アイピースを覗き大体のピントを 出しておきカメラをセットします。カメラの液晶モニタは小さく、慣れる まで大変見にくいですが(できれば外部出力端子にブラウン管をつなぐ) 慎重にピントを合わせます。そしてぶれないよう必ずリモコンでシャッタ ーを開きます。なお、EZが水平になるよう注意します。シーイングの良 いときは3分ぐらいテープを廻しますが、あまり良くないときは30秒ぐ らいにし、5分〜10分あけて何度も撮ります。拡大率が尋常でないので 赤道儀のセッティングと振動には特別気を配ります。 以上のような点に気をつけて撮影をしていますが、再生時のモニタにも 気を配ります。ごく最近のテレビは大画面でもきめ細かくすばらしい画像 が見られますが、ブラウン管によってはコントラストが低く最悪の画質に なることがありますので要注意です。デジタルテープの情報量は非常に多 く、それを生かせるモニタで観賞してください。 最近マイブームな訳 家庭用ビデオカメラはある程度画像処理を施してからテープに記録され ますが、眼視に非常に近い像として、いつでも何度でも再生してみること が出来ます。眼視の折見落とした現象も後日確認することが可能です。そ れに、20代〜30代の頃、GRSは赤くフェストーンはあくまでも青く見え ていたのが、歳とともにモノクロームに近くなります、あなたも!ビデオ ははっきり色を見せてくれます。初心者に説明するときもわかりやすく、 納得してもらえます。観望会で実際に覗いてもらうまでに確認が出来ます。 (GRS、カッシーニ等)冷却CCDもすばらしいと思いますが、眼視で はあんなには見えません。造られた(?)画像ではないというところに魅 力を感じ、また近い将来、デジタルビデオからHSTのような画像を取り 出す処理ができるようになると確信しつつ、日がな撮影に励んでいます。 ☆ 望遠鏡はアイピースと斜鏡(苗村鏡)を除き、主鏡の研磨からすべて自作 ☆ ビデオカメラの取り付け部分も鏡筒から腕を出し自作(溶接は友人の外村氏) ☆ 赤道儀はNJP(高橋製作所) ☆ なお、現在庭に観測小屋(スライディングルーフ)製作中 |
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図2 |
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新川氏; ピコナは、デジカメとしては、世代が古く、メモリー節約のため、 CFカードに一時的にCCDイメージを書き込む方式です。最近の機種 ではカメラ内のメモリーで処理するので、CCDイメージの取得はでき ません。ピコナでできたのは、全くの偶然ですね。 Q; 池村さんは、どうしてこのピコナを選んだのですか。 池村; たまたま小遣を持っており、店頭展示のものをいじくりまわして、1時 間ほど見た後34000円なら買える、ということで、衝動買いしたも のです。10ビットデーターの取得方法は、その3ヶ月後に撮影中に低 温のためカメラが動作しなくなり、故障したと思って、CFカードに残 っていた未処理の画像データーを、救済しようと調べていて、その構造 がわかり、取得方法も模索で得たものです。つまり、衝動買いした。撮 影中の動作不良がきっかけで、10ビットのウラ業を会得した。という 2つの偶然がありました。新川さん、このピコナの上を行く惑星撮影が しやすいデジカメを作ってください。 新川氏; 開発費が、ん千万円必要でしょうね。 |
●プリズム利用による大気差補正の紹介(池村俊彦) 電子カラー画像は、ソフトウェアにより、3色の色ずれを補正できま す。しかし、緑、青のCCDピクセルは、赤外線にも感光するため、青 の画像単独でも、色ズレにより、鉛直方向にブレて写ることがあります。 これらを補正するためには、撮影時に検眼用のプリズムで色ズレを補正 して撮影することで、防止できます。最近の検眼用プリズムは球面メニ クスになっており、ここにあるような両平面のものは、安達誠氏を通じ て入手しました。種類は 0.5,1,2,3,4,5,6,7,8の9種類です。この度数 は、偏角です。 価格は1枚1500円前後です。厚さによりすこし価格が異 なります。 Q; 全種類を使うのですか。 A; 主に使うのは、1゜2゜ですが、超低空の水星が、8゜のプリズムで きれいな半月状に見え、効果が絶大だと確信し、全種類をそろえました。 Q; 強さはどうやって調節するのですか。 A; 地平高度、拡大倍率によっても補正の強さを調節する必要があるので、 プリズムの種類の選択と、拡大レンズから撮影面までの間に置く位置 の調節により、ピント合わせ時に目で見て合わせます。 Q; プリズムの補正方向はどうやって決めるのですか。 A; カセグレンの場合は、常に、下側にプリズムの厚い方を合わせます。 ニュートンの場合は、少し考える必要があります。が、目で見て、色 が出ない様に方向、強さに調節します。従って接眼部は、プリズムの 回転と、デジカメの構図回転の機能が必要となります。 |
●デジカメでのピント合わせの方法(池村俊彦) @デジカメに、標準レンズをつけて∞の景色でデジカメのモニターを見 てピントを合わせます。標準レンズのヘリコイドの位置を覚えておく か固定します。 Aピント合わせアイピースを、標準レンズに取り付けて、ピント合わせ アイピース側のアイピースを抜き差しして∞の景色にピントを合わせ アイピースを固定します。 B撮影時に、望遠鏡のデジカメ接続部にピント合わせアイピースをつけ て、対象に望遠鏡のラックピニオンでピントを合わせる。ラックピニ オンを固定します。 Cピント合わせアイピースを抜き、デジカメを装着すればピントが合っ ているというわけです。 ピント合わせアイピースは、ピント合わせで覗いたときに口径mmの 2倍以上にします。 ●望遠鏡の光軸合わせ、整備、調整は大切です。(池村俊彦) ここにおられる新川さんの例ですが、シュミカセを使用して撮影され ていますが、最初は画像処理をしても、ボケボケの画像だったのですが、 根気良く調整を行ったところ、新しい望遠鏡を買ったのかと思うほどの 良い画像になり、びっくりしました。画像処理に頼る以前に、望遠鏡の 調整、光軸合わせなどをしっかり行うことは大切だと思います。 |
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最後に、画像からどのような情報を引き出すかについて、私 の経験を紹介しました。 (1)模様の形態学 見えている模様にどのような変化が起こっているかをまと めます。 (2)模様の経度計測 画像の場合は経度を計測することが重要です。現在の方法 は、天文観測年表の経緯度図をスキャナーで取り込み、そ れを画像に重ねて読取っています。得られた画像にネット 画像を合わせるのではなくて、大きめのネット画像に木星 像を拡大して合わせます。この際に周辺減光や位相角によ る影響をどのように減らすことができるかが、最終的な経 度の精度に影響します。 |
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![]() | ・平行な模様を軽く描く ・位置のはっきりした模 様の位置を決める ・その時の時刻を記録する。 ・左側から詳細に描いて いく ・完成 |
◎スケッチの手順 1 平行な縞模様を軽く描く。 このとき、位置や幅ができるだけ正確に記録できるようにする。少し でもずれると最後まで修正できないばかりか、すべてがおかしい記録に なってしまう。位置が取れるまではスケッチには入っていはいけ ない。 2 位置のはっきりした模様を探し、位置を確認する。 確認したらスケッチ用紙に正確に記録して、時間を記入する。 3 細かな部分を記録する。 無理に描かず、確実にあるものだけを記録すること。 上が南となる倒立象の通常の天体望遠鏡の場合、惑星は、自転に より模様が右から左へ移動していく。そのため、隠れていく左側 を優先して進めていく。 4 濃淡をつけて確認する。 ◎重要なことがら きれいなスケッチをみると、写真のようにきれいに描きたいと思うのは、すべ ての人に共通の願望である。もちろんきれいに描けるに越したことはない。しか しながらこれにはそれ相応の練習と技量が必要になってくる。生来、優れた技量 を先天的に持っている人もいれば、持っていても眼に乱視のある人もいる。すな わち、みんなそれぞれ違った条件であるということだ。 重要なことはきれいに描くことではなく、見えている情報を紙の上に正確に記 録することである。すなわち 模様を創造しない 位置を正確にとる ◎CMTをとる 模様が木星面の中央を経過するときの時間を測定することが重要である。模 様を描くよりも、本当は、もっと大切な作業であるともいえる。これはスケッ チをとるときに同時に進める作業であり、訓練を必要としている。スケッチを とるようになった観測者はぜひとも挑戦していただきたい技術である。 ◎スケッチについては下記まで 520-0242 滋賀県大津市本堅田4−8−11 安達 誠 E-mail VZD07247@nifty.ne.jp 以 上 |
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