伊賀 祐一
※画像をクリックすると、大きい画像を見ることができます。
開会の挨拶 IAU総会に出席されるIngersoll先生をお迎えして特別講演を予定しています。今晩は天気も良さそうで、C8での観測会も予定しています。 | ||
研究発表
堀川 邦昭(月惑星研究会)
RogersはSTrZの白斑の特徴を、(1)かなり長命(1983-85,1987-93)、(2)比較的大きなovalで、SEBsにBayを形成、(3)体系IIに対して停止、(4)おそらく高気圧的渦、(5)SEB淡化時に小赤班が発達、とまとめている。 月惑星研究会でのCMT観測をまとめると、この白斑は1994年に出現し停止していたが、1995年からゆっくりと後退を始めた。一方、1987年に見られた白斑も1987-89年は停止していたが、1989年にゆっくりと後退を始めた。1993年にはさらに後退して小赤班がすぐそばに生じた。1993年にはSEB Disturbanceが発生し、5月にはこの白斑は見えなくなった。この白斑と1994年からの白斑は別なものであると考えている。 この白斑が1995年から後退を始めたのは、1995年2-3月にSEBsに暗斑群が発生し、その速いjetstreamの影響だと思われる。同様に1987-93年の白斑が1991年に後退速度を速めたのも、1990年のSEB Disturbanceの影響だと思われる。 | ||
伊賀 祐一(月惑星研究会) 1997年4月頃から、NTBsを高速に前進する暗斑が見られた。暗斑はPic du Midi天文台のI-bandの画像に多く見られるが、浅田・奥田のCCD画像や、眼視でもprojectionとして捉えられている。解析を行なって7個の暗斑に分類することができ、北温帯流-Cの属していることがわかった。平均の自転周期は9h49m8.2sであった。 1965年以降では、1964-65、1970年、1975年、1980年、1990年と5年周期で発生しているが、今回の活動は1992年に見られたような小規模な活動だと思われる。 | ||
公開されている画像を解析したところ、STrZの白斑は図のような動きをし、大赤斑の周りの気流に取り込まれたと考えられる。白斑は大赤斑の内部に入り、大赤斑に飲み込まれたと結論づけられる。しかしながら6月9日以降の白斑は不明になってしまった。 | ||
竹内 覚・長谷川 均(月惑星研究会) 木星の雲の中のことはよく分かっていないが、1995年12月にガリレオ探査機によるprobeのデータから木星大気について推測することができる。木星の大気はアンモニア・硫化アンモニア・水の3層構造をしていて、大気が深くなるにつれて風速が強くなっていることが解析された。しかしながら予想されたほど水の量が多くないことが分かった。 そこで長谷川のfestoonモデル(1980年)を考え、plumeがアンモニア雲が吹き出している箇所、festoonが雲が沈み込んでいる箇所としての対流モデルによる説明を試みた。鉛直方向に東西方向のシアーを考えた熱対流モデルでは、内部ほど風速が大きくなること、水の欠乏が説明できた。 | ||
佐藤 毅彦(東京理科大学 計算科学フロンティア研究センター) これまでの木星磁場の測定は、探査機の直接のスイング・バイによるもので時間も短すぎるものであった。そこでイオによるフラックス・チューブの位置をハワイ大学の3mIRTF赤外望遠鏡で測定し、木星磁場モデルの構築をしている。 改良されたIRTFのデータを用いて作成した南半球でのモデルと測定値との違いがあり、球面調和関数の次数を3次から4次に改良することで、実測値をよく説明できるようになった。 |
特別講演
Andrew P. Ingersoll Professor of Planetary Science
Division of Geological and Planetary Sciences
最初にガリレオ探査機の最新の画像を中心に、木星の大気現象を説明されました。次に木星大気の理論的な解析の研究の一端を、modonのコンピュータ・シミュレーションにより渦がマージされる様子をご紹介されました。最後に外惑星の大気の雲の成分や風速などのモデルのご紹介があり、最新のご研究をアマチュアのためにやさしく解説していただきました。 なお、先生の講演は佐藤毅彦氏によって同時通訳が行われました。
講演終了後、先生のご好意に感謝してプレゼントをお渡しいたしました。
| ||||
交流会ならびにポスター発表 特別講演を終えられたIngersoll先生を囲んで交流会が行われました。プロの研究者と生でお話する機会を持つことができました。また、並行してポスター発表も行なわれ、以下のような発表がありました。
STrZの白斑の運動について 堀川 邦昭(月惑星研究会)
|
懇親会 Ingersoll先生を交えて、興正会館1階食堂にて懇親会が開かれました。木星に関係する数字から何人かの方にスピーチをいただきました。20時からの分科会や観測会を控えていることから抑え目の懇親会でした。料理が少なくてすみませんでした。 | ||
分科会
懇親会を終了した20時から4つの分科会が行われました。
会館の外では、C8シュミカセを5台使用して、木星観測会が行われました。ちょうど20時に大赤斑が見えるとあって、一度は全員が外に出てしまいました。基礎講座を聴いて実際にスケッチに取り組んだ熱心な観測者が予想以上におられました。石橋氏は持参されたビデオカメラによる木星の撮影を行われ、翌朝ビデオ上映をされましたが、眼視で見るよりもコントラストがあがり、色調も豊富な木星に感心させられました。 | ||
番外編
写真はIngersoll先生が初めて挑戦されたカラオケの様子を捉えたビデオを前に談笑しているものです。一部のものは深夜まで話し込んでしまい、睡眠不足の方が多かったことでしょう。反省しましょう、T氏。 翌朝は7時15分という早い起床で、朝食を1名を除いた全員でいただきました。この会館は宗教施設でもあり、山口管長からの訓話がありました。 |
ディスカッション:今年の木星面(座長 堀川邦昭)
堀川氏が座長を務められ、今シーズンの木星面の特徴をまとめられました。画像やスケッチを紹介するためにビデオ・プロジェクターが大活躍でした。
STB本体は90°の永続白斑BC付近から175°まで見えています。この後方ではSTBnだけがわずかに残って、STBはしだいに北側が剥ぎ取られ、STBsとして208°まで続きます。さらに後方はSSTBとして見えています。
| |||||||||||||||||||||
研究発表
長谷川 均、竹内 覚、森 淳、山本 直孝、渡部 潤一 Shoemaker-Levy第9彗星の衝突痕跡の近赤外分光観測を、1995年5月と1996年7月に岡山天体物理観測所のOASISを用いて行なった。雲粒子による多重散乱を考慮した放射伝達モデルの計算を行なったところ、観測されたアルベドの減少は、痕跡粒子の落下によるものであることがわかった。 | |||||||||||||||||||||
安達 誠(月惑星研究会) 1973年以降の観測からSTBの変化を追いかけてみた。
STBの大きな変化が発生した時には、必ず永続白斑FAが大赤斑を通過している。FAと大赤斑との関係があるように思われる。今年もFAが11月頃に大赤斑を通過するので、STBに変化が起こるかもしれない。 | |||||||||||||||||||||
唐沢 英行(月惑星研究会) 6月14日〜8月20日までにデジタルビデオで木星を観測した。これらのビデオの上映を行い、十分な観測として利用できることを示す。 | |||||||||||||||||||||
来年の木星会議
最初に長谷川氏から、彗星・小惑星・流星の観測グループと合同で太陽系会議を開催してはどうかという提案があることが報告されました。木星会議として参加することを前提として、検討を進めることが確認されました。
次回の木星会議は、東京で1998年秋に開催されることが決定しました。
|