3月下旬の木星

STrZの白斑と大赤斑の会合

安達 誠・堀川邦昭・伊賀祐一


今年の木星の観測シーズンがスタートしましたが、まだシーズン初めで、木星の高度も低く、シーイングが良くなりません。

昨シーズンから観測されていたSTrZの白斑と大赤斑との会合が始まっています。3月下旬になって、ようやくこの現象の確認がなされると同時に、『大赤斑消失か?』という、報告が飛び込んできました。まだはっきりと確認されたわけではありませんが、STrZの白斑と大赤斑との会合によって、大赤斑に大きな変化が起こっているようです。今後の観測が期待されます。(伊賀:3月31日)

その後、安達 誠氏から3月31日の観測報告が送られてきました。大赤斑は赤味はないもののその痕跡は残っているとのことです。条件は良くなかったとのですが、解説図とともに掲載します。しかしながら、シーイングが悪かったり口径が小さい場合は、大赤斑は見えない状態と言えます(伊賀3/31スケッチ)。The Giant Planet Jupiter(J.H.Rogers)の第10章にあるように、STrZの白斑からの白雲が大赤斑に取り込まれて、大赤斑が淡化している可能性もあります。4月の観測が待たれます。(伊賀:4月 2日)

安達 誠氏の観測報告から(1997年 3月26日)

1997年 3月25日 19h58m(UT)
28h58m(JST)
S:1(2)/10 T:4/5
310mm Refl. x360
ω1=240.1 ω2= 15.8
 3月26日早朝に木星の観測をしました。ちょうどGRSの前方が見える経度で観測をねらっていました。天気予報ではよくない予報を出していましたが、あきらめずに4時30分に起きました。天候はまだ曇っておらず、絶好の観測条件となりました。観測を始めた5時頃は強烈にシーイングが悪くなにがなにやら分かりませんでしたが、時間がたつとともに様子がはっきりとつかめるようになりました。

1997年 3月25日 20h26m(UT)
29h26m(JST)
S:3(4)/10 T:4/5
310mm Refl. x360
ω1=257.6 ω2= 32.7
 5時47分まで追い続けましたが、結局シーイングは4までにとどまりました。しかしながらおよその様子は捕えることが出来ました。STrZのBayはもう見えなくなっていました。これがその痕跡かな?と、思われるものはありますが、何とも不確実でした。GRSは輪郭はすっかりなくなり、位置すらはっきりとつかめない状態で、赤味はほとんどまったく感じられませんでした。ぼやけた見え方で様子をなんとか見極めようと注視していましたが、つかみ切れませんでした。それほど悪いシーイングではなかったのですが、はっきりとつかめなかったことは現在のGRSに重大な変化が起こったことを示しているものと思われます。

※下にSEB〜STBの拡大図と模様の説明を掲載


SEBはSEBの北組織の南側(ベルトの中央近くの濃いバンド)は昨年と同じで非常に濃いベルトとして存在し、その北側すなわちSEBの北のはしはshade状態になっています。気流がよいともやもやした微妙な模様が見えます。一方SEBsはこれも昨年と同じで、暗斑の連続状態にみられます。所どころprojectionらしきものが見られます。また、GRSの前方だけにいえることかもしれませんが、SEBの中央は明るいバンドになっており、所どころちいさな明るいspotがみられます。

 STBはかすかながら見えていましたが、GRSの後方についてはよく分かりませんでした。

 以上、気のついたことを書き留めましたが、みなさんの中で観測をされている方がありましたら、報告をお願いします。

 ところで、このような変化はこの後の追跡が肝心ですが、賭けをしていた3つの選択肢のなかにGRSがつぶれるというのがありましたっけ?


堀川邦昭氏の観測報告から(1997年 3月25/26日)

昨朝、今朝と観測しました。
シーイングはそこそこでしたが、やっとまともな木星面が拝めました。

3/24 20h17m(UT) 29h17m(JST) ω1= 94.3 ω2=237.1
3/25 20h12m(UT) 29h12m(JST) ω1=249.0 ω2= 24.3


1997年 3月24日20h17m(UT)
ω1= 94.3 ω2=237.1
160mm Newtonian Or5mm x200

1997年 3月25日20h12m(UT)
ω1=249.0 ω2= 24.3
160mm Newtonian Or5mm x200
●STrZの白斑 & 大赤斑
  • RS bay直前のSEBsが一段低くなっているような形状に見える。RSに到達しているかどうかは判別できない。
  • bay中央のCMTは薄雲と日の出のため取れなかったが、少なくとも20:30UT以降(ω2>35)であろう。
  • RS本体は淡いが、STrZ内のshadeとして見えた。赤みは感じられなかった。

●SEBの濃度

  • NEBと比べればやや淡いが明瞭なベルトで、淡化の気配はない。前回の観測で淡く見えたのはシーイングのせいと考えられる。

●その他

  • NEBは濃度にムラがあり、昨シーズンに続き活動的である。
  • NTrZは薄暗くshadeされている。24日の方がshadeの程度が強かった。
  • STBは220°付近より後方で淡化し見えない。RS前方でも同じ。

伊賀祐一氏の観測報告から(1997年 3月31日)

ようやくSTrZの白斑と大赤斑の経度を観測することができました。残念ながらシーイングが思ったほど良くなかったのですが、大赤斑は存在が分かりません。

  • 大赤斑はその存在がわからない。
  • SEBはSEBnが濃く、大赤斑の前方(CMT:ω2=49.6)で切れ目ができている。このSEBの切れ目がSTrZの白斑なのか? この切れ目より後方は淡くなっていて、SEBと区別できない。
  • 大赤斑(の位置らしき場所)の南側のSTrZが暗くshade状態である。暗柱は認められないが、気になる状態である。
  • NEBに濃化部(CMT center:ω1=319.6 ω2=56.9)が存在する。
  • NTBからNNTBにかけて濃化部が存在している。
1997年 3月30日 20h05m(UT)
29h05m(JST)
S:3(2)/10 T:4/5
280mm SC x280,x187
ω1=312.3 ω2= 49.6
1997年 3月30日 20h25m(UT)
29h25m(JST)
S:2/10 T:4/5
280mm SC x187
ω1=324.5 ω2= 61.7

安達 誠氏の観測報告から(1997年 3月31日)

GRS付近はシーイングが悪く、モヤモヤしていてはっきりしない。状態をはっきりつかんだわけではないが、記録として無理矢理drawingとして残す。

  • GRSの後ろ半分のようなものが見えているが、何だろう。GRSのedgeのようにも見えるが、はっきりしない。また、赤味も全く感じられない。
  • STBはGRS後方のものが前方のものよりclear。
  • 北半球全体は南半球と比べて温調で明るい。
  • NTrZもNNTZもかなり暗く、様子がよくつかめない。
  • NTBは幅が広く見える。南北二条のようにも見えるが、このシーイングでははっきりしない。
1997年 3月30日 20h20m(UT)
29h20m(JST)
S:1(2)/10 T:4/5
310mm Refl. x360
ω1=321.4 ω2= 58.7
スケッチの一部拡大
GRS近傍の解説図

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