1月の木星は18時に南中し、冬場の悪気流のおかげで観測数が減ってしまいました。しかしながら、木星面にはいくつかの変化が起こっています。
STB(南温帯縞)にある2個の白斑BEとFAは1月も健在です。大赤斑の南を通過した2個の白斑の画像を図1に示します。2個の白斑の距離は1999年8月末に13度まで接近しましたが、大赤斑に後方から接近した10月頃には16度まで広がりました。2つの白斑の間にできたSTB内の小白斑も、大赤斑の南を通過中の12月7日まで見えていましたが、2つの白斑の距離が広がったためかその後消失しました。
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図1 接近しつつあるSTBの白斑BEとFA |
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左:池村俊彦氏(31cm反射、PICONA画像)、右:前田和儀氏(35cm反射、PICONA画像)
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1月には、BEは周囲を暗い物質で囲まれて相変わらず明るく大きな白斑として見えていましたが、FAはやや小さくなり輝度も落ちてしまった(特に青味が減少した)ために条件が悪いと見えない状況もありました。1月初めにはFAも大赤斑を通過し終えて、再び2つの白斑の距離は縮まってきました。1月8日には16度離れていましたが、1月29日には13度まで接近しています。これからBEとFAはますます接近を続けると予想され、2つの白斑のマージ(合体)が見られそうです。1998年3月に3個の永続白斑のうちBCとDEがマージしてBEが出現しましたが、それ以来の大きな現象です。2つの白斑の間に再び反時計回りの渦ができてマージを遅らせるのか、このまま急速にマージしてしまうのか、興味の尽きないところです。
もう一つの注目する現象はEZs(赤道帯南組織)に出現した大白斑です。2月号に報告があるように11月に顕著なEZs白斑が見つかりました。SEBn(南赤道縞北組織)からEZsに流れ込む様子が図2の11月9日の画像に捉えられています。この白斑は前後を暗斑ではさまれた様子が見られ、長さは約20度あります。この白斑は第T系に対して+25.9度/月で前進しており、12月初めと1月末に大赤斑の北側を通過しました。8週間毎に大赤斑と会合することになり、過去の観測を調べてみるとそれ以前の会合の10月上旬から発生していたようです。EZsの白斑はSEB Disturbance(南赤道縞撹乱)の活動として見られることがありますが、今回と同様な現象は1879-1885年(6年間)と1976-1989年(13年間)に観測されています。過去には、EZs白斑の右上のSEBnに白いriftが同時に見られたり、大赤斑を追い越す際に明るさが変わったりする現象が観測されています。
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図2 EZsに出現した大白斑の変化 |
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池村俊彦氏(31cm反射、PICONA画像)
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