天文ガイド 惑星の近況 2000年5月号 (No.2)
伊賀祐一
2月は、夕方の西空に木星と土星が並び、低空には視直径4.5秒の火星が見られました。木星と土星はそれぞれ5月8日、11日に合を迎えます。金星は朝方の東空低くに見られ、6月11日に外合を迎えます。
木星

2月の木星では、接近しつつあるSTB(南温帯縞)の2個の白斑BEとFAの動向が注目されました。1月末に2つの白斑の中心の経度差は13度でしたが、2月末には10度まで接近しています。冬場で観測数が少なく、2月13日に池村俊彦氏・伊藤紀幸氏(図2-C)の11度、2月19日にMaurizio DiSciullo氏(米国)の11.1度、2月25日にDamian Peach氏(英国)の11度、2月27日に池村俊彦氏の10度が得られました。

今シーズンに観測された白斑BEとFAの距離の変化を図1にまとめました。2つの白斑は1999年8月末まで順調に接近し13度まで距離が縮まりましたが、BEが大赤斑の後方20度に接近した頃からBEの前進速度が加速しました。そのために2つの白斑の距離は15-16度まで広がってしまいました。その後、BEが11月10日頃に、FAが12月10日頃に大赤斑の南を通過し、大赤斑の影響を受けなくなった2000年1月初めから再び接近を始めました。観測数が少なくなりましたが、2月も2つの白斑の接近の様子は変化がないようです。

図1 BEとFAの経度差

13度まで接近したBEとFAは、大赤斑通過時に16度まで広がった後に、再び急速に接近しています。

1998年3月にBCとDEがマージ(合体)しましたが、その時の経度差の変化も今回と全く同様でした。一度12度まで接近した2つの白斑は、大赤斑の南を通過する際に17度まで広がりました。大赤斑通過後に再び接近を始め、最後にはBEとして一つの白斑にマージしました。今回の白斑の経度方向の長さはBEが10度、FAが6度ですから、中心の経度差が8度まで接近すると一つの渦にマージする可能性が高いと考えられます。さて、そのマージの時期ですが、早ければ3月、遅くとも6月までには起こりそうだと予想されています。

その他の木星面では、図2のA,Bに示すEZs(赤道帯南組織)の白斑が顕著な姿を見せています。1999年10月に出現した白斑は、12月初めと2000年1月末に大赤斑の北を追い越しましたが、その際に3個の白斑(a,b,c)に分かれているようで、前後に暗部を伴っています。また、図2-Dに示すように、第U系160度付近から後方ではSEBs(南赤道縞南組織)の暗斑群が相変わらず連なっています。

図2 2000年2月の木星面

A:池村俊彦氏(31cmNECピコナ) B:奥田耕司氏(25cmBITRAN BT01)
C:伊藤紀幸氏(60cm SONYビデオDCR-PC100) D:前田和儀氏(35cmNECピコナ)

第24回 木星会議(名古屋)

2月26/27日にサザンクロス天文同好会の主催で開催され、全国から43名の参加がありました。今シーズンのまとめと以下の研究発表が行われました。

永続白斑の合体について田部一志
BEとFAの合体間近か伊賀祐一
1990年代におけるNEB北縁のバージの起源堀川邦昭
フォトショップ、ステライメージでの画像処理の紹介新川勝仁
電波による木星大気の観測長谷川均
木星の斑点と帯状流測定竹内覚
デジタルビデオ画像の画像処理唐沢英行
ビデオ画像の紹介西谷輝昭
1999年の土星南高緯度の赤み報告池村俊彦

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