天文ガイド 惑星の近況 2000年9月号 (No.6)
伊賀祐一
6月になって、ようやく惑星の観測を報告することができます。東空に木星と土星が並んで昇ってきました。
木星
今年の木星は、かなり北寄りに昇ってきたのに驚きました(メンバーの中には隣の屋根がじゃまになって架台をシフトしたとか、シーズン初めのトラブルですね)。夏至に向かって日の出が次第に早くなるので、低空の木星を見つけるのに苦労するのですが、今年は木星の緯度が高いので、昇ってからどんどん高度が上がってくれます。透明度の良かった6月4日UT(5日JST朝)に、合から28日後の木星の初観測となりました。とはいえ、楕円形の木星に、SEBとNEBの2本のベルトが見える程度でした(図1はシーズン初期の観測)。6月19日以降には細部までとらえた観測が得られるようになりましたが、今度は梅雨のおかげで観測数はあまり増えませんでした。
図1 シーズン初期の木星

(左)忍穂井幸夫氏(21cm反射、NECピコナ) (右)伊賀祐一(28cmSC、NECピコナ)

●STB Oval 'BA'

3月21日頃にBEとFAが合体してできた新しいSTB(南温帯縞)の白斑'BA'の消息が、シーズン初めの最大のテーマでした。予想された経度は第2系で340°付近でしたが、明確な白斑は観測できていません(図2)。まだ周辺部でしか見る機会がなく、これからシーイングや高度などの条件が良くなると、BAの姿をとらえることができるかもしれません。1998年5月にBCとDEが合体してできたBEも、直後は輝度も低く、また周辺を暗部に囲まれていない状態で、白斑として確認するのに時間がかかりました。BAについても同じことが言えるかもしれません。 STBは、このBAの予想経度から後方の45°の長さだけ濃く見えていて、この見え方は昨シーズンと同じです。他の経度のSTBは淡く、ほとんど見えません、第2系で220°付近に30°ほどの濃化部が見えていますが(図3)、これは1998年に顕著だったSTBsの暗斑(#2)のなごりで、やはりこの濃化部も緯度はSTBsになります。
図2 2000年6月19日の木星

右端から大赤斑が見えてきた。撮影/池村俊彦氏(31cm反射、NECピコナ)

●GRSとSEB

6月19日UTにGRS(大赤斑)を観測することができました(図2)。これまでと同様に、南半分がオレンジ色の楕円形の姿がとらえられました。経度は第2系で77°で、昨シーズンからの後退傾向が続いています。SEB(南赤道縞)は、これまで赤味の強い太いベルトでしたが、少し変化があるようです。まだ全周に渡って観測できていませんが、SEBsは濃く見えていますが、SEBnは経度によって淡くなっている個所があるようです。大赤斑後方のSEBの活動は残念ながら未確認でした。

●EZsのGWS

6月30日UTの嶋田氏の観測スケッチ(図3)で、EZs(赤道帯南組織)のGWS(大白斑)が観測されました(第1系で165°付近)。前後を暗斑に囲まれた形で、輝度の高い大きな白斑です。この白斑は1999年10月頃に発生したもので、第1系よりは遅い自転周期ですが、第2系に対しては-215°/月で前進しています。SEBnからこのGWSに向けてRift状の白雲の流入も見えているようで、1976-1989年に見られたGWSの活動に相当する規模となりました。このGWSは50日毎に大赤斑と会合し、7月20日頃には大赤斑の北側を追い越していきますので、何らかの変化が見られそうです。EZsには、GWSの他にも白斑がいくつか見られています。
図3 2000年6月30日の木星

EZsの中央にGWSが見える。スケッチ/嶋田俊之氏(15cmマクストフニュートン)

土星
今シーズンの土星は、自転軸が南に大きく傾き、本体が環の短径の中に見えています。木星の右上5°離れた位置にあり、2つの惑星はしばらく同時に観測することができます。

■水星

図4は6月9日UTの東方最大離角を迎える直前の6月7日夕方の水星の画像です。低空でしか見えない惑星ですが、池村氏はデジカメでこんなにもシャープな三日月型の水星をとらえることができました。視直径は8秒ほどありますが、連続観測が難しいことと、低空のために模様までは確認できませんでした。
図4 2000年6月7日の水星

東方最大離角直前の水星。撮影/池村俊彦氏(31cm反射、NECピコナ)
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