5月も惑星の観測はお休みでした。来月号からは木星や土星の初観測の情報をお伝えできるでしょう。
合をはさんで3〜4ヶ月の観測の空白があると、木星の模様が一変していることがあります。シーズン初めは条件も悪く、手探り状態で模様を追いかけていきます。このベルトは昨シーズンよりも濃くなっているとか、新しい暗斑が出現しているとか、一つずつ確認していきます。それでも、やはりGRS(大赤斑)を見ることができると、今年も健在だと安心します。
ひょっとして、合の間に特異な現象、SEB Disturbance(南赤道縞撹乱)やSTrZ Disturbance(南熱帯撹乱)などが発生していないかチェックします。このような現象は早期の追跡が必要なので、異常な現象が見られたらすぐに報告をしてください。今シーズンは、合体して一つの白斑になったSTB(南温帯縞)の白斑'BA'がどのように見えるのかを注意しましょう。BAの予想経度は、7月は第II系で330度付近、8月は320度付近です。
■ドリフトチャート
木星観測では、スケッチや画像から模様の形態学的な様子がわかります。アマチュアができる観測にはそれ以外に、模様のCMT(中央子午線通過)観測があります。
観測中に注目する模様が中央に近づいてきたら、しばらく中央子午線を通過するまで追いかけて、模様が中央子午線を通過する時刻を記録し、経度を計算します。慣れてくれば、1〜2度程度の精度で経度を求めることができるようになります。眼視観測で簡単にできることで、観測をより役立つようにするためには大切なことなので、ぜひ挑戦してください。最近ではCCD画像からより精度の高い経度が求められるようになっていますが、できるだけ数多くのCMT観測が集まることで、価値のある解析ができます。
このようにして得られた経度を、模様別に時間軸にプロットしたものをドリフトチャートと呼んでいます。長い期間の観測をプロットすると、模様は直線状に並び、最小2乗法によって傾きを求めることができます。この傾きをドリフトと呼び、模様が属する第I系あるいは第II系に対してどのぐらい速くあるいは遅く動いているかを示しています。したがって、このドリフト量から模様が位置している気流の自転周期を知ることができます。
昨シーズンのCMT観測や画像から計測した経度をいくつかの模様についてまとめました。
図1は、STBのGRSと、合体したSTBの白斑BE/FA、それとSTBsに見られた3個の暗斑のドリフトを示します。GRSは62度から76度までゆっくりと後退し、9h55m42.2sの自転周期でした。BE/FAは次第に接近して3月21日頃に合体しましたが、平均として9h55m23.0sの自転周期でした。
図2は、EZnに見られたFestoon(フェストーン)のドリフトです。これまで長期に渡って追跡できなかったFestoonですが、昨シーズンは11本が継続して観測され、平均9h50m34.9sの自転周期を持っていることが、ドリフトチャートを描いて始めて分りました。
図3は、NTBs(北温帯縞南組織)に見られたNTC-Cと呼ぶジェット気流に乗った暗斑のドリフトです。このNTC-Cは木星面上で最も速い気流の一つで、第I系に対しても-65度/月で高速に前進していて、このようなプロットがないと同定も難しいものです。
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