天文ガイド 惑星の近況 2001年2月号 (No.11)
伊賀祐一
11月は土星が19日に、木星が28日に衝を迎え、長時間の観測ができるようになりました。木星は21日間(のべ87人、232観測)、土星は14日間(のべ22人、35観測)、火星が2日間(のべ3人、5観測)、そして宵の明星の金星が1日の観測報告が寄せられました。
木星:南熱帯に暗斑が出現
STrZ(南熱帯)のGRS(大赤斑)の前方に暗斑が出現し、大きさがGRSの1/4ほどの大きな渦であることがわかりました。図1に示すように、10月9日UTのDamian Peach氏(イギリス)、10月10日UTの中西英和氏(愛知県)の画像では、それまでに見えていたSTrZのストリークの一部のII=31.6度に顕著な濃化部が見られます。10月20日UTの前田和儀氏(京都)の画像では、次第に暗斑らしくなってきました。11月に入ると6日UTにII=36.4度(伊藤、永長)、23日UTに41.6度(池村、永長、前田)に観測され、+9度/月で後退しています。土星探査機カッシーニによる観測では、10月1日UTには暗斑は形成されておらず、10月22日UTに渦としての暗斑が見られます。カッシーニの最新の12月1日UTの画像(図2)では、顕著な渦が大赤斑に接近しつつある様子がとらえられています。
図1 STrZ暗斑と大赤斑への接近


このままのドリフトを続けると、暗斑は2001年2月上旬にはGRS前端に達することが予想されます。過去には、1994年頃に形成されたSTrZの白斑が、1997年5月にGRSと会合した現象が観測されています。この時は約13日かけて、白斑がGRSを反時計方向にぐるりを回り込み、一度GRS後方のSTrZに出現した後に、GRSの気流に飲み込まれました。今回も、STrZの巨大な渦がGRSの気流に飲み込まれるだろうと考えられますが、1月〜2月にかけての観測によってその詳細を追跡できればと思います。
図2 カッシーニ探査機によるSTrZ暗斑

2000年12月1日UTに撮影されたSTrZの巨大な渦。(画像提供:NASA)

●EZsの大白斑

EZs(赤道帯南組織)のGWS(大白斑)とその前後の暗部は、10月17-26日にかけて大きく成長したことをお伝えしましたが、予想通りに11月6日UT頃から第8回目のGRSの北方通過が観測されました。SEBn(南赤道縞北組織)を横切るGWSへの白いストリークとその前後の暗部が形成されたまま、11月11日UTにはGWS本体がGRSを通過しました。ただし、今回の通過では目立った変化は見られず、次第にGWSの輝度も下がってきています。 しかしながら、このEZsとSEBnの一体となった活動は撹乱(disturbance)とも言えるもので、NASAが12月29/30日に実施するガリレオ探査機とカッシーニ探査機の共同観測のテーマに選ばれました。ちょうど第9回目のGRS北方通過が間近で、地上からのアマチュアの観測(特にメタンバンド)が呼びかけられています。

●大赤斑と"BA"

GRSはII=74度付近にあり、中心部のコアが濃いオレンジ色に見えます。GRSを取り巻く暗いエッジも淡くなり、またGRSから前方に伸びるSTrZ bandは見えなくなりました。 STB(南温帯縞)にある白斑"BA"は、11月3日UTにII=281.0度、11月24日UTに271.3度に観測され、-12.3度/月で前進しています。気流も悪くなったためか、あまり輝度は感じられません。17度後方のSTBsの小白斑も健在です。BAから前方にSTBsとSTBnに伸びる細いベルトが見られます。 SEB(南赤道縞)は、濃い暗斑群が連なるSEBsと、経度によって太さの異なるSEBnとの二重構造が顕著になりました。SEBの淡化傾向は小休止といった感じです。

●北赤道縞の活動

NEB(北赤道縞)は、ほぼ全周に渡って幅が北に広がったと言えるでしょう。拡幅した領域にはNTrZ(北熱帯)にベルトがあり、一部の経度のII=40〜190度はやや明るいまま残っています。NEBの活動は拡幅段階から、バルジ/ノッチの発達段階に移ってきました。濃い赤茶色のバルジ(barge)がII=40,147,196,215,267,307,320度に、NTrZの白斑(次の段階でノッチになる)がII=80,205,312度で目立つようになりました。205度と312度のNTrZ白斑の前後にはバルジがあり、1997年に見られたバルジ−ノッチ−バルジの3連構造に発達しそうです。

図3 2000年11月24日UTの木星展開図
撮影/ 伊藤紀幸氏(60cmカセグレイン)、永長英夫氏(25cmニュートン)(拡大)
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