9月に引き続いて、EZs(赤道帯南組織)のGWS(大白斑)の活動に注目が集まりました。メールで送られてきたT.Gross氏(米国)の10月23日UTの画像で、GWSの前後の40°ほどの経度のEZsが濃化していることに気がつきました。Internetで公開されている画像を調べてみたところ、A.Cidadao氏(ポルトガル)の17日・22日UT、メンバーの伊藤紀幸氏(新潟県)の21日UTの画像に、濃化しつつあるEZsの様子を見ることができました(図1)。筆者の26日UTの画像でも、濃化している様子をとらえています。17日UTの画像を詳しく見ると、SEBn(南赤道縞北組織)から左斜めに白いRiftがGWSに流れ込んでいる様子が見えます。このRiftのためにGWS周辺の活動が活発になったようです。9月には、GWS発生後第7回目のGRS(大赤斑)の北方通過での変化でしたが、まだまだGWSの活動は目が離せないようです。次回のGRS通過は11月5日頃の予想です。
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図1 EZsの大白斑付近の濃化現象 |
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●"BA"とSTB以南
STB(南温帯縞)の白斑"BA"は、10月5日UTに292.3°、27日UTに282.9°にあり、ゆっくりと前進しています。周囲を暗く囲まれていますので、比較的見えやすい状態でした。17°後方のSTBsの小白斑も健在でした。なお、高解像度の画像では、"BA"の中央を横切る模様が見られました。
STBは"BA"の後方30°ほどは濃く見えていますが、それ以外の経度はSTBnが淡く見えています。II=165°付近に長さ25°ほどのSTBsの暗部、205°にSTZ(南温帯)の暗斑、350°付近に3個のSTBsの暗斑が見られます。SSTB(南南温帯縞)には、75°付近と180°付近にそれぞれ3個の小白斑があります。
●大赤斑とSEB
GRSはII=75°にあり、ややオレンジ色が濃くなっています。GRSをぐるりと回り込むSEBsの暗斑が目立たなくなり、GRSの前方に伸びるSTrZ(南熱帯)のバンドはずいぶんと淡くなりました。大赤斑後方のSEBにも目立った白斑は見られず、SEBは後退する暗斑群が見られるSEBsとSEBnが2本に分離して、中央のSEBZは明るくなっています。全体的にSEBは淡化傾向にありますが、II=260°〜60°までSEBcに細いベルトが見られるようになってきました。
●NEB以北の活動
NEB(北赤道縞)は、次第に北に幅を広げていますが、9月に見られた180°〜50°の拡幅領域は変わりませんでした。ただし、50°〜180°の領域にも、NTrZ(北熱帯)にベルトができており、さらに拡幅は進行するものと思われます。NEBnには顕著な赤茶色の暗斑(barge)が、II=155°、200°、270°、310°にあり、またNEB内のRiftの活動も盛んです。
NNTB(北北温帯縞)のII=0°に見られていた赤茶色のバー(Bar)は、9月24日を最後に急激に見えなくなってしまいました。
図2 2000年10月19/20/21日の木星展開図 撮影/伊藤紀幸氏(60cm反射)、永長英夫(25cm反射)、前田和儀氏(35cm反射)(拡大) |
●カッシーニによる木星画像
土星探査機カッシーニが、木星の重力を利用してのフライバイで10月に木星に接近しました。カッシーニによる木星の観測画像が、以下のURLで公開されています。
- http://ciclops.lpl.arizona.edu/
■土星と火星
土星は環の傾きがずいぶんと開いてきました。気流が良いと、カッシーニの空隙を通して土星本体が透けて見えています(図3)。10月中旬に、EZnに白斑が出現したとの情報がありましたが、確認するにはいたりませんでした。全体的には大きな変化はないようです。火星は、池村俊彦氏(名古屋市)から10月27日の観測が報告されましたが、視直径が4.05"とまだ小さく、模様の検出にはしばらくかかりそうです。
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図3 2000年10月19日の土星 |
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撮影/前田和儀氏(35cm反射、BITRAN BJ30C)
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