1999年10月に発生したEZs(赤道帯南組織)のGWS(大白斑)は、ほぼ50日周期でGRS(大赤斑)の北側を追い越しています。このGWSは、7月23日UTにGRSを通過した後、9月10日頃に第7回目の通過が予想されていました。ただ、今回の通過前のGWSはあまり明るい白斑でなかったことから、大きな変化が起こることは期待していませんでした。
9月5日および7日UTの筆者の観測で、GRS直後まで迫ったGWSとその前方の暗部の活動が急に活発になっていることに気づき、メンバーに追跡観測をお願いしました。その結果、GWSから前方30度にある先行する暗部が、9月6日〜9日UTにかけてGRSの北側を通過した際に、SEBn(南赤道縞北組織)からRift状に白雲がEZsに流入し、経度30度ほどの領域が白斑と暗斑で入り乱れていることが分りました(図A)。その後の9月14日〜16日UTにかけて、GWS本体がGRSの北側を通過していきましたが、こちらはさほど大きな変化は見られません。また、EZsは他の経度でも丸い暗斑が一定間隔で並んでいる姿が見られました(図B)。
これまでの観測から、GWSとその先行暗斑は、GRSの後方50度以内の経度に達すると活動が活発になります。この領域はGRS後方のSEBの定常的な活動領域と一致しており、SEBの気流がEZsへ侵入することによって、EZsの活動が活性化されていると考えられます。GWSの次回の通過は50日後の10月末と予想されます。
A:9月 9日 前田和儀氏(35cm反射 NECピコナ) | B:9月17日 前田和儀氏(35cm反射 NECピコナ) | C:9月17日 永長英夫氏(25cm反射 NECピコナ) | D:9月21日 阿久津富夫氏(32cm反射 Teleris2) |
●'BA'とSTB〜SEBの活動
STB(南温帯縞)の白斑'BA'は、9月1日UTにII=305.8°、9月29日UTにはII=294.7°に位置し、-12.3°/月のドリフトを示しています。大きさは9°前後で、明るさも変化は見られませんでした。'BA'から前方に短いSTBの濃化部が形成され、比較的見やすくなりました(図C)。
STBsの小さな暗斑(#1)がGRSに近づいていましたが、9月23日UTに118.1°まで接近した後は検出できなくなりました。その後方の180°付近には約30°の長さの濃化部(#2)が健在です。'BA'直後には本来のSTBが長さ35°ほど見られます。また、0°付近には3個のSTBs暗斑があり、GRSからの距離が離れて緯度が北に寄りに、経度方向に伸びたために前方の2個がつながってしまいました。8月上旬から観測された220°のSTZの小暗斑も、ゆっくりと前進しています。
GRSはII=75°にあり、南側を取り囲むアーチ構造が淡くなり、オレンジ色のGRSコアがはっきりしてきました。GRSから前方に伸びたSTrZ(南熱帯)のbandは、'BA'の経度まで続いていますが、後方からの供給が弱まり、活動はおさまりつつあります。
SEB(南赤道縞)は全体として淡化傾向にありますが、SEBsはまだ濃く、II=140〜260°には多くの暗斑群が107°/月のドリフトで高速に後退しています。SEBの中央部は明るくなり、8月から観測されている赤い2個の斑点は、-85.4°/月と-70.8°/月で前進しています。そして、前方の斑点は9月7日UTにGRS後方の120°に達した時点で停滞してしまいました。後方の斑点も9月25日UTに120°に到達しています。SEBnはまだベルトとして濃度もありますが、280°からGRSまでの経度では緯度が南にシフトしています。
●幅の広がったNEB
NEB(北赤道縞)は全体的に幅が広がりつつあります。8月には280〜50°であった拡幅領域が、180-50°とさらに前方に広がっています。今シーズン初めから見られるNNTB(北北温帯縞)の赤味の強いBARは、II=0°に長さ10°ほどで観測されましたが、少し淡くなってきたようです。
■土星と火星
土星はおうし座に位置し、木星と並んで観測の好機を迎えています。環の広がった美しい姿が見られますが、赤道付近の白斑の出現などの現象は観測されていません(図D)。土星のSTrZ(南熱帯)が昨シーズンに比べるとやや明るくなっているようです。火星はしし座に位置し、日の出時に昇ってくるようになりました。9月2日UTに池村俊彦氏(名古屋市)、3日UTに新川勝仁氏(堺市)が撮像を試みていますが、まだ視直径が3.7秒と小さく、模様までは検出できませんでした。視直径が5秒を超えるのは年末ですが、来年6月の準接近(視直径20秒)が楽しみです。
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