天文ガイド 惑星の近況 2001年4月号 (No.13)
伊賀祐一
このページの連載を始めてちょうど1年を迎えました。いつも観測画像を送ってくれる多くのメンバーに感謝したいと思います。さて、2001年1月の惑星観測は、冬の季節風の影響で良像は得られにくくなりましたが、熱心な観測が続いています。1月の観測数は、木星が20日間(のべ33人、87観測)、火星が8日間(のべ9人、14観測)、金星が1日間(のべ1人、1観測)で、残念ながら土星の報告はありませんでした。
木星の南熱帯の暗斑
2000年10月中旬に、GRS(大赤斑)前方のSTrZ(南熱帯)のII=31.6°に発生した暗斑(巨大な渦、図1右)は、11月中旬にII=40°まで後退しましたが、その後ドリフトが遅くなってしまいました。STrZ暗斑はGRS直前にいて、1月1日(UT)の44.1°から1月30日(UT)には47.7°まで、+3.27°/月のドリフトで後退しています。このままのドリフトを保つと、GRSの前端に達するのは3ヶ月後の4月末頃と予想されますが、GRSに近づくと急激に加速する可能性もありますので、注意して観測してください(合に近くなって観測できないかもしれません)。

SEB(南赤道縞)は、中央部の明るい領域がGRS後方からII=180°までに縮小しつつあります。SEBの淡化はもっと先になりそうです。

図1 2001年1月の木星

左:2001年1月17日UT 伊藤紀幸氏(60cmカセグレイン、SONY DCR-TRV20)
右:2001年1月30日UT 永長英夫氏(25cmニュートン、NEC PICONA)

●"BA"とSSTBの白斑の接近

STB(南温帯縞)の白斑"BA"は、1月2日にII=256.5°、1月29日にII=242.8°まで、-12.31°/月で前進しています。図1(左)に示すように気流の悪いこともありますが、"BA"はまったく明るさがなくなっています。ただ、阿久津富夫氏(栃木県)からの画像では、Iバンドやメタンバンドではまだまだ明るい白斑としてとらえられています。

SSTB(南南温帯縞)には5個の小白斑が見られますが、GRS後方に並んでいる3個の小白斑(図1右のA/B/C)に変化が見られました。これらの3個の小白斑は次第に距離を縮めていましたが、1月中旬からB-C間の距離が急激に狭まっています。昨年11月24日に16°、1月6日に14°だった距離が、1月30日には10°まで接近しています。A-C間の距離には大きな減少は見られず、これは小白斑Bだけが急激に前進速度が遅くなったようです。このままの傾向が続くと、永続白斑の時と同様なマージ現象が見られるかもしれません。

●NEB以北の活動

幅の広くなったNEB(北赤道縞)の活動は少し穏やかになってきました。2000年12月には、NEBn(北赤道縞北組織)に8個のbarge(バルジ、赤茶色の斑点)が見られ、またNTrZ(北熱帯)には3個のnotch(ノッチ、入り江状の白斑)が見られていましたが、1月に入ると4個のbarge(II=30°,143°,186°,305°)となり、またnotchはII=196°の1個しか見られなくなりました。NEB内には相変わらず斜めに横切る白いrift(リフト)が見られます。

NNTB(北北温帯縞)には、11月末から見られるようになった赤茶色の濃化部が継続しています。この濃化部はII=350〜30°の長さを保っていましたが、1月中旬以降に前端部が急速に前方に伸び、II=335〜30°の長さに伸びてきています。


図2 2001年1月29/30日の木星展開図
撮影/阿久津富夫氏(栃木県、32cmニュートン)、伊藤紀幸氏(新潟県、60cmカセグレイン)
永長英夫氏(兵庫県、25cmニュートン)(拡大)
火星
6月22日に最接近(視直径20.8")を迎える火星は、1月末には視直径6"を超えました。図3の1月30日の画像では、中央左上に大シルチスが見られ、その南のヘラスに雲がかかっているのが見られます。南極冠の形成は4月に入ってからになります。現在は火星大気中の水蒸気量が多い時期にあたりますので、雲の発生に注意して観測してください。特に青色光で顕著に写ります。最接近の頃の中央緯度はほぼ0°で、両極地方の観測がしやすいでしょう。
図3 2001年1月30日の火星

撮影/池村俊彦氏(名古屋市、31cmニュートン、NEC PICONA)
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