天文ガイド 惑星の近況 2001年5月号 (No.14)
伊賀祐一
冬の季節風に悩まされた2月でしたが、意外にもシーイングに恵まれる日もあります。さて、2月の惑星観測は、木星が20日間(のべ47人、94観測)、土星が4日間(のべ4人、5観測)、火星が8日間(のべ14人、54観測)、そして金星が3日間(のべ4人、4観測)でした。
木星の南熱帯の暗斑が大赤斑に急接近
GRS(大赤斑)前方に迫っていたSTrZ(南熱帯)の暗斑は、2000年10月中旬の形成直後は急速に後退し、その後11月中旬からは+3.53°/月のドリフトでゆっくりと後退していました。先月号で4月末頃にGRS前端に達すると予想していましたが、2月4日UTにII=46.9°に達した後に、後退速度が+12.7°/月と大きくなり、2月26日UTにII=58.1°と急速にGRSに接近しています(写真1左)。暗斑は、2月末には横に伸びた形となって、GRSから前方に伸び始めたSTrZ Dark Streakと一体となっています。3月中旬にはGRS前端に達するのではないかと思われますが、この暗斑はGRSの周りの気流に乗って、見事にGRSをぐるりと回るでしょうか。
写真1 2001年2月の木星

左:2001年2月14日UT Damian Peach氏(30cmSCT、SBIG ST-5C)
右:2001年2月22日UT 伊藤紀幸氏(60cmカセグレイン、SONY DCR-TRV20)

●SSTBの小白斑も接近中

SSTB(南南温帯縞)に見られる5個の小白斑のうち、GRSの南方を通過中の2個の白斑(写真1左のB,C)の距離が2月末に9°まで非常に接近しています。AとBの距離は24°で大きな変化はなく、白斑Bだけが1月中旬から前進速度が遅くなったために急速に白斑Cに接近している状況です。白斑自身が小さいために5°程度まで接近する可能性がありますが、さらに接近を続けるようですと、1998年3月と2000年3月に観測された永続白斑同士の合体と同じ現象が見られることでしょう。なお、2000年9月にも4個のSSTB小白斑が、GRS通過後に3個になっている現象が観測されています。

STB(南温帯縞)の白斑'BA'は、明るさはないものの、やや大きめの白斑として観測されました(写真1右)。2月26日UTには、II=234.4°に位置し、-12.3°/月で前進しています。

●SEBとEZsの活動

SEB(南赤道縞)は淡化することもなく全周に渡ってベルトが見られますが、1月23日UTにII=150°のSEB中央に明るい1個の白斑が出現しました(写真2)。2月5日UTには2個の白斑となり、ゆっくりと前進しました。白斑の間に暗柱が出現したり、前端部にも暗柱ができたりしましたが、大きな活動にはつながらなかったようです。また、EZs(赤道帯南組織)の大白斑と前後の暗部との複合体は活発ではないものの、3月3日頃にGRSの北方を通過する予定です(発生以降10回目)。

●NEBとNNTBの活動

NEB(北赤道縞)は全周に渡って北側への拡幅を終了していますが、ベルトの濃度はやや落ちて活動はやや穏やかになってきました。NEBの中央部を走る細長い白いRiftはまだ見られます。1月には4個あったNEBnのバルジ(barge)はII=180°の1個だけとなり、II=190°のNTrZの白いノッチ(notch)と仲良く並んでいます(写真1右)。NNTB(北北温帯縞)の赤茶色のBARは、II=350〜30°の部分と、その前端部から分離した15°ほどの長さの領域に分離しました。

写真2 2001年2月13/14/15日の木星展開図
撮影/池村俊彦氏(名古屋市、31cmニュートン)、永長英夫氏(兵庫県、25cmニュートン)
Damian Peach氏(英国、30cmSCT)(拡大)
火星 (安達誠)
2月は、視直径が6秒から7秒になり、主だった模様もはっきりととらえられるようになってきました。なお、北極冠はほとんどとらえられず、ベールの覆った状況であり、また南極地域もベールをかぶった状態になりました。

今月で特筆することは、2月22日UTにとらえられた雲の帯でしょう。赤道付近に東西に明るい雲の帯が観測されました(写真3)。火星は水蒸気の多い季節ですから珍しいものではありませんが、ぱっと見ると、何だか木星を見ているような錯覚を覚える位でした。この現象は、画像でも肉眼でもはっきりととらえられました。これからは、砂嵐などの発生に注意してください。

写真3 2001年2月22日の火星

撮影/池村俊彦氏(名古屋市、31cmニュートン)、新川勝仁氏(堺市、28cm SCT)
安達誠氏(大津氏、31cmニュートン)

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