先月号でお伝えしたように、GRS(大赤斑)に急接近していたSTrZ(南熱帯)の暗斑が、3月9日UTにいよいよGRS前端に達し、その後GRSの周りの巨大な渦に巻き込まれたようです。
この暗斑は2月4日UTにII=46.9°に達した後、新たなSTrZのDark Streakと一体となり、後退速度が急に速くなりGRSに接近していました。3月9日UTの永長英夫氏の画像でII=59.6°に達し、同日の堀川邦昭氏のスケッチではGRS直前のSEBs(南赤道縞南組織)のこぶのように観測されました。その後の3月12日UTの永長氏・伊藤紀幸氏の画像には暗斑は見られず、GRSの周りの左回りの気流に飲み込まれたようです。2000年10月中旬に形成されたSTrZの暗斑は、図2に示すような経度変化を示し、そのドリフトが2ヶ所の矢印の時期に減速したり加速したりしました。
カッシーニ探査機による2000年10月31日〜11月9日UTの動画に、SEBsの暗斑がまさにGRSの気流に飲み込まれる様子が観測されていますが、今回の暗斑も同様な道筋をたどったものと思われます。
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図2 STrZの暗斑のドリフト |
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2000年10月中旬に形成された暗斑は、11月中旬に減速し、2001年2月初めに加速。3月10日頃にGRSに巻き込まれた。
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●SSTBの小白斑は無事に通過
SSTB(南南温帯縞)に見られる3個の小白斑が2月下旬にGRSの南方を通過しましたが、そのうちの2個の小白斑の距離が9°まで接近して注目されていました。STB(南温帯縞)にある3個の永続白斑が、接近することによって次々とマージし、最終的に'BA'と呼ぶ1個の白斑になっています。SSTBの小白斑にもマージが起こるかもしれないと期待していましたが、3月12日UT(伊藤氏)、16日UT(池村氏)、19日UT(伊藤氏)、24日UT(伊藤氏)の画像で、無事にGRSの南を通過し終えた様子がとらえられました。気流が悪く詳しいことは分りませんが、3個の小白斑は24日UTにはII=31,48,63°に位置しています。接近していた小白斑の距離が15°まで広がっていて、しばらくはこの状態が続きそうです。
●その他の木星面
STBの白斑'BA'は、3月11日UTにII=232.4°に観測されました。SEBは比較的穏やかで、SEB中央の明部も目立たなくなりました。NEB(北赤道縞)も幅が広いままで、bargeがII=20,170,255°に、またNTrZ(北熱帯)のII=180°にnotchが見られます。
写真1 2001年3月11/12/13日の木星展開図 撮影/伊藤紀幸氏(新潟県、60cmカセグレイン)、永長英夫氏(兵庫県、25cmニュートン)(拡大) |
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