1月1日に衝を迎えた木星面で注目されている現象は、STB(南温帯)の白斑'BA'がGRS(大赤斑)の南を通過していることです。BAは1月5日UTにII=100.3°に位置し、1月30日UTにはII=92.4°まで前進しました。GRSはII=79〜80°に位置していますので、ほぼGRSの南側を通過している状況です。過去の観測では、STB白斑がGRSを通過する際には加速して、通過後に減速する現象が見られています。また、STB白斑同士の合体(マージ)もGRS通過直後に発生しました。
写真2に示すように、BAはGRSの右上を通過中ですが、1月の観測からはBAの加速現象は観測されていません。今のところBA自体には変化が見られていませんが、細く淡いSTBがGRS前方に伸びつつあります。これはSTB白斑がGRSを通過する際にはしばしば見られる現象です。とはいえ、3月上旬にBAがGRSを通過し終えるまでは眼が離せない状況です。
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写真2 STrZの活動とBAのGRS通過 |
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大赤斑からdark streakが前方に伸び、ほぼ90°の長さまで成長した。BAが大赤斑を通過中である。 撮影/池村俊彦氏、永長英夫氏、風本 明氏
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●南熱帯のstreakの退化
2001年11月7日UTにGRSから前方のSTrZ(南熱帯)に伸び始めたdark streakは、1.5°/日の速度で前方に拡大し、12月末にはII=340〜70°までの長さに成長しました(写真2)。ところが、1月8日UTにこのdark streakの後端部がGRSから離れていることに気がつきました。このstreakは、SEBs(南赤道縞南組織)を後退してきた暗い物質がGRSを反時計方向にぐるりと回って、今度は逆方向にSTrZに噴き出しているものです。GRSの南側を取り囲む暗いアーチ構造が淡くなっていることから、streakへの供給がなくなったと考えられます。streakの後端部も同じ速度で前進しており、これまでの観測を裏付けるようにstreakは長さは90〜100°までしか成長できないようです。また、後方からの供給が途絶えたstreakは、全体が急速に淡化しつつあります。
●北赤道縞の活動
NEB(北赤道縞)は、拡幅期から次第に次の活動期に移っています。写真3に2001年10月からの変化を示しますが、幅の広くなったNEBの中央に7個のbargeとその間に6個のnotchがあります。この中央のベルトを境にNEBの南北の活動が分けられています。しかしながら、II=140°付近では南北を横断するような白斑と長さの広がったriftの活動が見られます。さらに、1月19日UTにはII=73.4°に明るい白斑が出現し、新たなriftを形成しました。このようなNEBのrift領域の出現と、II=320〜20°の範囲の北半分の明化(さらに広がっている)によって、NEBは次第に元の幅に戻っていくものと思われます。
写真3 NEBの変化 NEB中央の暗斑がbarge、NEB北縁(下)の白斑がnotch。(拡大) |
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