1月1日に衝を迎えた木星の2001年12月の観測報告ですが、注目される現象がGRS(大赤斑)の周辺に見られました。先月号でお伝えしたように、11月7日UTにGRSの前方に発生したSTrZ(南熱帯)のdark streakは、写真2に示すように急速に前方に伸びています。12月2日UTには長さが50°、12月26日UTには90°に達し、りっぱなSTrZ bandに成長しました。発生以降のドリフトは-41.3°/月ですが、海外からの高解像度の画像を見ると、STrZ bandはさらに前方に細く伸びていて、第II系で240°付近まで達しています。10月に形成されたSTrZの2個の暗斑は、11月20日頃と12月1日頃にSTrZ bandが通り過ぎたことではっきりとしなくなりましたが、12月29日UTにII=30°にドーナツ状の暗斑が確認されています。このSTrZ bandの活動は通常では3ヶ月ほど続き、経度長は100°ほどに成長しますから、1月末には活動が衰えていくものと思われます。
もう一つの現象は、12月7日UTにGRSの後方II=142.6°に発生したSEB(南赤道縞)内の白斑の活動です。その後、12月15日UTにはその前方のII=133.5°にも別な白斑が発生し、GRSに向かって広がっていき、12月末にはII=90〜135°の領域は定常的なGRS後方撹乱となりました。このSEBの白斑の活動領域の後端部は、-30.0°/月のドリフトでゆっくりと前進しています。SEB内に白斑が急速に広がっていく現象としては、1998年に観測されたmid-SEB outbreakが考えられますが、今回の現象はGRSに近いことから異なるものと思われます。
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写真2 STrZ bandとSEBの白斑 |
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大赤斑からdark streakが前方に伸びている。BAは2002年1月下旬に大赤斑を通過する。 撮影/池村俊彦氏、永長英夫氏、風本 明氏
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STBの白斑BAがGRSに接近
STB(南温帯縞)にある白斑BAが、GRSに接近しています(写真2)。BAの経度は12月2日UTにはII=114.4°、12月27日UTにはII=102.7°で、すでにGRSの直後まで接近しています。STBの白斑は、過去の例ではGRSに接近すると前進速度が加速され、GRS通過後には元にもどります。また、1998年3月のBC-DEの合体(BEとなる)や、2000年3月のBE-FAの合体(BAとなる)は、それぞれがGRS通過後に発生しています。最後の一つになったBAが、GRS通過によってどのようになるのか、とても気になります。
写真3 2001年12月22/23日の木星展開図 撮影/永長英夫氏(拡大) |
NEBにも撹乱現象か
NEB(北赤道縞)は現在拡幅期にあり、NTrZ(北熱帯)に広がった幅のあるベルトになっています。NEB南縁に見られるfestoonはあまり目立たず、NEB中央部に赤茶色の暗斑bargeが7個、その間のNEB北縁には7個の白斑が見られます(図3、図4)。11月中旬に2個のbargeが合体しましたが、その後も一つのbargeとして観測されています。bargeの存在している緯度が本来のNEBn(北組織)で、12月には、bargeをつなぐように中央部のベルトが目立ってきました。このベルトの北側のII=320〜0°の領域は淡化しつつあり、今後は北半分の淡化が全周に広がるでしょう。
このNEB内のII=140°付近にはdisturbance(撹乱)を思わせるような、白斑の動きが見られます。この経度のNEBの中央部には、8月からほぼ20日周期で新たな白斑が発生し、それが東西に流されて70°ほどのriftを形成しています。12月16日以降は、ほぼ連続して白斑が発生する活発な領域になっています。
図4 NEBのbargeとnotchのドリフト ●がbarge、〇がnotchを示す。◆はNEBの白斑。(拡大) |
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