STB(南温帯縞)に唯一残っている白斑"BA"が、3月にGRS(大赤斑)の南を通過し終えました(写真1)。2月に"BA"がGRSの真南を通過している際には、特に大きな変化は見られませんでしたので、このままの状態で通過するだろうと予想しました。しかしながら、3月13日UT頃から25日UTまで"BA"が白斑として見えにくくなり、内部に亀裂のような模様まで見えているようで、"BA"がついに消失したのではないかという情報を流しました。その後、26日UT以降に再び"BA"は白斑として観測され、ほっと一安心でした。この頃日本では気流に恵まれず、海外からの観測が届くにつれて、この期間にも"BA"は白斑として観測されていました。特にA.シダダオ氏(ポルトガル)からのメタンバンド画像では、ずっと白斑として存在していたことが分かりました。
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写真1 大赤斑を通過する"BA" |
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"BA"(矢印)の位置を合わせている。 撮影/永長英夫氏(兵庫県)、伊藤紀幸氏(新潟県)
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"BA"がGRSを通過した際に、いくつかの変化が起こりました。(1)3月13日UT頃から"BA"の周囲の暗いエッジが淡くなりました。(2)同時に"BA"が赤味を帯び、輝度が減少して見にくくなりました。(3)1月上旬から"BA"の前進速度が鈍り、2月中旬に再加速し、3月中旬に元の速度に戻っています。(4)"BA"の大きさが、10°から3月7日UTに12°まで大きくなり、GRS通過後の3月下旬に9.6°に戻っています。
●SSTB白斑のマージ
SSTB(南南温帯縞)にある4個の小白斑のうちの2個がマージ(合体)して、新たな1個の白斑になる貴重な現象が観測されました(写真2)。これらの小白斑はちょうど"BA"の南にあり、白斑どうしの距離が縮まっていることが分かっていました。後方の2個の白斑が2月に8°まで接近すると、白斑の間に逆回転の渦ができ、接近をさまたげているかのようでした。
しかしながら、3月14日UTに中間の白斑が消失すると、2個の白斑は急速に接近し、19日UTには接触しました。21/24日UTの画像からは、2個の白斑がお互いの回りを反時計方向に回転しているようにも思われ、25日UT以降になると1個の白斑にマージしました。マージ後の白斑は、2つの中間の経度に位置し、お互いの白斑が引き合うようにマージしています。
白斑どうしのマージは、これまでSTB白斑(BEやBAが生まれた)で観測されていましたが、同じ永続性の渦であるSSTB白斑でも観測されたことによって、メカニズムが解明されそうです。
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写真2 SSTBの白斑のマージ現象 |
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日本では気流が悪く、高分解能の画像は海外の観測を使用した。 撮影/永長英夫氏、A.シダダオ氏(ポルトガル)、T.W.レオング氏(香港)、 E.グラフトン氏(米国)、D.ピーチ氏(英国)、D.パーカー氏(米国)
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●元の幅に戻りつつある北赤道縞
NEB(北赤道縞)は2000年から始まった拡幅によって、北側に太くなったベルトでしたが、1月頃から新しい活動期に入っています。1月4日UTにII=100°に発生したNEB中央の白斑が起点となり、NEB南部にリフトが前方に伸びました。この白斑は+60°/月で前進しながら次々と白斑が発生し、3月末にはII=260°に達しました。また第2の白斑群が1月22日UTにII=115°に発生し、リフトを伴いながら前進しています。3月3日UTには第3の白斑群がII=95°に発生しました。これらの活動によって、3月末にはII=260〜140°までのNEB南部の領域が明るくなっています。
また、NEB北部も明化が進み、II=150〜70°の広い領域でベルトの淡化が見られます。NEB中央部には赤いベルトがあり、所々に赤黒いバージが見られます。NEBは拡幅と縮小をほぼ3年間隔で繰り返していますが、次第に1997年の様子に似てきました。これからはNEB北部の明化がますます進み、NEB本来の幅に戻るでしょう。
写真3 2002年3月8日の木星展開図 撮影/永長英夫氏、伊藤紀幸氏、風本明氏(京都府)(拡大) |
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