天文ガイド 惑星の近況 2002年7月号 (No.28)
伊賀祐一
4月の惑星は、夕方の西空に木星・土星・火星・金星と並んで壮大な眺めですが、観測シーズンの終わりを迎えています。火星はすでに視直径が4秒台で、新川勝仁氏(堺市)から2日間で2枚の報告をいただきました。8月11日に合を迎えた後に再び4秒台になるのは11月末です。土星も低空となり、6月9日に合を迎えますが、2名から2観測(2日間)の報告がありました。木星はまだ熱心な観測が続いていて、11名から54観測(12日間)が得られ、また海外の観測者からも6名から115観測(20日間)の報告をいただきました。
木星:"BA"が無事に大赤斑を通過
STB(南温帯縞)の白斑"BA"は、GRS(大赤斑)の南を無事に通過し終えました(写真1)。"BA"は2月20日頃にGRS(大赤斑)の真南を通過した後、3月中旬には赤味を帯び、輝度が低くなったために、"BA"は見えにくい状態が続いていました。"BA"の周りの暗いエッジがなくなったために、4月も同様な見え方でした。また、GRS通過前の1月には"BA"は前進速度が鈍りましたが、2月に加速、3月中旬に元のドリフトに戻っています。

過去に見られたSTB白斑どうしのマージ(1998年の"BE"、2000年の"BA")は、いずれも白斑がGRSを通過して2ヵ月ほどたって発生しています。そういう意味で、今回の"BA"のGRS通過に興味が持たれましたが、大きな変化は起こらなかったようです。

写真1 2002年4月2日の木星

撮影/熊森照明氏(堺市)、ソフィア・堺、60cmカセグレイン、デジタルビデオ
日本でもここまで写るかというほどの高解像度の画像です。

ところで、写真1は熊森照明氏(堺市)の4月2日の画像ですが、素晴らしい高分解能の画像に圧倒されます(カラーでないのが残念です)。公共天文台の60cm望遠鏡にデジタルビデオカメラで撮影されたものですが、口径もさることながら400枚近いコンポジット処理によってS/N比の高い画像を得られておられます。卓越した画像処理技術もですが、デジタルビデオの特徴を存分に生かされていると感心しました。

●細くなった北赤道縞

活発な活動を続けているNEB(北赤道縞)は、2000年からの拡幅期を終えて、元の幅のNEBに戻りつつあります(写真2)。広くなっていたNEBの北半分のII=150〜360°の領域が明化して、さらに明化は前方に広がりつつあります。NEBの中央のII=150〜300°には赤茶色の目立ったベルトだけが残り、II=145°,235°,255°,300°に濃い赤茶色のバージが見られます。本来のNTrZ(北熱帯)に位置するNEB北縁のII=60°,110°,245°,285°にノッチ(白斑)が見られます。

写真2 2002年4月1/2日の展開図
撮影/永長英夫氏(兵庫県)、熊森照明氏(堺市)(拡大)

図3にNEBに見られるバージ・ノッチ・NEB中央の白斑をプロットしました。NEB中央の白斑の活動は、1月頃から新しい活動が始まりました。左下に向かう太線がNEB中央に発生した白斑ですが、1月10日頃にII=100°に発生した白斑は早いドリフト(-60°/月)で前進を続け、興味深いことに同じ緯度にあった2個のバージを食いつぶすように消失させました。この白斑からリフトがNEB南部に伸び、4月末にはリフトの先端はII=120°まで達しています。さらに、NEB中央のII=100°付近からは2次、3次、4次の白斑が発生し、同様のドリフトを示しました。この4つのリフトの活動によって、NEB南部は4月末にはII=120〜20°の広い領域で明るくなっています。


図3 NEBのバージ、ノッチおよびNEB中央の白斑の動き
●:バージ、○:ノッチ、◆:NEB白斑(拡大)

■第26回木星会議

木星・土星の観測者が1年に1度集まる木星会議が、今年は和歌山県かわべ天文公園で開催されます。興味のある方のご参加をお待ちしています。
日時:2002年6月15/16日
会場:かわべ天文公園(TEL0738-53-1120)
案内は以下のURLに掲載されています。
http://www.cosmo.kawabe.or.jp/

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