@ STBの活動
前月号でSTB(南温帯縞)の新しい活動ではないかと紹介した現象は、実は従来からこの領域に見られていた2つの現象がからみ合ったものでした。今シーズンになり、大赤斑の後方のII=120〜210°では、STBが濃化し、その南側には多くの白斑群が見られました。2000-01年のシーズンから、STBは白斑'BA'の後方の短いベルトと、その後方180°付近に長さ35°のベルトが見られていました。このベルトが10月にはII=120〜165°に位置し、さらにその後方の経度では階段状に南にシフトしたSTBs(南組織)がII=165〜210°に見られます。これがSTBの濃化部として見られているものです。
一方、SSTB(南南温帯縞)には6個の小白斑が存在しています。2002年3月末にこれらの小白斑の2個が合体する様子は2002年6月号で紹介しました。これらの6個の小白斑は次第に経度の幅をせばめていて、90°の領域に集中しています。SSTB白斑のドリフトはSTBよりも早く、STBの模様を後方から追い越していきます。ちょうど10月に、SSTBの6個の白斑はII=120〜210°の位置にあり、これはSTB〜STBsのベルトの位置と一致しています。この偶然によってSTBの新しい活動に思われたわけですが、それぞれが別々な現象としてとらえるべきだと判明しました(写真1 中央)。
STBに唯一見られる白斑'BA'は、10月22日UTにII=343.0°に位置し、-12.5°/月のドリフトで前進しています。'BA'は輝度がないためにとらえにくい対象ですが、直後のSTBに暗斑があり、周囲を薄暗く囲まれた明部として見ることができます(写真1 左)。
写真1 10月の木星面 10月10日のCM後方に'BA'。10月16日のCM後方にSSTB白斑とSTB。 撮影/永長英夫(兵庫県、25cmニュートン、NEC PICONA)(拡大) |
A SEBsの淡化のその後
大赤斑後方のSEBs(南赤道縞南組織)が淡化しつつありましたが、10月には淡化はおさまってしまいました。SEBsは大赤斑後方から、8月末にはII=170°まで、9月末にはII=230°まで淡化が広がっていましたが、10月に入るとII=240°より後方には淡化が波及せず、逆に少しSEBsがはっきりとしてきました。大赤斑後方のSEBsの淡化は過去にも見られていますが、なかなかSEB全周の淡化にまで波及しないようです。
B 大赤斑
GRS(大赤斑)はII=82-83°に位置しています。周囲を暗部に囲まれていない状態でGRS本体が見えていて、オレンジ色がやや強くなりました。画像からの計測でもエッジが見にくく、経度にふらつきが出てしまいますが、眼視では直後のSEBsの暗部や前方への弱いストリークの影響で誤差が大きくなっているようです。さらに、GRS後方からSTBの濃化部が伸びてきており、STBn(北組織)はGRSにつながっているように見えます。10月はSTBの気流との相互作用が強くなってきた感じです。
C NEB
NEB(北赤道縞)は幅の広がった拡幅期を終えて、通常の幅に戻ってきました。NEB北縁の淡化が進んだおかげで、ずいぶんと凸凹が目立ちます。NEB内部の白いリフト(rift)も、明瞭ではありませんが、活動的です。NEBn(北組織)には、赤茶色のバージ(barge)がII=0,40,110,200,240,275,310°に見られますが、大きさは縮小し、また昨シーズンから継続しているものは110,240,275°の3個ぐらいしか無いようです。一方、昨シーズンは顕著だったNTrZ(北熱帯)の白斑ノッチ(notch)は、NEB北縁の淡化によって見えなくなったものが多く、かろうじてII=70,320°に残っています。
写真2 2002年10月の展開図 撮影/永長英夫(兵庫県、25cmニュートン、NEC PICONA)(拡大) |
|