@ STB白斑'BA'とSSTB白斑
STB(南温帯縞)白斑'BA'は、4月29日にII=320.6°(永長氏画像から)に位置し、9h55m25sの自転周期(ドリフトは-11.8/月)で前進しています。BAは長さが10.5°(4/29 Pujic氏画像から)の楕円形ですが、周囲を暗く縁取られたり、淡くなって見えにくくなったりと変化しています。BAの形も、本来の楕円形をしている時もあれば、野球のホームベースのような五角形に見える時もあります。
このようなBAの形状の変化を引き起こすヒントとして、SSTB(南南温帯縞)白斑の南方通過が考えられます。SSTB白斑は全周で8個観測されています。画像1に今シーズンのBA付近をまとめていますが、1月15日頃にSSTB白斑の一つが通過し、さらに4月20日頃にも別なSSTB白斑が通過しています。2月4日に注目すると、それまで楕円形であったBAが、SSTB白斑に引きずられるように左上が角ばっています。この様子は2ヵ月後の3月3日にも見られますが、4月1日には元の楕円形に戻っています。そして、別なSSTB白斑の通過後の4月28日には、やはり白斑に引っ張られるように左上が角ばってきています。5月にはさらに顕著になるものと思われます。
BAの周りの気流は、近接するSSTB白斑の通過によって影響を受けているようです。現在通過しているSSTB白斑の後方100°の中に5個の白斑が密集しており、この後5月27日頃、7月8日頃とBAを通過していきます。
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画像1 木星:STB白斑'BA'の形状の変化 |
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SSTB白斑が南を通過することが影響している。
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A STBn暗斑
STBはBAの後方の70°の範囲で濃化したベルトが見られ、II=40°から後方では南に緯度を変えて60°の範囲で暗斑の連鎖となっています。また、BAの後方35°には小さなSTBs白斑が観測されています。この小白斑は2000年3月にBAが合体した直後から存在していましたが、2003年4月まではもっと近接していてBAの後方20°以内にありました。その後の2003/04年には不明瞭になっていたものです。
BAから前方には、STBnの暗斑群が観測されています。2月20日頃から、BAからSTBnに暗斑が前進を始め、次々と暗斑が広がっていきました。計測によると9h53m44sの自転周期(ドリフトは-85°/月)と、この緯度の典型的なSTBnジェット気流に乗っています。ただし、4月10日頃には暗斑の発生はおさまっており、長さ100°の幅の中に暗斑群が見られるだけとなりました。
B STrZのダークストリーク
大赤斑はII=101°にあり、その前方のII=61°には、2004年12月末に出現したSTrZ(南熱帯)のドーナツ状白斑があります。3月5日頃からGRS前方のSTrZにダークストリーク(dark streak)が成長を始めました。SEBs(南赤道縞)を後退するSEBsジェット気流の暗斑群が、大赤斑に達すると北側を回り込み、大赤斑後方での何らかのきっかけでさらに南側を回り込んだものが、今度は逆方向にSTrZの前方に噴出すものと考えられます。ダークストリークの先端は、3月末にはII=61°のドーナツ状白斑まで達していましたが、4月末にはII=40°まで伸びています(画像2)。しかしながら、暗物質の供給が弱くなったのか、ダークストリークは次第に勢力を弱めつつあります。
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画像2 木星:STrZダークストリークの成長 |
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大赤斑の前端からストリークが前方に伸びていっている。
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C NEBの活発な活動
NEB(北赤道縞)は拡幅期の最終ステージにあるようです。広がったNEBの中央に赤茶色の斑点バージ(barge)が5個ほどありますが、以前のような濃さはなくなってきました。また、NEB南半分には白斑を伴ったリフト(rift)が高速に前進していますが、比較的小型になっています。リフトが活発な領域は、4月末でII=45-170°とII=250-330°です。リフト領域がNEB内を前進することで、そこにあったバージを消失させる現象が今シーズンはしばしば観測されています。バージは2004年12月にはII=0-240°の範囲にありましたが、4月末にはII=220-360°の範囲に移動したように見えるのは、リフト領域の活動に影響されたからです。
NTrZ(北熱帯)のNEB北縁には、6個の白斑ノッチ(notch)がありますが、このうちのII=35°の白斑は1997年以来継続している長寿命のものであることが追跡できます。
画像3 2005年4月18/19日の木星展開図 撮影/月惑星研究会関西支部(拡大) |
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