@ STB白斑'BA'とSSTB白斑
STB(南温帯縞)白斑'BA'は、5月28日にII=310.0°(阿久津富夫氏画像から)に位置しています。図1に拡大画像を示しますが、BAの南のSSTB(南南温帯縞)には、5個の小白斑(反時計回りの渦)が経度長100°の中に並んでいます。BAA(英国天文協会)のJ.H. Rogers氏は、これらのSSTB白斑にA1からA5の符号を付けています。A2-A3の間と、A4-A5の間には時計回りの細長い白斑があります。BAの自転周期は9h55m24sで、一方のSSTB白斑の自転周期は9h55m05sとやや速く、このためにSSTB白斑がBAを追い越していきます。実際に、A1は4月20日に、A2は5月26日にBAの真南を通過しました。今後はA3が7月8日頃に通過する予想です。
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画像1 木星:STB白斑'BA'とSSTB白斑 |
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100°の経度の中にSSTB白斑が密集している。
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先月号では、SSTB白斑の通過によってBAの形状に変化が起こっていることを紹介しました。逆にBA通過によって、SSTB白斑には影響が現れないでしょうか。SSTB白斑のドリフトを追跡すると、個々の白斑の位置は思っている以上にふらついています。そのために、SSTB白斑どうしの距離が変化し、近づいたり離れたりを繰り返しています。白斑の間に時計回りの渦ができたり、消失したりすることもあります。その結果、2000年10月、2002年2月にはSSTBの2つの白斑が合体をしました。1998年3月と2000年3月に観測されたSTB白斑の2回の合体は、大赤斑南方通過が引き金になった現象でした。私は、SSTB白斑の合体を引き起こすのはBA通過がきっかけではないかと考えています。今から半年間は、順番にSSTB白斑がBAを通過していきますので、注目しています。
A STBn暗斑
STBnジェット気流に乗ったSTBnの暗斑が高速に前進し、5月17日に大赤斑まで達しました(図2)。その後は、暗斑は大赤斑の渦に巻き込まれたのか、行方が分からなくなりました。図3にこの緯度の模様をプロットしていますが、大きな●が大赤斑を、白い○がBAを、小さな点がSTBn暗斑を示します。2月20日頃から、BAの前方に吹き出すSTBnの暗斑群が観測され、4月10日頃まで続きました。その後の暗斑の発生はなくなっていましたが、再び5月20日頃から活発になってきました。
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画像2 木星:STBn暗斑 |
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高速に移動する暗斑が大赤斑に達する。
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BAから前方に広がるSTBn暗斑は、9h53m44sの自転周期を持つSTBnジェット気流に属していて、ドリフトは-85°/月と非常に高速です。これらの暗斑群の多くは、BAの前方100°ぐらいに達すると消失していますが、それでも3個の暗斑だけはもっと長く残りました。図2の大赤斑まで達した暗斑は、これらの暗斑群の初期に発生したものです。
図3のプロットで、BAの前方120°で平行に移動している暗斑がありますが、これはSTBに位置する暗斑です。2002年12月に出現し、その頃はもっと丸い暗斑でしたが、次第に形状が変化しています。図4ではII=190°にある淡いサメの背びれ状の模様です。しかし、この暗斑はもっと南のSSTBとつながっていて、何らかの相互作用が見られます。新しいSTBの活動につながるかもしれません。
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画像3 STBn暗斑のドリフト・チャート |
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画像4 2005年5月1/3日の木星展開図 撮影/月惑星研究会関西支部(拡大) |
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