火星の全球を覆ったダストストームは、比較的早く沈静化に向かっています。2001年のときに起こったダストストームは長きにわたり表面の模様を覆っていましたが、今回は様子が少し異なっています。
8月初めのダストストームは、南半球高緯度にあるエリダニア(210W、-45)からアウソニア(258W、-35)付近に、帯状の活発な活動領域がありました。また、メリディアニ(0W、-5)やシヌスサバエウス(340W、-8)付近にもあり、これらの地域には模様が見えない状態でした。7月にはあちらこちらにダストストームの明るいスポットができましたが、今回は8月4日のオーロラシヌス(50W、-10)に発生したもの1回だけでした。
8月9日には広く拡散したダストストームは淡くなり始め、ベールの下に本来の模様が見えるようになってきました。発生時期から考えると2001年よりも早い進行です。ダミアン・ピーチ氏の画像ではオリンピア山が青画像でも黒く写り、2001年のダストストームを思い起こさせます。
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[図3] ダストストームの収まった火星 |
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2007年8月11日 撮像:D.Peach(イギリス、35cm) 左は赤画像。右は青画像。オリンピア山が黒い点になって見える
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ダストストームが淡くなると、暗色模様の変化が見えるようになってきました。大規模なダストストームのときは、暗色模様の変化を捉えることが重要です。ソリス(90W、-25)は、今までのような大きさはなくなり、小さくなって記録されるようになりました。また、セルペンティス(325W、-25)は、今までよりも暗くなって見えるようになりましたが、アルギレ(35W、-50)は、反対に明るく記録されています。模様の変化を突き止めたいのですが、画像を撮像されている方は、必要以上にコントラストを上げすぎないように注意してください。
8月初めの南極地方や北極地方は、共にダストストームの上に白雲が見られています。ダストストームよりも高いところに発生しているようです。8月末には北極地方の白雲が次第に明るくなり、北極にフードを形成する兆候が見られています。これからは、北極付近の白雲の変化に注目したいものです。
小さくなった南極冠は、条件の良いときの画像でかろうじて判別できるものの、肉眼ではほとんど見ることはできませんでした。
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