@ 循環気流続報
先月は、73年ぶりに循環気流による暗斑のUターン運動が観測されましたが、その後もSEBsの後退暗斑が次々にSTrD-1に到達し、同様のUターン運動を見せています。
8月半ばまでにSTrD-1に達したSEBsの暗斑はaからqまでの13個あり(dとeはSEBsを後退中に合体、またlも後退中にいくつかの暗斑と合体しています)、このうち暗斑cはUターン中に消失、fとg、pとqはUターン中に合体したため、10個の暗斑がSTBnを前進し始めています。Uターン中の暗斑は大きな変動を受けるようで、小さなものは所在が一時的にわからなくなることがありますが、deやk、lといった大型の暗斑はUターン中も明瞭で、STrD-1が暗塊状に濃く顕著になっています。
Uターン後の暗斑の緯度は、元々STBn上にある暗斑(南緯28°)と比べて南緯25〜26°と緯度が低くバラつきがあります。そのため、前進速度にも大きな差が見られ(緯度が高い方が速い)、暗斑aとbはUターン後2週間ほどで合体、deとfgの合体暗斑同士もSTBn上で再び合体、その他hとi、jとkも合体してしまいました。現在、STBn上に見られる暗斑は6個(ab、defg、hi、jk、l、pq)で、接近を続けているdefgとhiは間もなく合体してしまうと思われます。
また、Uターン後の暗斑は前進するに従って緯度が低くなる傾向があるようで、暗斑abはUターン直後南緯26.5°にありましたが、現在では南緯24°と、STrZの中央付近まで下がってきています。そのため、前進速度も小さくなって、8月10日以降は体系II=250°付近で停滞ぎみです。SEBsの後退暗斑とはほとんど接触しそうになっていますので、何かのきっかけで、再びUターンして後退運動に転じる可能性もありそうです。
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[図2] 継続する循環気流の活動 撮像:池村俊彦(愛知県、31cm)、永長英夫(兵庫、30cm)、熊森照明(大阪府、20cm)、畑中昭利(三重県、40cm)、F.Carvalho(ブラジル、25cm)、D.Chang(香港、20cm)、C.Go(フィリピン、28cm) |
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A その他の状況
5月に発生したSEB攪乱は、現在も活動が続いています。発生源の体系II=180°から大赤斑との間では中央分枝の活動により濃く幅広いSEBが復活しました。しかし、中央分枝は大赤斑に堰き止められて前方に広がることができず、大赤斑前方のSEBはまだ淡化状態にあります。大赤斑は南分枝の暗斑群が到達すると淡化変形することが知られていますが、今回は暗斑がSTrD-1でUターン運動をしているため、大赤斑は赤みが強く明瞭なままで影響は見られません。北分枝の前端はEZsの白斑(SED)付近にあると思われ、7月末でちょうど木星面を一周しています。
永続白斑BAは赤みを帯びたドーナツ型の斑点ですが、輪郭がやや不明瞭になっています。後方のSTBの濃化部は長さが約40°に縮小しています。
北半球は全体として薄暗く、その中にNTBとNNTBが赤みを帯びたベルトとして見えていて、明暗のはっきりした南半球とは対照的な見え方です。これは3月から5月頃まで続いたNTBs outbreakの余波と考えられます。
[図1] 2007年7月23/24日の木星展開図 撮像:月惑星研究会(拡大) |
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