@大赤斑と赤色斑点の会合
今シーズンの話題となっている南熱帯(STrZ)の赤色リング斑点(LRS)と大赤斑と
の会合がついに始まりました。どのような現象が見られるか、これまでいろいろ
予想されていましたので、まず結果から報告しましょう。LRSは大赤斑の南側を
なんとか通過し、前方のSTrZで生き残っています。
先月のこのページでは、LRSが大赤斑に到達する時期を7月初め〜中旬と予想しま
したが、LRSが大赤斑に近づくにつれて加速したため、6月27日頃には大赤斑湾
(RS bay)の後端に達しました。すると、大赤斑の南縁に沿って青黒いアーチが出
現し、LRSはそのスロープを這い上がるように進みました。7月1日までは元のリ
ング状の丸い形状を保っていましたが、2日に大赤斑の中心から2時方向まで進ん
だ時、突然東西方向に引き伸ばされて、赤みを帯びた細長いstreak状に変化して
いましました。翌3日には、ひと足先に大赤斑に追いつき、ちょうど真南に差し
掛かっていた永続白斑BAと大赤斑の間の狭いチャネルを通過して前方へ抜けたと
思われますが、赤みのあるstreakはどこにも見られず、一時は消失してしまった
のではないかと疑われました。
不明瞭な明部が大赤斑の左上に再び現れたのは5日のことですが、以前のような
赤いリング状の姿とは異なり、輪郭のはっきりしない拡散した白斑であったため、
通常の画像では本当にLRSなのか確信が持てませんでした。しかし、メタンバン
ドの画像でも、この白斑が明るく写っていたことから、LRSであることが明らか
になったのです。その後、可視光では今ひとつ不明瞭ながらも、メタンバンドで
は明るい模様で、その位置も大赤斑の左上から前方へ移動し、14日には大赤斑前
端から伸びる短いstreakの先端へと進んでいます。経度は同日の柚木健吉氏(大
阪府)の画像で、II=101.7°でした。赤みはまったく無くなり、通常のSEB南縁に
ある白斑と変わりなくなっており、大赤斑通過後の再形成で、LRSの構造が変化
してしまった可能性があります。緯度についても南緯23°台まで下がってしまい
ましたので、SEB南縁を後退に転じて、大赤斑に再度向かって行く可能性もあり
ます。
ひとまず今回の会合は一段落しましたが、今後、第二幕、第三幕の展開があるか
もしれませんね。
Aその他の状況
前述のように、LRSが到達したことにより、大赤斑南縁に青黒いアーチが形成さ
れました。アーチの内側には赤みのある大赤斑本体が見えていて、中心に核状の
暗部も存在しますが、全体として明るく、まるで赤斑孔(Red Spot Holow)を見て
いるようです。南側を通過中の永続白斑BAは、大赤斑の3分の2ほどもある大きな
白斑として見られ、昨年のような強い赤みは無くなってしまいましたが、真っ白
なコアとそれを取り囲む淡いピンク色の領域が印象的です。LRSとの会合による
大赤斑やBAへの影響は特にありません。80年代には、永続白斑の大赤斑通過に伴
って、大赤斑前方のSTrZにdark streakや暗部が出現したことが何度もありまし
たが、近年は何も起こっていません。今回もこのまま通過してしまいそうな雰囲
気です。大赤斑とBAの経度は、12日の永長英夫氏(兵庫県)の画像で、それぞれII
=126.5°とII=121.4°でした。
3月に発生した2つのmid-SEB outbreakは、まだ活動が続いています。RS前方の
outbreakは、発生源がII=60°付近まで前進してしまいましたが、SEBの北半分に
約70°の長さの乱れた明帯を形成して活動的です。この明帯は徐々に細くなりな
がらさらに前方へ伸びて、II=240°付近に発生源のあるもうひとつのmid-SEB
outbreakの北へくさび状に潜り込んでいます。そのためこの経度では、2つの
outbreakの間に前方北側−後方南側に傾いた濃い暗条が発達しています。このよ
うな構造はSEBではよく見られ、outbreakの白雲は相互に混じり合わないという
性質を示すものです。大赤斑の後方からII=240°までの領域は、同じような明帯
となっていますが、前述のoutbreak領域に比べて乱れ方は弱いようです。
6月中旬、赤道帯南部(EZs)の長命な攪乱領域(SED)が大赤斑北側を通過して、再
び活動的になりました。SEB北組織(SEBn)にリフトが再形成され、I=330〜10°の
範囲でSEBnがEZsへせり出して乱れています。この領域が次に大赤斑北側を通過
する8月にも、同様に活動的になることが期待されます。
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[図1] 大赤斑とBAとLRSの会合 撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm)、宮崎勲氏(沖縄県、40cm)、風本明氏(沖縄県、50cm)、Anthony Wesley氏(オーストラリア、33cm)、Guilherme Grassmann氏(ブラジル、25cm) |
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[図2] メタンバンドによる大赤斑とBAとLRS(▲)の会合(拡大) |
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