北半球では大変動が続いていて、北赤道縞(NEB)から北温帯縞(NTB)にかけては、
これまで見たこともない異様な光景が広がっています。NEBとNTB南組織(NTBs)は
オレンジ色が鮮やかで、特にII=200°台では北熱帯(NTrZ)も赤みを帯びて薄暗く
なっているため、NEBからNTBsまでが幅広いオレンジ色のベルトのように見えま
す。これを青黒いNEB南組織(NEBs)とNTB北組織(NTBn)が縁取っていて、色調の違
いが際立っています。II=120〜300°のNEBは幅広くなっており、北縁が北緯20°
付近にありますが、その他の経度では北緯17°付近で、平均的な位置になってい
ます。
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[図1] 暗化して一体となったNEBとNTB |
大赤斑のすぐ後方には赤化したBAが迫る。撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm) |
NEB南縁の至る所に見られる青黒い暗部や暗斑からは、赤道帯(EZ)に向かって
フェストゥーン(festoon)が伸びています。このような模様は2008年以降、数少
なくなっていましたが、今年は5年ぶりに復活しています。EZの中央を東西に横
切る赤道紐(EB)は、I=200°台で赤みが強く明瞭ですが、その他の経度ではあま
り目立ちません。シーズン初めは全周で顕著でしたので、淡化傾向にあるのかも
しれません。
南半球では南熱帯(STrZ)のストリーク(dark streak)が衰退を始めたことにより、
大赤斑(GRS)南側のアーチが消失し、大赤斑本体が1年半ぶりに復活していますが、
まだ淡く赤みもほとんどありません。II=181°にある大赤斑のすぐ後方には、永
続白斑BAが迫っています。今シーズンは再び強く赤みを帯びて、大赤斑よりも赤
くなってしまいました。そのため、白斑ではなく赤い「暗斑」として見えていま
す。経度は8月6日でII=199°となっていますので、8月末には大赤斑の南を通過
し始めるでしょう。BAのすぐ後方には、明瞭な小暗斑があります。以前見られた
南温帯縞(STB)の断片の名残と思われます。同じような小暗斑はII=110°付近に
も見られます。
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[図2] ストリーク後端部 |
南熱帯攪乱を思わせる暗部になっている。撮像:大田聡氏(沖縄県、30cm) |
STrZのストリークは、後端が大赤斑を離れてからひと月が経過しました。通常、
大赤斑側からの供給を断たれたストリークは、急速に衰えて消失するのですが、
今回はやせ細ってきているものの、予想したほど衰えていません。ストリークは
後端がII=70°付近にあり、前方に向かって細く淡くなりつつII=300°付近まで
伸びています。後端部は南赤道縞(SEB)南縁から盛り上がった幅30°くらいの低
い台形状の模様となっており、南熱帯攪乱(South Tropical Disturbance)を彷彿
させます。もし、循環気流が形成されていれば、ストリークが意外に持続してい
る事実と符号するのですが、今のところその証拠は見られません。
SEBは大赤斑前方で濃く、中央組織が顕著です。シーズン初めからII=100°付近
に目を引く大型の明部がありましたが、高解像度の画像では複数の小白斑の集合
で、同様の模様がII=60°付近にも見られます。大赤斑後方に見られるSEBの活動
域、post-GRS disturbanceは長さ40°くらいでやや短くなりました。後方のSEB
南縁は暗斑群となっています。II=0°付近には、STrZのストリークとSEB南縁の
間に明瞭な小暗斑が出現しています。山崎氏のレポートによれば、この暗斑は
8月1日前後にSEB南縁の暗斑群のひとつから形成されたとのことで、典型的な高
気圧性のリング暗斑です。
本来の濃度と太さを持ったSTBは、II=270°から330°の区間で見られ、その前方
でも大赤斑との間では拡散した北組織が明瞭ですが、その他の経度ではほとんど
消失しています。その南では南南温帯縞(SSTB)が幅広く濃いベルトとして目立っ
ていますが、II=200°台とII=0°前後では、ベルト中央部が淡化して二条に分離
しています。SSTB内部には、昨シーズン同様、高気圧性の小白斑(AWO)が全周で
9個確認できます。
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[図3] STrZのリング暗斑の形成 |
SEB南縁の暗斑がリング暗斑に発達する様子。山崎明宏氏作成、筆者改編 |
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