木星面では北半球に大変動をもたらした活動が今も続いています。
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[図1] 大赤斑とBA |
NEBからNTBにかけての混沌として様子にも注目。撮像:Christopher Go氏(フィリピン、35cm) |
北温帯縞南縁のジェットストリームでアウトブレーク(NTBs jetstream outbreak)
が発生してから、まもなく3ヶ月となります。激しい活動は一段落して目立つ白
斑や暗斑は姿を消し、直線的で鮮やかなオレンジ色のNTB南組織(NTBs)が目を引
きます。濃化が及んでいない区間がI=20〜80°の範囲に残っているようですが、
7月中には活動が全周に及ぶことでしょう。NTBはほとんどの経度で二条になって
おり、灰色の北組織(NTBn)が見られます。NTBnはII=200°台で徐々に北へ傾き下
がり、II=300°付近のNTBはSEBに匹敵するほどの幅があります。
リフト活動で攪乱状態となった北赤道縞(NEB)は激しく乱れていています。南組
織(NEBs)は濃く明瞭ですが、NEB中央から北熱帯(NTrZ)は薄暗く混沌としており、
ベルトの北縁を判別することができません。青黒い暗塊やストリークのような模
様が数多く見られますが、NEBの活動に由来するのか、NTBsのアウトブレーク由
来なのか不明です。高解像度の画像で見ると、この領域には「逆くの字」型をし
たフィラメント模様がびっしりと並んでいます。体系Iで流れる赤道領域から、
NEB北縁の遅い流れを経由し、NTB南縁の最速ジェットストリームへと続く木星面
の風速分布がそのまま見えてしまっています。
NEBの攪乱活動は、赤道帯(EZ)にも影響を及ぼしていて、NEB南縁に多数見られる
青黒い暗部から、EZに向かってフェストゥーン(festoon)が伸びています。また、
I=200〜40°の範囲では赤道紐(EB)が顕著で、NTBsと同様、鮮やかなオレンジ色
をしていますが、EZ北部(EZn)やEZ南部(EZs)では、それほど強い色調は見られな
いので、ちょっと不思議な感じがします。
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[図2] 大赤斑前方のストリーク |
ストリークが大赤斑前方で途切れている。 撮像:前田和儀氏(沖縄県、50cm) |
南半球では南赤道縞(SEB)が、木星面で最も濃いベルトとして目立っています。
南熱帯(STrZ)のストリーク(dark streak)は、II=40°から後方で斜めに傾き下が
る組織として見られますが、7月に入って後端が大赤斑から離れ初め、現在は30°
ほど前方で途切れています。ストリークは大赤斑を離れると急速に衰えるので、
今回の活動もまもなく終わると思われます。今回は1年以上存続し、この種の模
様としては極めて長命でした。大赤斑(GRS)はII=180°にあり、南側のアーチが
弱まり、本体が淡く見えるようになっています。後方のSEBでは、白雲の活動領
域であるpost-GRS disturbanceが長く伸びています。また、II=240〜0°の区間
ではSEB南縁(SEBs)が凸凹していますので、SEBsの後退暗斑群がついに活動を始
めたようです。
大赤斑の30°後方にある永続白斑BAは、赤みの強いリング状の斑点となっていま
すが、周囲に暗い模様がないため、まるで暗斑のようです。南温帯縞(STB)はII=
240〜340°の区間で濃く太く、その前方でも大赤斑までの間は北組織(STBn)が明
瞭ですが、ストリークのある大赤斑前方ではほとんど見えません。面白いことに
SEBsの暗斑群もストリークの経度では見られないので、ストリークの存在は、こ
の領域が通常とは異なる状態にあることを示しているかのようです。
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[図3] SEB南縁の暗斑群 |
SEB南縁が暗斑群で凸凹している。EBがオレンジ色で顕著。撮像:吉田智之氏(栃木県、30cm) |
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