視直径が小さくなったため、眼視では400倍くらいの倍率をかけないと、模様の
検出が難しくなっています。梅雨に入って観測数が激減し、火星面の状況を把握
することが難しくなっています。この先の観測も厳しさが増して行くことでしょ
う。
※南半球の不思議な雲
エリダニア付近の不可解な雲は、3月以降しばらく観測されませんでしたが、5月
17日になって、フランスのマクシモヴィッチ氏(Stanislas Maksymowicz)から、
眼視で同じような現象を捉えたとの報告がありました。22時10分(UT)に発見し、
21時30分には見えなくなったとのことです。直前の赤外画像を見ると怪しい突起
があるように見えますが、「確認」はできませんでした。以前の怪しい雲は、火
星のターミネーター付近で見られましたが、マクシモヴィッチ氏の突起は反対側
のエッジでした。5月23日にはフランスのペリエ氏(Christophe Pellier)が、青
画像で同じような模様をターミネーター上で捉えています。経度はアウソニア
(258W, -35)とヘラス(295W, -50)の中間となる270°付近と思われます。視直径
が小さくなって観測が難しくなりますが、注意が必要です。
5月16日、アメリカのウィレムス氏(Freddy Willems)は、ノアキス(350W, -40)付
近が淡くベールに覆われているのを捉えました。23日には柚木氏がこの地域を黄
色く観測しています。前後の観測がなく、何が原因かはわかりませんが、小規模
な砂嵐があった可能性があります。
※その他の状況
北極冠はずいぶん小さくなりました。南半球のヘラス(295W, -50)にかかる雲が
著しく明るくなり、6月1日には、まるで南極冠のようでした。夜側から出てきた
ヘラスには、すでに白雲(霜の可能性もある)が広がっていますが、午前中に急速
に雲が発達し、正午頃には大変明るくなります。そして、西のターミネーターに
入るまで明るい状態を保っています。
当観測期間は低緯度地方で氷晶雲がたくさん見られました。アキダリウム(30W,
+50)の南側やシルチス(295W, +10)の東側など、いつも顕著な場所だけでなく、
それ以外の地域でも目だっていました。オリンピア山やタルシス3山の頂では氷
晶雲が見られなかったので、午前半休では赤黒い斑点として観測されました。
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[図1] 6月の火星スケッチ |
[図2] 明るく輝くヘラス |
模様に乏しい地域で北極冠は小さくなった。観測:安達誠(滋賀県、30cm) |
大シルチスの南側で極冠のように明るい。撮像:佐々木一男氏(宮城県、20cm) |
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[図3] 低緯度地方の氷晶雲 |
[図4] タルシス3山 |
中央右側に淡く氷晶雲が広がっている。撮像:Maciel B. Sparrenberger氏(ブラジル、20cm) |
右上から中央に向かって並んだ黒斑がタルシス3山。撮像:柚木健吉氏(大阪府、26cm) |
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