★木星面の近況
2013-14シーズンの最初の観測は、7月8日に永長英夫氏(兵庫県)によって行われ
ました。永長氏は9、10日と16日にも観測を行っており、合から明けたばかりの
木星面について貴重な情報を提供してくれています。今のところ、国内で観測を
行ったのは永長氏だけです。
永長氏の画像を一見したところでは、南赤道縞(SEB)と北赤道縞(NEB)が太く明瞭
で、木星面は昨シーズン末とほとんど変わっていないようです。NEBは北縁の後
退が進んだようで、以前に比べると少しほっそりとして、通常の太さに戻ってい
ます。ベルトの北縁は凹凸がなく、bargeや白斑も確認できないのはちょっと意
外な感じですが、これから観測条件が良くなると、検出されるようになるかもし
れません。また、南縁からは赤道帯(EZ)に向かって、青みの強いフェストゥーン
(festoon)が数多く見られます。
大赤斑(GRS)は、10日の画像で左端に見られます。詳しい様子はわかりませんが、
輪郭不明瞭ながら赤みがあります。大赤斑後方のSEBは40°くらいに渡って淡く
二条に分離しています。post-GRS disturbanceと呼ばれる白雲の活動領域で、以
前と比べると少し長くなったように思われます。
16日の画像では永続白斑BAが確認できます。南温帯縞(STB)の暗部に挟まれた薄
暗い白斑で、赤みが感じられます。BA後方にはSTBの長い暗部が続いていますが、
前方にも短い暗部が見られます。後方の暗部がBAを越えて前方に漏れ出したもの
で、3月頃の状況と変わっていません。
北半球に目を移すと、北温帯縞(NTB)が顕著です。昨シーズンは南部の赤みが強
かったのですが、現在はベルト全体が灰色で赤みは失われています。NTB南部は
淡化してしまったのかもしれません。NTBの北側には昨シーズン見られなかった
薄暗い縞が出現しています。淡化していた北北温帯縞(NNTB)が予想通り復活した
ようです。
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[図2] 今シーズンの木星面 |
左端に大赤斑があり、後方のSEBは白雲活動により二条に分離している。撮像:永長英夫氏(兵庫県、30cm) |
★南南温帯縞の白斑の名称について
南南温帯縞(SSTB)には、直径5°前後の丸い小白斑が多数見られます。これらは
大赤斑や永続白斑BAと同じ、左回りの高気圧性の循環を持つ渦で、
AWO(Anticyclonic White Ovals)と呼ばれます。近年の観測から、これらは比較
的長期間に渡って永続していることがわかっており、現在見られるいくつかの白
斑は、少なくとも15年、おそらく20年以上存続していると思われます。ここ数年
は9個のAWOが同定されており、このページでは、白斑の呼称をBAAに合わせてA0、
A1、A3〜A9としてきました。
右図はこの10年間のAWOの運動を詳細に調べたドリフトチャートです。AWOはかな
り速いスピードで前進しますので、体系IIに対して-0.95°/日で移動する特殊経
度で作成してあります。当初のA1〜A5の5個の白斑に、後から形成された白斑が
加わって現在の9個の構成になったことがわかります。現在の名称は、元々のA2
が2010年頃に消失し、A8とA0の間にA9が出現したという解釈に基づいているので
すが、図を見る限り、9個の継続性については、疑いを差し挟む余地がないよう
です。
そのため、今後、このページでは、A9、A0、A1の3個の白斑の名称を修正し、A0、
A1、A2と呼ぶことにします。右図の経度は昨年の衝(12/3)の体系IIに一致するの
で、それぞれがどの白斑に該当するか、画像で確認してみてください。
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[図3] 南南温帯縞のAWOのドリフトチャート |
体系IIに対して-0.95°/日で前進する特殊経度で作成。月惑星研究会の観測より |
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