木星の赤道をはさむ主要な2本のベルトのうち、北側(通常は下)に見られる北赤
道縞(NEB)は、ベルト北部が淡化してだいぶ細くなってきました。ちょうど大赤
斑(GRS)の北側に当たるII=200°前後の区間が最も細く、NEBの通常の幅(10°前
後)を下回っています。2011〜2012年にはベルトの太さがわずか5°という異常な
状態になるまで細くなりましたが、今回はどこまで細くなるのか、注目されます。
ベルトの北縁はかなり凸凹して、バージ(barge)と呼ばれる暗斑や、ベルトに半
分食い込んだノッチ(notch)状の白斑がいくつか見られます。II=240°付近にあ
る大きな凹みは、昨シーズン衝突・合体を繰り返して発達した白斑WSZと思われ
ますが、春先のような明るさはなくなっています。NEBの南縁には、いつものよ
うに青黒い横長の暗部と、赤道帯(EZ)に伸びるフェストゥーン(festoon)がいく
つも見られます。EZはやや薄暗く、青いフィラメント模様が見られ、一部は東西
につながって赤道紐(EB)を形成しています。
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[図1] オレンジ色が鮮やかな大赤斑 |
後方のSEBが活動的。中央のNEB北縁に見られる凹みがWSZ。撮像:吉田智之氏(栃木県、30cm) |
今シーズンも大赤斑(GRS)が顕著です。オレンジ色が大変鮮やかで、濃度も十分
にあり、周囲の南赤道縞(SEB)と比べてもまったく見劣りしません。大赤斑の濃
度はSEBと反比例の関係にあると言われ、現在のようにSEBが濃い時の大赤斑とし
ては、異例な状態が続いています。ただ、大赤斑後端とSEBは細いブリッジで連
結され、赤斑湾(RS bay)内部には薄暗い模様も見られるので、今後、SEB南縁を
後退するジェットストリーム暗斑の活動によって南部に暗いアーチが形成され、
大赤斑本体が淡化することも考えられるので、注意が必要です。経度はII=198°
でゆっくりとした後退運動が続いています。II=200°を超えるのは時間の問題と
思われます。
大赤斑後方のSEBでは、post-GRS disturbanceと呼ばれる白雲領域が活動的にな
っています。さらに後方ではSEB南部が淡く乱れており、ジェットストリーム暗
斑らしき模様も見られます。一方、大赤斑前方のSEBには大きな明部が見られま
す。昨シーズンから観測されていますが、成因や性質がまったくわからないナゾ
の白斑です。徐々に大赤斑に近づいているので、どんな振る舞いを見せるか注目
です。
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[図2] 木星面展開図(2013年8月6日〜8日) |
昨シーズンと大きな違いはないが、NEBが細くなっていることがわかる。8月6日〜8日に撮像された永長英夫氏(兵庫県、30cm)と阿久津富夫氏(フィリピン、35cm)の画像から、永長氏が作成。 |
永続白斑BAは、II=60°付近で暗い縁取りに囲まれた赤みを帯びた白斑として見
られます。後方には南温帯縞(STB)の暗部がII=120°まで伸びています。また、
BAの前方でもSTBの北組織が濃く厚くなっているのが目につきます。STBの暗部が
BAを越えて前方に漏れ出した影響と思われます。濃い部分はII=310°付近まで伸
びていますが、その前方でも細い北組織が大赤斑付近まで続いています。
STBの南側ではII=150〜330°の範囲で南南温帯縞(SSTB)が明瞭です。II=285〜
330°には高気圧的な小白斑AWOが4つ並んでいます。昨シーズン間隔が詰まって
合体するのではないかと思われたA8/A0/A1/A2です。他の経度のSSTBは淡化して、
ひとつ南側のベルトが濃くなっています。このベルトは南南南温帯縞(SSSTB)な
のか、SSTB南組織なのか、名称に苦しみそうです。
北半球では、強く赤みを帯びていた北温帯縞(NTB)の南部が淡化して、濃い青灰
色の北組織が目立っています。その北側で北北温帯縞(NNTB)が濃く復活していま
すが、II=150〜210°では不明瞭です。この領域ではNTB北組織が北にやや湾曲し、
北温帯(NTZ)が薄暗くなっています。その後方のNNTB南縁にはジェットストリー
ム暗斑が見られます。
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