大赤斑(GRS)周辺で、新たな活動が観測されています。10月10日頃から、大赤斑の南側に
アーチが再び発達し、大赤斑前方に流れ出して、南熱帯(STrZ)に暗部が形成されました。
この暗部は永続白斑BAの前方に伸びる南温帯縞(STB)北組織と一体となって、大赤斑から
分離し、10月末には、STrZ南部を覆う長さ30°の不規則な暗部となりました。11月の暗部
は前方に拡散しつつありますが、STrZには大きな暗斑がいくつも残っていて、ゾーン全体
が薄茶色になっています。
大赤斑を囲むアーチは、当初かなり顕著でしたが、暗部が大赤斑から離れると急速に衰え
てしまいました。ただし、赤斑湾(RS bay)後端部の大きな盛り上がりは残り、11月に入る
と再びアーチが形成される気配があります。今後も、同じような活動を間欠的に繰り返す
と思われます。
RS bay後端部がトリガーとなるこのような活動は、南赤道縞(SEB)南縁を流れる後退ジェ
ットストリームが原因と思われます。1980年代や2000年にも同様の活動がありましたが、
当時は何がなんだかわからない現象という印象でした。現在は、高解像度の画像がたくさ
ん得られるようになってますので、何か新しい事実が解明されるのではないかと期待され
ます。
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[図2] 大赤斑周辺の暗部の発達 |
撮像:菅野清一氏(山形県、30cm)、永長英夫氏(兵庫県、30cm)、大田聡氏(沖縄県、30cm)、熊森照明氏(大阪府、28cm)、宮崎勲氏(沖縄県、40cm)、クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm)、ティジャーノ・オリベッティー氏(タイ、41cm) |
BAが大赤斑の南を通過して、前方に出ました。白斑本体は薄茶色に濁っていますが、周囲
を暗い縁取りで囲まれて、よく目立っています。BAの後方の大赤斑の南側では、STBと南
南温帯縞(SSTB)が一体となって、幅広いベルトを形成していますが、真のSTBは20〜30°
のみで、その後方はSTB南組織が細くII=300°付近まで伸びています。先月のレポートで
取り上げた、BA前方のSTB北組織の濃化部は、暗斑群に分解しながらジェットストリーム
に乗って前進中で、先端はII=20°付近にあるSTB Ghostに達しようとしています。
現在、大赤斑の南側のSSTBには多数の白斑が見られます。これらは左回りの循環を持つ高
気圧的白斑AWOです。BAの南に見られる先頭のAWOはA7aで、後方にA8、A0、A1、A2と続い
ており、全周で10個見られます。BAの南には、他よりもひと回り大きな白斑がありますが、
これは右回りの循環を持つ低気圧的白斑(CWO)で、AWOよりも少しだけ北寄りです。A7aと
間違えそうですが、CWOのすぐ左上に見られる小白斑が本物のA7aなので、注意してくださ
い。なお、II=350°付近にあるA4から後方では、約120°に渡ってSSTB中央部が明化し、
ベルトが二条になっています。
SEBは濃く幅広いベルトで、南縁を中心に活動的ですが、大赤斑後方の活動領域(post-GRS
disturbance)は、異常なほど不活発で、明るい白斑はひとつあるかないかという状態です。
2012年に出現し、紆余曲折を経ながら大きく成長してきた大赤斑前方のSEBの明部(light
patch)は、II=135〜165°と以前とほとんど同じ位置にありますが、10月下旬から急速に
衰え始めています。10月半ばに大赤斑前方のSEB北部が一時的に明るくなり、前進して明
部の北側を通過すると、明部は南北にやせ細って目立たなくなってしまいました。両者の
間は濃い中央組織で隔てられていたのですが、何らかの相互作用があったのかもしれませ
ん。
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[図1] やせ細ったSEBの明部 |
SEB北部に乱れた明帯が広がり、元々あった明部を圧迫している。撮像:熊森照明氏(大阪府、28cm) |
北赤道縞(NEB)は、あちこちでリフト活動が見られますが、大規模なものはありません。
南縁には青黒い大小の暗部が全周で10ヵ所前後あり、そこから赤道帯(EZ)に向かってフェ
ストゥーン(festoon)が伸びています。一方、II=30°のNEB北縁には長命な白斑WSZがあり
ます。BAと同じように、内部が薄茶色に濁っていますが、NEB北縁にはっきりとした湾を
作っています。相変わらず前進運動を続けていますが、ドリフトは1日当たり-0.25°で、
先シーズンの約半分に減速してしまいました。WSZの周辺では、NEBが北に膨らんで太くな
っています。他の経度でも幅広いところがあり、新たな拡幅活動かと疑いたくなります。
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