まだ寒い日がありますが、春が近づいてシーイングの良い日も見られるようになりました。 木星はおとめ座を逆行中で観測の好機です。 もうすぐ西矩を迎える土星は、へびつかい座を抜けていて座に入りました。 遠ざかりつつある火星はうお座を進んでいます。
ここでは2月半ばから3月初めにかけての惑星面についてまとめます。 この記事中の日時は、すべて世界時(UT)となっています。
mid-SEB outbreakの活動は、木星面を3分の2周して先端がII=320°に達しています。 発生源に近い活動域後部では、南赤道縞(SEB)の幅いっぱいに白雲が広がり、大変活動的です。 II=120°前後の中央部では、白雲の広がりはSEB北部に狭まりますが、青黒い暗柱が15〜20°間隔で並ぶ様子が印象的です。 前部は先端ほど白雲が細くなり、乱れ方も小さくなっています。 活動域のドリフトは、先端が1日当たり-4°、中央部は-3°と緯度が低い前方ほど速く前進しています。
発生編は現在もII=205°付近にありますが、少し前方のII=160°付近にも白雲の湧出場所があることを水元伸二氏(東京都)が指摘しています。 こちらは1日当たり-0.7°の割合で前進しており、1月10日頃に最初の発生源から分かれたと思われます。 「dual source」とでも言うべき状況ですが、発生源の分裂は過去に例がありません。 さらに2月上旬には第3の発生源ができた可能性があります。
outbreakの先端は、間もなく大赤斑(GRS)後方の定常的なSEBの活動領域(post-GRS disturbance)の後端に達します。 過去の例では、outbreakの白雲は活動域の北にくさび状に潜り込んで、単純には混じり合わないようです。 今回はどのような現象になるでしょうか。
南南温帯縞(SSTB)には長命な高気圧的白斑(AWO)が8個見られますが、他に昨シーズン形成された2個の小白斑があります。 JUPOSチームによってA5a/A5bと命名されたのですが、その矢先に両者の合体が観測されました。 2月前半まで2つの白斑は10°以上離れていましたが、前方のA5aが後方のA5bに近づき、3月に入ると合体が始まりました。 7日の画像では白斑がほぼ南北に並んでいますが、8日には白斑はひとつだけとなり、合体は完了したようです。
また、1月末にはII=120°付近でA6が前方にあった低気圧的白斑(CWO)と衝突したことを水元伸二氏が報告しています。 その結果、CWOが北の南温帯(STZ)に漏出し、2個の暗斑が形成され、A6も大きく減速してしまいました。
大赤斑の前方に出現したストリーク(dark streak)は徐々に伸長して、II=210°にある永続白斑BAの北を通り、細く淡くなりながら、さらに30°以上前方へ伸びています。 大赤斑後端とSEBをつなぐブリッジも明瞭で、大赤斑周辺は以前よりも薄暗くなってきました。 mid-SEB outbreakの白雲の一部は、SEB南縁の後退流に捕えられて、尻尾のように伸び、SEB南部に軽い乱れが生じているので、暗色模様はoutbreakの影響と思われます。 大赤斑自体は、暗部の形成にもかかわらず赤みが強く明瞭です。 経度はII=264°で、再び後退を始めているようです。
乱れていた北熱帯(NTrZ)が静まるにつれて、北緯20°に新しい北縁が形成され、北赤道縞(NEB)が幅広く見えるようになっています。 NEBの拡幅は昨年、全周に波及しないまま終わってしまったはずです。 中途半端に終わった前回の拡幅を補っているのでしょうか? NEB内部では大規模なリフト活動が見られるので、こちらも今回の拡幅に関係していると思われます。
[図1] 大赤斑と永続白斑BA |
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中央左にoutbreakの白雲が見え、大赤斑前方にはストリークが伸びる。 |
[図2] SSTBのAWOの合体 |
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前方のA5aが後方にあるA5bを反時計回りに回りながら合体しているのがわかる。 |
[図3] 最新の木星面展開図 |
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2つの▼はoutbreakの発生源の位置。拡幅したNEBにも注目。撮像・作成:永長英夫氏(兵庫県、30cm)、模様の名称は筆者による。 |
日没の時刻が遅くなるにつれ、観測時間が急速に失われてきています。 また視直径も4秒余りと非常に小さくなりました。 しかし、まだ熱心な観測者から報告が届いています。
Lsは3月初めに330°を越えました。 南半球はこれから秋分に向かいます。 この時期は南極冠がいつまで見えるかが注目点ですが、3月9日現在、まだかろうじて観測されています。
2月28日には岩政隆一氏(神奈川県)によってSolis Lacus付近に明るいダストストームが観測されました。 その後、3月9日にはSinus Margaritifer付近に再びダストストームを観測しています。 大規模なものではありませんが、まだまだ活動的な様子を見事に記録しています。
[図4] 火星のダストストーム |
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中央上の帯状の明部がダストストーム、南極冠もかろうじてわかる。撮像:岩政隆一氏(横浜市、35cm) |
南天低いため観測は低調ですが、季節が進んで徐々に観測条件が良くなってきました。 海外からは高解像度の画像も届いています。 北赤道縞(NEB)と北温帯縞(NTB)は赤茶色をしています。 NEBは二条に分かれ、南縁はシャープですが、北縁は少しぼやけています。 北熱帯(NTrZ)とNTBの北側のゾーンは薄緑色で、北極の六角形パターンは今年も健在です。 今のところ斑点などの模様は報告されていません。
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