日没後の南西天に土星が見えています。 合までまだ3ヵ月近くありますが、高度が低いため、観測条件は厳しさを増す一方です。 木星は間もなく10月27日に合となります。 観測はしばらくの間、お休みです。
ここでは9月半ばから10月初めにかけての惑星面についてまとめます。 この記事中の日時は、すべて世界時(UT)となっています。
木星はすでに今シーズンの観測を終えて月末の合を待つばかりとなっていますが、木星面は大きな変動に見舞われています。
大赤斑(GRS)前方に出現した南熱帯(STrZ)のディスロケーション(STr. Dislocation:STrZ周辺のベルト/ゾーンの明暗が逆転する現象)は、II=125°にある永続白斑BA付近まで広がって、長さが100°を超える大規模な現象に発達しています。 II=200°には大きな暗塊があり、II=280°にある大赤斑との間はSTrZ全体がベルト状に暗くなっている一方、南赤道縞(SEB)南部からSTrZ北縁にかけては薄明るい領域となっていて、以前の状態とは明暗が完全に逆転してしまいました。 この領域の前方、BAまでの区間は、暗部の幅が少しせまくなっているものの、STrZ〜SEB南部の明暗逆転状態は変わりありません。 9月末、BA後方にある南温帯縞(STB)の暗斑が急に濃く大きくなって注目されました。 9月上旬までは以前と同じ淡く丸い暗斑だったので、暗斑の北をかすめるように伸びてきたディスロケーションの暗部の影響と思われます。
ディスロケーションの原因となった大赤斑後部に出現した暗部は、依然として濃く見えていますので、活動はまだ続くと思われます。 過去にはディスロケーションの活動から南熱帯攪乱(STr. Disturbance)が発生したこともあるので、来シーズン初めの木星面には十分に注意を払いたいものです。
mid-SEB outbreakの活動は、衰えつつもまだ続いています。 発生から10ヵ月が経過し、木星面のほぼ半周を覆っていますので、今回の活動はかなり大規模かつ長期間と言えそうです。 観測が少なくなって全体像をつかむのは難しくなっていますが、9月末の画像(図1)を見ると、II=100〜120°に白斑が3つ並んでいて、第1発生源の活動と思われますし、その前方のII=60°付近にも白斑が見られます。 他の画像でも、II=0°付近でSEBが乱れていて、第2発生源周辺の活動のようです。
[図3] 2016-17シーズンの木星面 |
撮像:(左上から)堀内直氏(京都府、30cm)、ダミアン・ピーチ氏(英国、100cm)、石橋力氏(神奈川県、31cm)、熊森照明氏(大阪府、35cm)、岩政隆一氏(神奈川県、35cm)、クリストファー・ゴー氏(フィリピン、35cm)、クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm)、大田聡氏(沖縄県、30cm) |
土星の環の傾きは10月に+27.0°となり、15年ぶりに極大を迎えます。 15年前の2002年は環の南側が見えていましたが、今回は北側の面となります。 A環は土星本体の外側にはみ出して、カシニの空隙の外周と土星本体の縁がほぼ重なって見えています。 反対側を見ると、カシニの空隙を通して土星の南極地方が青白く見えています。
土星本体は特に変化は見られません。 赤茶色の北赤道縞(NEB)が目立っていますが、北半分は淡化してボンヤリしています。 9月28日のFoster氏の画像で、NEB北部の白斑(WS4)が捉えられています。 経度はIII=280°でした。 8月からのドリフトは1日当たり-7.1°で、少しスピードアップしたようです。
[図2] 環の傾きが極大を迎えた土星 |
カシニの空隙が本体からはみ出しそうに見える。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm) |
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