木星は8月11日に留となり、逆行から順行に変わりました。 土星はいて座を逆行中です。 本格的な夏を迎え、8月前半は晴天が続き、素晴らしいシーイングにも数夜恵まれました。 長かった梅雨を取り返した気分です。
ここでは9月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
今シーズン、注目すべき現象が次々に発生した大赤斑(GRS)の周辺は、赤いフレークや準循環気流による暗部が一掃され、明るい南熱帯(STrZ)の中にオレンジ色の大赤斑が浮かぶという、見慣れた様相に戻りました。 小規模なフレーク活動があるせいか、輪郭がボヤけているものの、大赤斑の8月の長径は14°前後で、縮小前のサイズに回復し、眼視でもひと回り大きくなったと感じます。 経度はII=315°で、わずかに後退傾向を示しています。
大赤斑と永続白斑BAとの間のSTrZは、濃く太かった南熱帯紐(STrB)がほぼ消失して明るくなり、代わって2個の孤立した暗斑が目立っています。 BAよりのII=200°にある暗斑(図3のA)は、5月末〜6月初めの大規模なフレーク活動で大赤斑からSTrB上に放出された赤い物質が凝集したものです。 ただし、色は灰色で赤みはすでに失われてしまいました。 一方、大赤斑側のII=260°にある暗斑(図3のB)は、7月に大赤斑直前でUターンした南赤道縞(SEB)南縁の後退暗斑です。 当初はどちらも1日当たり-1°で前進していましたが、共に減速して現在は-0.3〜-0.6°の微速前進となっています。 これらの暗斑は南緯23°とSEB南縁に近いため、後退暗斑との相互作用が注目されます。 すでに数個の暗斑がかすめるように通過しましたが、今のところ素通りばかりです。 なお、これらの後退暗斑群は、まもなく大赤斑に到達するはずです。 新たなフレーク活動が発生するか、注目しましょう。
永続白斑BAはII=170°にあります。 暗い縁取りがあり、内部は明るいので、多少シーイングが悪くてもはっきりと見ることができます。 前方に伸びるSTrBは、まだ濃く太いものの、少しずつ衰えているようです。 後方の南温帯縞(STB)とそれに続くSTB tailは、階段状に南へ上がる長いベルトになっています。 STB Spectreとの衝突が始まっているため、変化が激しい領域です。
着色現象が進行中の赤道帯(EZ)は、相変わらず薄茶色で変化は見られません。 大きなフェストゥーン(festoon)はまだ数多く見られますが、経度によって偏りがあり、I=100°前後は淡いものばかりです。
北赤道縞(NEB)北縁の凹凸は、以前に比べるとやや少なくなったようです。 それでも、WSa(II=135°)やWSb(II=170°)などの北熱帯(NTrZ)の白斑が、NEB北縁に大きな凹みを作っていて、よく目立ちます。 長命な白斑WSZはII=280°にありますが、NEB北縁の凹みは小さくなってしまいました。 北温帯縞(NTB)以北では、II=100°前後に北温帯攪乱(NT disturbance)の後端部分が濃く目立っています。 II=200〜330°では北北温帯縞(NNTB)の長い断片が見られます。 かなり乱れていて、先端からNNTBsのジェットストリームに乗って高速で前進する暗斑群を放出しています。
[図1] 復活した大赤斑 |
縮小前のサイズに回復した大赤斑。後方のSEBではpost-GRS disturbanceがやや活動的になっている。撮像:荒川毅氏(奈良県、30cm) |
[図2] STrZの2個の暗斑 |
明るいSTrZでフレーク活動由来の暗斑(左)とSEB南縁からUターンした暗斑(右)が目立つ。撮像:石橋力氏(神奈川県、30cm) |
[図3] 8月の木星面展開図 |
6月頃とは一変し、大赤斑は周囲の暗部がなくなってすっきりとした見え方に戻った。長径も回復。永長英夫氏(兵庫県、30cm)、大杉忠雄氏(石川県、25cm)、クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm)、アンソニー・ウェズレー氏(オーストラリア、33cm)の画像から作成。 |
8月の土星は、夏場の好シーイングで、国内でもすばらしい画像が得られています。 木星よりも観測時間帯が遅い分、シーイングの恩恵が大きいのかもしれません。
土星面は相変わらず静かで、変化ありません。 縞模様以外の大きな特徴は、北極の六角形模様だけです。 高解像度の画像では、中高緯度にコントラストの低い白斑や暗斑が捉えられていますが、追跡できていません。
[図4] 8月の土星面 |
衝からひと月以上経過し、環に落ちる本体の影が幅広くなった。北極の六角形模様も明瞭に見える。撮像:柚木健吉氏(大阪府、35cm) |
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