天文ガイド 惑星の近況 2019年12月号 (No.237)

堀川邦昭


日没後の南天に木星と土星が並んで輝いています。 木星は9月5日にへびつかい座で東矩を、土星は18日にいて座で留を迎えました。 日の入りがどんどん早くなっているので、日没時の高度は9月末でもまだ30°を保っています。

ここでは10月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

木星面は引き続き落ち着いた状況にあります。 南南温帯縞(SSTB)には高気圧的小白斑(AWO)が見られます。 現在は8個あり、A1〜A5、A5a、A7、A8と名前がついています。 このうち、A5aとA7が接近しているのが目を引きます。 9月10日には間隔がわずか8.5°となり、合体間近を思わせたのですが、そこで接近が止まり、現在は10°前後の間隔を保っています。

SSTBではここ数年、A8+A0→A8(2016年)やA6+A7→A7(2018年)など、AWO同士の合体が相次いでいます。 合体は大赤斑(GRS)−永続白斑BA−AWOの三重会合や、永続白斑BA−AWOの会合といったタイミングで起こりやすいことが知られています。 A5aとA7は年末にBAの南を通過するので要注意です。 しかし、合の時期に重なるので、合体したかどうかは来シーズンにならないとわからないでしょう。

全周でほとんど淡化している南温帯縞(STB)では、STB Spectreと呼ばれる低気圧的領域が大赤斑の南を通過中です。 相変わらず可視光ではほとんど見えませんが、メタン画像では暗いベルトして見えています。 長さは110°と、ずいぶん長くなりました。 前端はII=200°付近まで進んでいて、永続白斑BAから後方に伸びるSTBの短い断片まで、あと30°に迫っています。 衝突すれば、激しい攪乱活動(STB outbreak)が起きてSTB Spectreが濃化し、100°を超える区間でSTBが復活する可能性があります。

大赤斑のフレーク活動は、南赤道縞(SEB)南縁を後退する暗斑群が一時的に途絶えたため、8月中はほとんど見られませんでした。 しかし、9月になると大赤斑に到達するリング暗斑が再び見られるようになり、現在までに少なくとも4個の暗斑が赤斑湾(RS bay)に進入しています。 それに伴ってフレーク活動も再発し、大赤斑後端に赤いブリッジ(bridge)などが現れたりしましたが、今のところ小規模な活動にとどまっています。

9月の大赤斑は長径が14.5°で、フレーク活動で縮小する以前の状態に戻りました。 経度は4°も後退してII=319°に達しています。 大赤斑と永続白斑BAの間の南熱帯(STrZ)にある2個の孤立した暗斑は、今も明瞭で、II=190°と230°に位置しています。 大赤斑よりの暗斑の方が前進速度が大きいので、両者は接近しつつあります。

南熱帯紐(STrB)は全周で淡化が進んでいます。 8月はまだ濃く見えていたII=100°前後でもかなり淡くなりました。 永続白斑BAはII=150°にあり、リング状で明るく目立っています。 前方に短く伸びる組織が目を引きますが、これはジェットストリームの暗斑群で濃化したSTBの北組織です。 フレーク活動の影響で赤みを帯びていたSTrBとは異なり、灰色で乱れています。 今後、淡化するSTrBを置き換えるように前方へ長く伸びて行くと思われます。

[図1] AWO同士の接近
最接近したA5aとA7(▼)。両者の間隔はわずか8.5°しかない。中央左の黒点はイオの影。撮像:熊森照明毅氏(大阪府、35cm)
[図2] 大赤斑のフレーク活動
SEB南縁の暗斑群(番号)と大赤斑後端にフレークによる赤いブリッジ(▼)ができる様子。暗斑がRS bayに進入するたびにブリッジが形成されるのがわかる。
[図3] 永続白斑BAと前方に伸びるSTBn
BAはリング状で明るい。乱れたSTBnが淡化したSTrBを置き換えるように伸びる。撮像:ニール・マクニール氏(オーストラリア、35cm)
[図4] 活動的な大赤斑後方のSEB南部
SEB南縁が大量の暗斑群で凸凹している。これらは木星面を右向きに一周して、大赤斑のフレーク活動の原因になっている。撮像:アンソニー・ウェズレー氏(オーストラリア、33cm)

土星

土星面はとても静かで、斑点などの模様はまったく見られません。 唯一の特徴は北極の六角形模様で、解像度の高い画像では明瞭に見ることができます。 六角形の外縁から北北温帯縞(NNTB)までの領域は、普段は暗い緑色をしていますが、今シーズンはわずかに赤みを帯びているような傾向があります。 画像によってばらつきが大きいのではっきりしなのですが、この領域は、時々濃い赤や明るいオレンジ色になることがあるので、今後の変化に注意しましょう。

環にも異常は認められません。 東矩が近くなり、太陽光が斜めに当たっているため、環に落ちる土星本体の影が幅広く見えています。

[図5] 穏やかな土星面
東矩が近くなり、環に落ちる本体の影が幅広く見える。撮像:堀内直氏(京都府、40cm)

前号へ INDEXへ 次号へ