日没後の南西天には、木星と土星に加えて金星が見えるようになりました。 まだ低いので、ほどなく木星と一緒に没し、土星が1時間遅れで続くという状況ですが、これからしだいに高度を増して、来年前半の夕暮れは金星が主役となります。
ここでは12月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
11月初めに大赤斑(GRS)北側の北赤道縞(NEB)内部でリフト活動が始まりました。 中旬には長さ30°の明帯となり、II系に対して1日当たり約4°の割合で前進しています。 また、このリフトの90°後方にも別のリフト領域があり、下旬には大赤斑の北に進んできました。 活発なリフト領域の出現は久しぶりです。
北北温帯(NNTZ)では、NN-WS-6と呼ばれる白斑が別の白斑と合体しました。 5日の画像では極めて接近した2個の白斑が見られますが、10日は明るい白斑がひとつだけになっていて、この間に合体したようです。 NN-WS-6はシーズン初めにも別の白斑との合体が観測されています。
木星探査機ジュノー(Juno)が、11月3日に23回目の近木点通過(PJ23)を迎えました。 公開された詳細な画像では、現在注目されている永続白斑BA後方の領域を見ることができます。 南熱帯(STrZ)の2個のリング暗斑は健在で、合体が懸念された南南温帯縞(SSTB)のA5aとA7の白斑もまだ距離を保っていました。 また、はっきりしなかったSTB Spectreの前端も、南熱帯(STZ)の大きなリング暗斑の北に位置することが明確になりました。 予想したとおり、リング暗斑にブロックされて減速してしまったようです。 BA後方の南温帯縞(STB)暗部との衝突は、しばらく先のことになりそうです。 南温帯縞(STB)の活動サイクル
過去20年間の記録を調べると、STBにはベルトの断片またはフィラメント領域(以下STBセグメントと呼びます)が、概ね3つ共存する傾向があります。 STBセグメントは3〜5年おきに発生し、寿命は10〜12年で、そのライフサイクルには図1のようなパターンが見られます。
同じSTBにある永続白斑BAは、この緯度で最も動きが遅い模様なので、発生したセグメントは5〜8年かけて木星面をぐるりと回り、BAに追いついて衝突、激しい攪乱活動(STB outbreak)を起こします。
2000年にBAの後方に接していたSTBの断片を最初の世代とすれば、これまでに上記のパターンが5回繰り返され、現在のSTB Spectreは6世代目となります。
現在のBAになる前の永続白斑は3つあり、1940年頃にSTB〜STZが3つの区間に分割され、それらが縮小して白斑化したことが知られています。 STBは80年前から3つに分割される傾向が続いているように思われます。
[図1] NEBのリフト活動 |
NEBにリフト活動による東西に伸びた白雲が広がっている。大赤斑前後にフレーク活動による淡い暗部が見られる。撮像:アンソニー・ウェズレー氏(オーストラリア、33cm) |
[図2] STBの活動サイクル |
STBに見られるベルとの断片や青いフィラメント領域のライフサイクルを模式的に描いた。STBではこのような活動パターンが20年以上続いている。 |
[図3] 過去20年間に渡るSTBの記録 |
左端の振幅の大きな線がBAの軌跡、網掛けの部分はSTBセグメント(ベルトの断片またはフィラメント領域)を表す。STBセグメントは3〜5年おきに形成され、現在は6世代目。概ね同時に3つ共存するが、順次BAに衝突して壊れてしまう。BAはすべてのSTBセグメントをせき止めている。 |
今月も土星面は静かで変化は見られませんでした。 オーストラリアのバリー(Trevor Barry)氏から微小な斑点の報告がありましたが、確認することはできませんでした。 北極の六角形模様周囲の赤みは続いていますが、条件が悪くなり、詳しい様子はわからなくなっています。 土星面は赤道帯(EZ)が最も明るく目立ちます。 ベルトでは北赤道縞(NEB)が最も濃く見えますが、北半分は淡化しているため、普段の半分程度の太さです。 その北に北温帯縞(NTB)があり、赤みを帯びた領域を縁取るように、北北温帯縞(NNTB)が見えています。
[図4] 11月の土星 |
明るいEZと暗いNEBが目立つ。NEBは北半分が淡化して細くなっている。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm) |
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