天文ガイド 惑星の近況 2020年3月号 (No.240)

堀川邦昭、安達誠


木星が12月27日に合となりました。 土星もまもなく1月13日に合を迎えます。 日没後の南西天には代わって金星が宵の明星として輝いています。 一方、明け方の東天には火星が昇って来るようになりました。

ここでは1月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

火星

2019年10月20日に初観測の報告が、ハンガリーのイシュトヴァン・チャバイ(Istvan Csabai)氏からありました。 視直径は3.6秒と非常に小さいのですが、白雲らしき模様が記録されていました。 11月7日には、南アフリカのクライド・フォスター(Clyde Foster)氏がSyrtisやBoreo Syrtisのはっきり確認できる画像を報告しています。

この号が発行される2020年2月には視直径は4.5秒になって、さらに観測しやすくなっています。 Lsは145°で、南半球は冬至と春分の中間に位置しています。 緯度は+1.4°と、ほぼ赤道方向を向いていますから、南極付近の白雲を見ることができるでしょう。

今シーズンは南半球の観測が中心になりますが、これから少しずつ地平高度を上げて観測しやすくなることでしょう。

[図1] 今期の火星面
中央はSyrtis Major。画像下の明るい部分は北極雲。撮像:ドミトリー・フォンアイヘック氏(スペイン、28cm)

木星

2019シーズンが終了しました。 木星面では、大赤斑(GRS)の周囲でフレーク活動や準循環気流の形成といった重要な現象が相次ぎましたが、春先はシーイングが悪く、梅雨も長引いたため、衝前後の重要な時期に十分に観測ができませんでした。 夏以降は晴れる日が多かったのですが、シーイングは期待したほどではなく、観測者にとってフラストレーションのたまる状況だったようです。

図2に2019シーズンの木星画像を並べました。 海外の超高解像度の画像に頼りがちでしたので、今回は国内の主だった観測者の画像から選んであります。

来シーズンの観測は1月下旬に始まると思われます。 大赤斑周辺の様子はもちろん、北半分だけ淡化が進む南赤道縞(SEB)や、永続白斑BA後方に接近したSTB Spectreの変化、南南温帯縞(SSTB)の接近したA5aとA7などに注目しましょう。

[図2] 2019シーズンの木星
国内の主な観測者による画像。撮像:(左上から)堀内直(京都府、30cm)、長瀬雅明(神奈川県、24cm)、鶴海敏久(岡山県、25cm)、三宅明(栃木県、28cm)、伊藤了史(愛知県、25cm)、黒田瑞穂(兵庫県、28cm)、西岡達志(神奈川県、45cm)、井上修(大阪府、28cm)

土星

土星面は春先に高緯度の白雲活動が終息し、その後は変化のない単調な状態に戻ってしまいました。 その上、小さく表面輝度も低いため、撮像条件は木星以上に厳しく、国内の観測は低調だったようです。

来シーズンは環の傾きが減少して、南極地方が5年ぶりに見えるようになります。 赤みを帯びてきた北極周辺がどのように変化しているかも気になります。 また、年末には20年ぶりに木星との会合が起こりますので、楽しみにしましょう。


[図3] 2019シーズンの土星
国内の主な観測者による画像。撮像:山口貴弘(静岡県、24cm)、荒川毅(奈良県、30cm)、大杉忠夫(石川県、30cm)、米山誠一(神奈川県、32cm)

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