木星と土星が西に傾き、最接近を控える火星が夜空の主役として躍り出てきました。 視直径は20秒を超え、光度も-2等級と、明るい星の少ない秋の星座の中でひときわ輝いています。 木星は9月12日、土星は29日にいて座で留となり、順行に転じました。 これまで30分程度の距離を保っていましたが、今後は急速に近づいていきます。
ここでは10月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
火星は、これまで全面に広がっていたダストベールが静まって、大気の透明度がよくなり、淡い模様がよく見えるようになりました。
本格的な氷晶雲の発生はまだ先ですが、SyrtisやCimmeriumのような白雲の出やすい高地では、霧による白雲が見られます。 また、Acidariumは低地ですが、雲がよく出る特異な地域で、今シーズンも濃い雲が広がっています(図1)。
450nmよりも短い紫外域で撮像すると、火星の雲だけを捉えることができます。 火星像が暗くなるので撮像は大変ですが、大気の運動がよく記録されますので、こういう波長帯での観測が増えることを望んでいます(図2)。
Tharsis台地の成層火山の中で、Arsis Monsが明瞭な白雲を見せています。 火星の地方時で午前中に青画像を撮ると、細くたなびいた雲が記録できそうですが、残念ながらかすかなものしか写っていません。 探査機では毎日のように発生しているそうですが、地球からの観測がほとんどなく様子がよくわかりません。
視直径が大きくなると、模様だけでなく、色調もよく見えるようになります。 暗い模様は、リムから出てくると、霧に覆われ、青っぽく見えることが多いものです。 観測では、色の変化に注目するといいでしょう。
[図1] Acidariumの雲 |
画像下側に見えるAcidariumをもやのような雲が覆っている。撮像:ファビオ・カルバロ氏(ブラジル、40cm) |
[図2] 紫色光による火星面 |
南極冠と北極フードが目立つ、グレーの濃淡は淡い雲の広がりを示す。撮像:柚木健吉氏(大阪府、35p) |
北温帯縞南縁(NTBs)の攪乱活動であるNTBs jetstream outbreakは、最初の白斑(LS#1)に次いで、9月1日に2つ目の先行白斑(LS#2)が出現した後、8日には3番目の白斑(LS#3)がI=132°に出現しました。 先行白斑は体系1に対して、1日当たり平均-4.8°(風速換算で+160m/s)という超高速で前進しながら、後方に暗斑群を生成し、3つの独立した攪乱領域になりました。
先行白斑は可視光でもメタンバンドでも白飛びするほど明るく、強い上昇流で吹き上げられた高高度の雲と推察されます。 後方に白い尾を引きながら南熱帯(NTrZ)を進む姿は、まるで彗星のようです。 後方の暗斑群はどの攪乱領域でも約15°の間隔で並び、大きくて青黒く、中心に核状の白斑を伴っているものが多く見られます。
先行白斑のスピードはLS#1が最もが速く、次いでLS#2、LS#3の順になっています。 暗斑群でも最後尾にある最初にできた暗斑が最も速い傾向があり、他の暗斑との合体がしばしば観測されました。
9月20日頃、LS#3が前方のLS#1の攪乱領域に追いつくと、急激に衰退して数日で消失してしまいました。 同様に、LS#2も25日頃に#3の暗部に到達して、消えてしまいました。 先行白斑が前方の攪乱領域に追いついて消失する現象は、過去のoutbreakでもしばしば観測されています。
LS#1後方の暗斑群は、9月半ば以降、隊列が乱れて混沌とした状態になり、II=100°台では白雲が拡幅した北赤道縞(NEB)の中に入り込んで、北縁がズタズタになっています。 拡幅を生き延びたNEB北縁のWSZとWSbは、激しい変動に巻き込まれて行方がわからなくなってしまいました。 また、暗斑群は融合してNTBの断片ができ始め、10月初めの時点で、I=230〜60°の範囲では連続的なベルトに発達しています。 LS#1はまだ明るく見えていますが、攪乱領域の後端が目前に迫っていますので、まもなく追いついて消失し、outbreakが全周を覆うことでしょう。 NTBが濃化復活する日は近いようです。
[図4] 木星面を周回間近なoutbreak |
LS#1(右)が攪乱領域最後尾にある暗斑群に迫る。まもなくoutbreakは木星面全周を覆うだろう。撮像:伊藤了史氏(愛知県、25cm) |
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