天文ガイド 惑星の近況 2022年2月号 (No.263)

堀川邦昭


11月は例年にない好天続きでした。 日没後の空では、3大惑星が一列に並んでいます。 最も目を引くのは12月4日に最大光輝となった金星で、真南には11月21日に東矩を迎えた木星が輝き、その真ん中に土星が見えています。

ここでは12月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。

木星

淡化が続く北赤道縞(NEB)では、リフトと呼ばれる攪乱活動が始まり、注目されています。 11月1日にII=27°のNEB南組織(NEBs)中に小白斑が出現、体系IIに対して1日当たり-5°という高速で前進しながら東西に伸長し、10日頃には前方南−後方北に傾いた典型的なリフト領域に成長しました。

白斑は15日を過ぎると南へ移動しながら加速、赤道帯(EZ)に流れ出して消失してしまいましたが、21日になると元の位置に新しい白斑が出現し、白雲活動を引き継いでいます。 木星面で起こる攪乱活動の多くは、体系IIに近い発生源を持ちますが、NEBのリフト活動は、発生源が高速で前進しながら東西に白雲領域を広げるという特徴があります(伊賀、2001)。

発生源後方ではNEBsが厚みを増して、濃化の気配が見られます。 また、前方のNEB南縁には青黒い暗部が形成され、数少なかった明瞭なフェストゥーン(festoon)も再び見られるようになっています。

リフトの攪乱活動によって広範囲に淡化しているNEBが濃化復活する可能性は十分にありますが、二つ目の白斑が11月末にEZへ流出して消失した以降は、後続の活動が見られません。 リフト活動としては中規模のようです。 活動が継続してNEBを濃化させるのか、それとも尻すぼみに終わってしまうのか、予断を許さない状況です。

上記のリフト活動を除くと、木星面は概ね静かです。 オレンジ色の大赤斑(GRS)はやや淡いのですが、周囲の暗部は軽微なので明瞭です。 経度はII=4〜5°でほとんど変化していませんが、そろそろ次の後退期に入りそうです。 南側の南南温帯縞(SSTB)を5個の高気圧的白斑(AWO)が通過中で、現在A4が真南を少し過ぎたところです。 後方の南赤道縞(SEB)に見られる攪乱領域(post-GRS disturbance)は活動が弱く、SEB南縁も平坦な状況が続いています。 SEBの南組織(SEBs)は淡化傾向にあり、II=145°と175°にある2個の赤茶色の暗斑がとても目立ちます。

大赤斑の南には、南温帯縞(STB)が横たわっています。 伸長・拡散したDS7が、いつの間にか長さ60°の淡いベルトになってしまいました。 先端から暗斑群が放出され、ジェットストリームに乗って、1日当たり-2.7°前後のスピードで前進しています。 高解像度の画像で見ると、大赤斑の前方には少しずつ緯度の異なる暗斑が帯状に散らばっています。 精査すると暗斑群は二層で、前述のSTB暗部から出た暗斑が南緯27°に並び、北側の南緯25°にある暗斑は、大赤斑周辺の淡い暗部が起源のようです。 さらにII=270°付近では、STB outbreakの名残の暗斑群が南緯29°にあり、三層構造になっています。

北半球では、北北温帯縞(NNTB)に沿って数多くの暗斑が見られます。 これらはII=160°前後にあるNNTBの断片前方で形成され、NNTBsのジェットストリームに乗って1日当たり-2.7°のスピードで前進しています。 大赤斑の北側は、無数と思えるほどの暗斑で「密」な状態です。 前方では合体や消失により数が減りますが、いくつかは木星面を周回した後も生き延びているようです。

[図1] 大赤斑とSTBの暗部
大赤斑の南に伸長した淡いSTBが東西に伸びる。その南にはSSTBのAWOが並ぶ。NNTBでは暗斑が密集している。撮像:宮崎勲氏(沖縄県、40cm)
[図2] NEBのリフト活動とSTBの暗斑群
中央左のNEBにリフトの白雲が見える。STBからSTrZには暗斑群が2列に並んでいる。左端ではSTB outbreakの暗斑が加わって3列になっている。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm)
[図3] NEBのリフトが発達する様子
体系IIに対して1日当たり-5°で前進する特殊経度で作成。上の目盛りは11月1日時点の、下は12月5日の体系II。最初の白斑が前方へ流れて消失すると、元の場所に次の白斑が発生。発生源前方ではNEBsの暗部が発達し、後方ではNEBが濃化している。

土星

注目されている北極地方の色調はほとんど変わっていませんが、北緯61〜69°の領域の赤みは少しずつ増しているように思われます。 赤みを帯びる以前の画像をRGB別に比較すると、赤(R)ではあまり変化ないものの、緑(G)ははっきりと暗くなっていることがわかります。 赤化は「赤くなる」のではなく、緑光が減少することで起きているようです。

[図4] 北極周辺の色調の変化
7月(左)と11月(右)の画像を、RGBで分解し比較した。上は赤像で下は緑像。矢印で示したゾーンは、赤ではほぼ同じだが、緑では暗くなっているのがわかる。撮像:左)熊森照明氏(大阪府、35cm)、右)伊藤了史氏(愛知県、30cm)

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