夕暮れの空には長く木星と土星が見えていましたが、土星はすでに見えなくなり、木星も南西天低くなってしまいました。 代わって明け方の東天では明るい金星と、その右側に火星が小さく輝いています。
ここでは2月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
1月初めに注目された北赤道縞(NEB)のリフト活動はその後も続き、18日にはI=137°に新たな白斑が出現、20日には大きな明部となりました。 この明部は2月に入ってもNEB南縁を分断する幅広いリフトとして目立っています。
今シーズンの赤道帯(EZ)は赤茶色でとても不活発でしたが、NEB南縁が少し乱れた活動的な領域があり、時々小白斑や小規模なリフトが観測されていました。 水元伸二氏の解析では、昨年4月以降、この領域で8回の活動があったとのことです。 これまでの活動は小規模なものばかりでしたが、今回は少し規模が大きいようで、NEB南縁にはメタンバンドで暗い領域を伴う青黒い暗部が復活し、NEB本体も幅を増しています。 活動的な領域も経度方向に広がっているようです。
NEBの広範囲な淡化と、その後に起こる急激な濃化復活(NEB Revival)は、20世紀初頭にしばしば観測されましたが、近年では2012年の1例のみです。 NEB Revivalがどのようなプロセスで起きるのか、よくわかっていないのですが、2012年は今回のようなリフト活動が濃化復活の引き金になりました。 NEB Revivalが今まさに進行中である可能性は十分にあります。 合が近くなって、これ以上活動を追跡することはできなくなってしまいましたが、来シーズンにNEBがどのような状態になっているか、注目されます。
大赤斑(GRS)はやや淡いオレンジ色で変化はありません。 経度はII=10°で後退運動は止まったようです。 南側には今シーズン復活した南温帯縞(STB)が東西に長く伸びていて、後方から永続白斑BAと白斑WS6が接近してきました。 WS6は大赤斑後端まであと15°しかありません。 大赤斑の南を通過する際に復活したSTBに変化があるか気になりますが、合の時期に重なるため、こちらも来シーズンに持ち越しとなります。
[図1] NEBのリフト活動と大赤斑周辺 |
左) NEBの2ヵ所にリフトがあり、南縁に暗部やフェストゥーンが発達している。SEB南縁の黒点はガニメデの影。撮像:鈴木邦彦氏(神奈川県、19cm) 右) 大赤斑とすぐ後方に迫るWS6とBA。EZ南部の黒点はイオの影。撮像:熊森照明氏(大阪府、35cm) |
いよいよ2022年のシーズンが始まりました。 初観測は筆者(安達)で、昨年の12月13日でした。 視直径はまだ3秒台でしたが、うっすらと模様が確認できました。 その後1月31日までに30件の観測が送られてきています。
今年の最接近は12月1日で、12月8日が衝となります。 現在の火星の位置は赤緯最南ですが、衝の頃はおうし座とぎょしゃ座の境にあります。 赤緯は非常に高く、一晩中見えるようになります。
今の火星はLsが165°くらいの位置で、南極冠がほぼ最大になり、Argyre盆地の中に入った姿です。 図2は、視直径4.2秒での驚くべき画像です。 南極が非常に明るく、真上の光斑は雲間の南極冠だと思われます。 まさにLs=165°の姿でした。モノクロ印刷では表現されませんが、Meridianiが淡いこと、Mare Acidariumが淡いことなど、北半球がダスティーな状態であることがわかります。 来月はもう少し広い地域を確認できることでしょう。
[図2] 今シーズン初めの火星 |
上部の明るい部分が南極冠。中央下にMare Acidariumが見える。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35p) |
土星は2月5日に太陽と合となりました。 明け方の空で見えるようになるのは3月下旬になりそうです。 来シーズンは環の傾きが14°前後まで小さくなります。 細くなってゆく環を楽しみたいものです。
[図4] 2021シーズン後半の土星 |
左上の画像は衝直後で、環が衝効果で明るくなっています。東矩の頃は環に落ちた本体の影が印象的でした。撮像:堀内直氏(京都府、41cm)、石橋力氏(神奈川県、31cm)、鈴木隆氏(東京都、18cm)、伊藤了史氏(愛知県、30cm) |
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