木星は3月6日に合となりました。 夕方の西天から惑星がいなくなり、代わって明け方の東天には、水星・金星・火星・土星の4大惑星が集合しています。
ここでは3月初めまでの惑星面についてまとめます。 この記事中では、日時は世界時(UT)、画像は南を上にしています。
視直径は4秒を越えましたが、火星はまだまだ小さく、眼視ではオレンジ色の円盤です。 2月に入って、観測が増えてきました。 Lsは180°を越えました。 南極冠は縮小を始めており、それに伴う現象が観測されるようになりました。 極冠が縮小を始めると、水蒸気によって高緯度のリムに白雲が見られるようになりますが、どの観測でも見られます。
今月は火星の赤緯が最南となりました。 観測条件の良い南アフリカのクライド・フォスター(Clyde Foster)氏は、2月3日にHellasに2つのダストストームが並んで発生したのを記録しました。 右のマーズ・リコナッサンス・オービター(MRO)による画像でも、ダストストームが捉えられています。 現在は中規模以上のダストストームは発生しにくい時期です。
2月7日には、今度はHellas南部がダストに覆われている様子が記録されました。 極冠の縁も黄色くなって見えない状態でした。 後になってMROの公開画像から、2月6日に発生したエッジダストストームによるものであることが確認できました。 次いで2月21日にもAgryre南東に発生しています。 残念ながらこの付近は観測が少なく、経過の追跡はできませんでしたが、2月24日には、付近一帯がダストに覆われている様子が記録されています。
この他にも2月4日にHellasから東に、拡散状の濃いダストが記録されています。 Hellas付近は活動的な状態になっています。
これらはいずれもローカルダストストームで、年中発生することが知られています。 昨年末からの探査機による画像を調べてみると、ダストストームは大きな暗色模様と明るい部分との境界で発生しています。 こんなに視直径が小さいうちから発見できることは、本当に驚きです。
この号が皆さんの手元に届くころは、寒波も収まり火星が見やすくなっています。 地平高度はまだ低いですが、ぜひ観測を始めていただきたいと思います。
[図1] Hellas南部のエッジダストストーム |
上の2本の矢印の先がダストストーム。右はMROの画像(credit: NASA/JPL-Caltech/Malin Space Science Systems/B Cantor)。撮像:クライド・フォスター氏(南アフリカ、35cm) |
近年は天体の自動導入と赤外フィルターを組み合わせることで、日中でも木星の観測が可能となっています。 今年は合からわずか半月前の2月20日過ぎまで画像の報告があり、木星面の状況をおおまかながら、つかむことができています。
北赤道縞(NEB)のリフト活動は激しさを増していて、I=20〜180°の範囲ではNEB南部に大きな暗部と明部が交互に並び、かなり乱れています。 先月と比べても活動域は経度方向に広がり、木星面の半周近くに及んでいるので、NEBの濃化復活(NEB Revival)が進行中と考えて間違いなさそうです。 過去の観測を整理すると、この活動は12月半ばにI=75°付近で始まり、体系1に対して+2°/dayほどで後退(体系2に対しては-5.5°/dayで前進)する発生源を持ち、その前方でNEB南部に攪乱領域を形成しているように見えます。
暗部はNEB南縁から盛り上がって、赤道帯(EZ)にも薄暗い模様が広がっています。 シーイングや観測波長によって見え方が変わるのではっきりとわからないのですが、活動域ではNEBが北側へ幅を広げているような印象を受けます。 この活動により、シーズン明けの木星面では、EZからNEBにかけての様相が一変している可能性があります。
[図2] 活動が続くNEB |
NEBに大きな暗部が並び乱れている。赤外(850nm)による日中の観測で、大赤斑が大きな白斑として見えている。撮像:アントニオ・シダダオ氏(ポルトガル、35cm) |
[図3] 2021-22シーズン後半の木星面 |
撮像:黒田瑞穂氏(兵庫県、28cm)、鈴木邦彦氏(神奈川県、19cm)、宮崎勲氏(沖縄県、40cm)、熊森照明氏(大阪府、35cm)、井上修氏(大阪府、28cm)、栗栖茂氏(香川県、35cm)、伊藤了史氏(愛知県、30cm)、石橋力氏(神奈川県、31cm) |
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